こんにちは ITプロマガジン です。
フリーランスとして業務委託契約を結んだ場合、報酬に対して源泉徴収をされる場合があります。
この源泉徴収がどのような仕組みなのか分からないという人も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、そもそも源泉徴収とは何なのか、そして源泉徴収される業務の種類やその計算方法などを含め、フリーランスに必要な源泉徴収の知識を解説しますので、ぜひ参考にしてください。
なお、フリーランスについて基本的なことを知りたい方は、「フリーランスとは」や「フリーランスになるには」といった記事もおすすめです。
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目次
そもそも源泉徴収とは
源泉徴収とは、従業員などの年間所得に対してかかる所得税を事業者があらかじめ給与から差し引く制度のことです。
源泉徴収は、給与を支払う事業者が必ず実行しなければならないもので、これによって従業員は確定申告をする必要がなくなります。
もし、源泉徴収がなければ企業に就業している従業員(いわゆる正社員)も個人で確定申告をしなければなりません。
従業員が確定申告をして所得税を支払うという手間を事業者が代行してくれているとイメージすると分かりやすいでしょう。
一方、フリーランスなどの個人事業主は自分で確定申告をして所得税を確定し、支払わなければなりません。
しかし、業務委託契約内容によっては、フリーランスも源泉徴収をされる場合があります。
例えば、フリーランスのライターならば原稿料が源泉徴収の対象です。
実際には、すべての業務委託契約で源泉徴収されるわけではりませんが、契約相手が法人だった場合や1回の報酬金額が5万円を超えるような金額だった場合には源泉徴収されます。
フリーランスで源泉徴収をされた場合には、その金額をすべて把握しておかなければなりません。なぜなら、確定申告をするときに、源泉徴収で差し引かれた額が必要だからです。
源泉徴収は所得税の前払いですので、源泉徴収された金額を申告しなければ所得税を2重に支払ってしまうことになりかねません。必ず正確な納税額を記録しておくようにしましょう。
業務委託契約で源泉徴収されるパターン
それでは、業務委託契約で源泉徴収されるパターンを見ていきましょう。
すべてのフリーランスの報酬が源泉徴収対象になるわけではありません。ここでは、個人で報酬を受け取る際に源泉徴収される項目や範囲を確認します。
ちなみに、ITエンジニアが業務委託契約で行う要件定義やプログラミング、テストなどの報酬は、以下8項目には入っていませんので源泉徴収の対象にはなりません。
- 原稿料や講演料
- 特定の資格を持つ人に支払う報酬・料金
- プロスポーツ選手や外交員に支払う報酬・料金
- 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
- 芸能やテレビ放送等の出演に対する報酬・料金
- 宴会等客に対して接待等を行う業務への報酬・料金
- 役務の提供を約することにより一時的に支払う契約金
- 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
引用: No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|金融庁
原稿料や講演料など
原稿料や講演料などとは、記事の執筆や講演に登壇した際の報酬のことです。
例えば、Webや雑誌のライターが業務委託契約によって報酬を得た場合には源泉徴収の対象になります。
懸賞応募作品等の入選者に支払う賞金等については、一人に対して1回に支払う金額が5万円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。
特定の資格を持つ人に支払う報酬・料金
特定の資格を持つ人とは、弁護士や公認会計士、司法書士などを指します。
例えば、弁護士が業務委託契約によって業務をした場合、そこで発生する報酬は源泉徴収の対象です。
ただし、1回に支払う報酬額が5万円以下の場合は、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。
プロスポーツ選手や外交員に支払う報酬・料金
プロ野球の選手やプロサッカー選手、プロテニス選手、モデルに支払う報酬も源泉徴収の対象です。
プロ野球・プロサッカー選手の年俸、プロテニス選手の賞金なども含まれます。また、外交員へ支払う報酬も対象となっていますが、この外交員とは、外交員、集金人、電力量計の検針人などを指しています。
社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
社会保険診療報酬支払基金とは、病院や薬局から診療に関わる医療費の請求が正しいかを審査して、医療機関へ医療費を支払う基金のことです。
つまり、病院や薬局が受け取る報酬に対しては、社会保険診療報酬支払基金が源泉徴収を行っているということになります。
芸能やテレビ放送等の出演に対する報酬・料金
映画や演劇、音楽や漫才などを行ういわゆる芸能人がテレビに出演したときに受け取る報酬も源泉徴収の対象です。
また、芸能人が所属する芸能プロダクションを個人が運営している場合にもその個人に支払われる報酬は源泉徴収の対象になります。
宴会等客に対して接待等を行う業務への報酬・料金
ホテルや旅館などで行われる宴会で、接待を行う業務に支払われる報酬も源泉徴収の対象です。
また、バンケットホステス、コンパニオン、バー、キャバレーなどに勤めるホステスの報酬も源泉徴収の対象となります。
役務の提供を約することにより一時的に支払う契約金
役務の提供を約することに対する契約金も源泉徴収の対象です。
例えば、プロ野球選手の契約金などが代表的な事例でしょう。
広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
広告宣伝のための賞金とは、事業を営む個人や法人が商品の宣伝のために支払う賞金や商品のことです。
例えば、キャンペーンの当選者に現金や物品を報酬として送る場合、その金品の価額が賞金額になり源泉徴収の対象となります。
業務委託の源泉徴収額の計算方法
それでは、業務委託の源泉徴収の計算方法を見ていきましょう。
ここでは、源泉徴収の税率と計算式を確認してその計算例を解説します。
- 源泉徴収の税率と計算式
- 源泉徴収額の計算例
源泉徴収の税率と計算式
源泉徴収の税率は、その報酬額によって2種類にわかれます。
- 報酬額が100万円以下の場合:税率=10.21%
- 報酬額が100万円を超える場合:税率=20.42%
実際にあなたの報酬額を下記の計算式に当てはめて、源泉徴収額を確認してみましょう。
税率 | 源泉徴収額 | |
---|---|---|
報酬額が100万円以下の場合 | 10.21% | 【報酬額】 × 10.21% |
報酬額が100万円を超える場合 | 20.42% | (【報酬額】 – 100万円)× 20.42% + 102,100円 |
復興特別所得税について
2020年11月時点の源泉徴収税額には、所得税に「復興特別所得税」も加わった税率となっています。
復興特別所得税とは、源泉徴収義務者が支払う給与や退職所得が対象となる税金で、東日本大震災による被災地復興を支えるための財源確保が目的とされている特別措置法です。
具体的には、2013年1月1日から2037年12月31日までの所得に対して課税されます。
復興特別所得税は最長で25年間とされていますので、2037年12月31日以降の税率については変更になる可能性が高いです。
上述した税率の「10.21%」と「20.42%」という数値のうち、端数として表記されている「0.21%」と「0.42%」が復興特別所得税にあたります。
所得税と復興特別所得税は、基本的には別の税金ですが、源泉徴収ではこの2つを合わせた税率で計算することになっていますので、源泉徴収票にも合計額が源泉徴収税額として記載されます。
源泉徴収額の計算例
実際に、源泉徴収額の計算例を見ていきましょう。
- 報酬額が100万円以下の場合:税率=10.21%
報酬額が20万円の場合です。
200,000 × 10.21% = 20,420
20万円の報酬額では、20,420円の源泉徴収が差し引かれます。
実際に入金される金額は179,580円となります。
- 報酬額が100万円を超える場合:税率=20.42%
報酬額が120万円の場合です。
(1,200,000 – 1000,000) × 20.42% + 102,100 = 142,940
120万円の報酬額では、142,940円の源泉徴収が差し引かれます。
実際に入金される金額は1,057,060円となります。
源泉徴収は消費税を含める?
源泉徴収は、消費税を含めた報酬額によって計算されることが原則です。
ただし、それは請求書に記載される区分によって異なります。
例えば、あなたが出す請求書内で報酬額と消費税を別々に(報酬額を税抜きで)記載してる場合には、税抜きの金額で源泉徴収額を計算することも可能です。
一般的には、報酬額と消費税を別々に記載しますので税抜きの金額で計算されます。
源泉徴収された金額は確定申告で調整できるのか
ここまで源泉徴収の意味や計算方法をみてきて「先に所得税を差し引かれるなんて損しているのでは?」と思った人もいるかもしれません。
しかし、報酬額から差し引かれた源泉徴収額は確定申告時に記載して調整できますので安心してください。
例えば、フリーランスが確定申告をする際には、「収入金額等」の項目の「営業等」部分に1年間の報酬額を記載し、「税金の計算」項目の「源泉徴収税額」の部分(および第二表の「所得の内訳」)に1年間に差し引かれた源泉徴収の金額を記載することで、支払う所得税が調整されます。
ですので、源泉徴収の額をしっかりと把握しておけば、税金を払いすぎるということはないのです。
業務委託契約の確定申告で源泉徴収票が必要な場合
業務委託契約の報酬で源泉徴収が行われた場合は、法人などの契約相手があなたの所得税を前払いしてくれているということです。
ですので、あなたが個人で確定申告をする際には、契約相手がいくら前払いしてくれたのかを把握する必要があるのと、その証拠となる源泉徴収票を入手する必要があります。
確定申告のときに源泉徴収票が必要な場合は、源泉徴収を行ってくれた企業から「源泉徴収票」をもらいましょう。
源泉徴収票は、企業の方から送ってくれることがほとんどですが、万が一源泉徴収票についての連絡が来ない場合には、12月の年末調整が終わったころに、企業に対して声掛けをしてみてください。
まとめ:業務委託の源泉徴収はしっかりと把握して申告しよう
フリーランスが業務委託契約で仕事を受注する場合、作業内容によっては源泉徴収を差し引かれることがあります。
差し引かれた源泉徴収税額はしっかりと把握しておき、確定申告のときに申告書に記載しましょう。
また、仕事内容によっては源泉徴収の必要がないものもあります。
例えば、あなたの仕事がITエンジニアでプログラミングの作業を業務委託しているのであれば、源泉徴収をされることはありませんので、確定申告時にあなた自身で所得税を納めましょう。
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