個人事業主の税金や手取り計算シュミレーション【年収別の早見表】

こんにちは、ITプロマガジンです。

個人事業主として働く場合、売上がそのまま手取りになるわけではありません。所得税や住民税に加え、業種によっては個人事業税がかかり、国民健康保険料や国民年金保険料も自分で負担します。そのため、独立前後の資金計画では、税金・社会保険料を差し引いた後にいくら残るのか把握しておくことが重要です。

本記事では、2026年の制度をもとに、個人事業主の税金・社会保険料・手取りをシミュレーションします。あわせて、所得税や住民税などの計算方法、手取り額を左右する条件、利用できる節税制度も解説します。

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目次

個人事業主の税金・手取りを年収別にシミュレーション

個人事業主の手取りは、売上だけでは判断できません。所得税や住民税に加えて、事業内容によっては個人事業税が発生し、国民健康保険料・国民年金保険料も負担する必要があります。ここでは、2026年の制度をもとに、年収200万〜1,000万円の税金・社会保険料と手取りをシミュレーションしました。

※本記事では、便宜上「年収」を年間売上として表記しています。

年収白色申告:税金・社会保険料白色申告:手取り青色申告:税金・社会保険料青色申告:手取り
200万円約59.7万円約140.3万円約44.2万円約155.8万円
300万円約84.6万円約215.4万円約68.7万円約231.3万円
400万円約115.7万円約284.3万円約98.1万円約301.9万円
500万円約155.9万円約344.1万円約130.8万円約369.2万円
600万円約199.0万円約401.0万円約174.3万円約425.7万円
700万円約243.0万円約457.0万円約217.3万円約482.7万円
800万円約286.1万円約513.9万円約261.3万円約538.7万円
900万円約326.3万円約573.7万円約304.4万円約595.6万円
1,000万円約365.0万円約635.0万円約343.2万円約656.8万円

計算にあたっての具体的な条件は以下の通りです。

  • 年収は年間売上とし、必要経費は0円
  • 35歳・独身・扶養親族なし
  • 江戸川区在住で国民健康保険に1人で加入
  • 前年も同程度の所得だったと仮定
  • 国民年金保険料は、2026年度の月額1万7,920円を12か月納付する前提で年21万5,040円
  • 個人事業税は税率5%の法定業種に該当すると仮定
  • 青色申告は65万円の青色申告特別控除を適用
  • 国民健康保険料・国民年金保険料は社会保険料控除へ反映
  • 配偶者控除や扶養控除、医療費控除などは考慮しない
  • 消費税はインボイス未登録の免税事業者を想定
  • 住民税の調整控除など個別の税額控除は考慮しない

※本シミュレーションは制度比較のため、2026年分の所得税と、2026年度の住民税・国民健康保険料・国民年金保険料を組み合わせて年額換算した概算です。各制度は対象期間や算定基準が異なるため、2026年1月〜12月に実際に支払う金額とは一致しません。
※計算を単純化するため、前年に支払った個人事業税を必要経費へ算入する影響は考慮していません。実際の税額は、過年度に支払った事業税などの必要経費によっても変わります。

【早見表付き】フリーランスの手取り | 年収/月収別の手取り額と計算方法

年収300万円

白色申告の場合

年収300万円を白色申告する場合の試算は以下の通りです。

項目概算額
所得税・復興特別所得税約7.1万円
住民税約20.6万円
個人事業税約0.5万円
消費税0円※
国民健康保険料約34.9万円
国民年金保険料約21.5万円
税金・社会保険料合計約84.6万円
手取り約215.4万円

年収300万円では、基礎控除や社会保険料控除を差し引いた後の金額に所得税・住民税がかかります。また、法定業種に該当する想定では、事業主控除290万円を上回る10万円に対して個人事業税が発生します。

※インボイス未登録の免税事業者を想定。

青色申告の場合

65万円の青色申告特別控除を適用すると、以下の試算になります。

項目概算額
所得税・復興特別所得税約4.2万円
住民税約14.8万円
個人事業税約0.5万円
消費税0円※
国民健康保険料約27.8万円
国民年金保険料約21.5万円
税金・社会保険料合計約68.7万円
手取り約231.3万円

青色申告特別控除によって所得税と住民税の課税対象が小さくなるほか、今回の条件では国民健康保険料も下がります。一方、個人事業税では青色申告特別控除を適用しないため、白色申告と同額です。

年収500万円

白色申告の場合

項目概算額
所得税・復興特別所得税約28.8万円
住民税約38.4万円
個人事業税約10.5万円
消費税0円※
国民健康保険料約56.8万円
国民年金保険料約21.5万円
税金・社会保険料合計約155.9万円
手取り約344.1万円

年収500万円では、所得税の2026年分基礎控除は67万円です。所得税は超過累進税率を採用しているため、課税所得が増えるにつれて適用される税率も段階的に上がります。

青色申告の場合

項目概算額
所得税・復興特別所得税約16.6万円
住民税約32.6万円
個人事業税約10.5万円
消費税0円※
国民健康保険料約49.7万円
国民年金保険料約21.5万円
税金・社会保険料合計約130.8万円
手取り約369.2万円

青色申告特別控除後の所得は435万円となるため、今回の条件では所得税の基礎控除も104万円になります。65万円の青色申告特別控除だけでなく、2026年分の基礎控除額が所得水準によって変わる点も、白色申告との差を広げる要因です。

年収800万円

白色申告の場合

項目概算額
所得税・復興特別所得税約84.3万円
住民税約65.1万円
個人事業税約25.5万円
消費税0円※
国民健康保険料約89.6万円
国民年金保険料約21.5万円
税金・社会保険料合計約286.1万円
手取り約513.9万円

年収800万円になると、所得税・住民税に加えて国民健康保険料の負担も大きくなります。国民健康保険には上限がありますが、所得割の料率や限度額は自治体や年度によって異なるため、全国共通の金額ではありません。

青色申告の場合

項目概算額
所得税・復興特別所得税約72.5万円
住民税約59.3万円
個人事業税約25.5万円
消費税0円※
国民健康保険料約82.5万円
国民年金保険料約21.5万円
税金・社会保険料合計約261.3万円
手取り約538.7万円

65万円の青色申告特別控除を適用すると、今回の試算では白色申告より約24.8万円手取りが多くなります。ただし、実際の差額は社会保険料や所得控除などの条件によって変わるため、「65万円控除=税金が65万円減る」という意味ではありません。

年収1,000万円

白色申告の場合

項目概算額
所得税・復興特別所得税約127.8万円
住民税約84.5万円
個人事業税約35.5万円
消費税0円※
国民健康保険料約95.8万円
国民年金保険料約21.5万円
税金・社会保険料合計約365.0万円
手取り約635.0万円

年収1,000万円でも、今回の条件では消費税を0円としています。消費税は現在の売上だけで決まるものではなく、基準期間や特定期間の課税売上高、インボイス登録状況などによって課税事業者になるかが変わるためです。

青色申告の場合

項目概算額
所得税・復興特別所得税約112.6万円
住民税約78.0万円
個人事業税約35.5万円
消費税0円※
国民健康保険料約95.6万円
国民年金保険料約21.5万円
税金・社会保険料合計約343.2万円
手取り約656.8万円

今回の条件では、青色申告にすると白色申告より手取りが約21.8万円増える結果になりました。ただし、国民健康保険料はすでに上限に近く、所得が低いケースほど青色申告特別控除による国民健康保険の差が大きくなるとは限りません。

個人事業主が負担する主な税金の種類

個人事業主に関係する主な税金には、所得税、住民税、個人事業税、消費税があります。すべての個人事業主に4種類すべてが課税されるわけではありませんが、それぞれ基礎知識としてみていきましょう。

所得税

所得税は、1年間の所得に対して課税される国税です。売上そのものではなく、売上から必要経費を差し引いた事業所得から、基礎控除や社会保険料控除などを引いて課税所得を求めます。

2026年分の所得税では、2026年12月1日に施行される改正後の基礎控除を適用します。2026年分の基礎控除は合計所得金額によって異なり、489万円以下では104万円、489万円超655万円以下では67万円、655万円超2,350万円以下では62万円です。

所得税率は課税所得に応じて5〜45%の7段階に分かれています。さらに2026年分では、算出した基準所得税額に原則2.1%の復興特別所得税を加えて納付します。

住民税

住民税は、都道府県と市区町村へ納める地方税です。個人事業主が支払う住民税は、所得割と均等割の2つで構成されています。所得割の標準的な税率は10%で、均等割4,000円に森林環境税1,000円を合わせて徴収されます。

住民税の納付税額は、以下のステップで計算できます。

  • 税額控除後の所得割額=(所得-所得控除の合計額)×10%-税額控除の合計額
  • 納付税額=税額控除後の所得割額+均等割額(4,000円)+森林環境税(1,000円)

所得税と住民税では控除額も同じではありません。例えば住民税の基礎控除は、合計所得金額2,400万円以下なら43万円です。

個人事業税

個人事業税は、都道府県に対して納税する地方税です。都道府県が定める法定業種に相当する事業について所得が290万円を超えた際に、個人事業税の納付義務が発生します。個人事業税の納付税額の計算式は、以下の通りです。

納付税額={所得-事業主控除(290万円)等}×税率

例えば「東京都」の場合、法定業種の業種例と税率は以下の通りです。

事業区分代表的な法定業種税率
第1種事業・物品販売業
・飲食店業
・製造業
・出版業
・請負業
5%
第2種事業・畜産業
・水産業
・薪炭製造業
4%
第3種事業・医業
・税理士業
・デザイン業
・コンサルタント業
・弁護士業
5%

消費税

消費税の納税義務は、単純に「今年の売上が1,000万円を超えたか」だけで判断するものではありません。

原則として、基準期間と特定期間の課税売上高が1,000万円以下なら免税事業者となります。ただし、適格請求書発行事業者としてインボイス登録している場合は、課税売上高にかかわらず免税事業者にはなりません。

基準期間の課税売上高が5,000万円以下などの条件を満たせば、みなし仕入率を使って納付税額を計算する簡易課税制度を選択できる場合もあります。

また、インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった一定の事業者は、2026年分まで納付税額を売上税額の2割とする「2割特例」を利用できる場合があります。個人事業者には、2027年・2028年分について売上税額の3割とする「3割特例」も設けられています。

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個人事業主が負担する主な社会保険料

個人事業主の手取りを考える際は、税金だけでなく社会保険料も確認する必要があります。会社員から独立して国民年金・国民健康保険へ切り替わる場合、自分で保険料を納付します。国民健康保険料は所得や自治体によって大きく変わるため、税金と合わせて事前に試算しておくことが重要です。

国民年金保険料

日本国内に住む20歳以上60歳未満の個人事業主などは、原則として国民年金第1号被保険者となり、自分で国民年金保険料を納付します。

2026年度の国民年金保険料は月額1万7,920円です。毎月納付した場合は、12ヶ月で21万5,040円となります。まとめて前納すると割引を受けられる制度もありますが、本記事のシミュレーションでは通常の毎月納付額を使用しました。

実際に支払った国民年金保険料は、所得税を計算する際に社会保険料控除として全額を所得から差し引けます。

国民健康保険料

国民健康保険料は全国一律ではなく、前年所得、加入者数、年齢、住んでいる自治体などによって変わります。

江戸川区の2026年度では、国民健康保険は以下の4区分から構成されています。

  • 医療分
  • 後期高齢者支援金分
  • 介護分
  • 子ども・子育て支援金分

介護分は40〜64歳の加入者に加算されます。また、2026年度から新たに子ども・子育て支援金分が加わりました。

本記事では35歳・1人世帯を想定しているため介護分を含めていません。自治体によって料率や上限が異なるため、自分の保険料を確認する際は居住地の自治体が提供する試算ページを使うのが確実です。

フリーランスになると健康保険はどうなる?種類や保険料の抑え方も紹介

個人事業主の税金・手取りの計算方法

個人事業主の税金や手取りは、「年収に一定割合を掛ければ分かる」というものではありません。まず売上から事業所得を計算し、所得控除を反映して税額を求め、社会保険料などを差し引きます。基本的な流れを6つに分けて確認しましょう。

1.売上から必要経費を差し引いて所得を計算する

最初に、年間の売上から事業に必要だった経費を差し引き、事業所得を計算します。

  • 事業所得=売上-必要経費

例えば売上が600万円でも、事業のために100万円の経費を使っていれば、所得は500万円です。「売上=所得=手取り」ではありません。

青色申告特別控除を適用できる場合は、必要経費を差し引いた後の所得から、さらに要件に応じた控除額を差し引きます。

2.所得控除を差し引いて課税所得を計算する

次に、所得から適用できる所得控除を差し引きます。

代表的なものには、基礎控除、社会保険料控除、扶養控除、配偶者控除、医療費控除、小規模企業共済等掛金控除などがあります。

2026年分の所得税では、合計所得金額489万円以下なら基礎控除は104万円です。489万円を超えると金額が段階的に変わるため、「基礎控除は一律○万円」として計算しないよう注意してください。

また、住民税では別の控除額が適用され、合計所得金額2,400万円以下の基礎控除は43万円です。

3.所得税・住民税を計算する

所得税は、所得控除を差し引いた課税所得に税率を掛け、速算表の控除額を差し引いて求めます。

  • 所得税額=課税所得×税率-控除額

税率は5〜45%の7段階です。2026年分では、算出した基準所得税額に原則2.1%の復興特別所得税も加えます。

住民税は、基本的に前年の所得をもとに所得割を計算し、均等割と森林環境税を加えます。そのため、所得税と住民税では計算方法だけでなく、実際に負担が表面化する時期も異なります。

4.個人事業税・消費税を確認する

所得税・住民税とは別に、個人事業税や消費税が発生するかも確認します。

個人事業税は、事業が法定業種に該当するかを確認し、事業主控除290万円などを差し引いた後に課税対象額が残れば税率を掛けて計算します。

一方、消費税は基準期間・特定期間の課税売上高やインボイス登録の有無などによって納税義務が変わります。個人事業主だから必ず発生する税金ではなく、現在の売上だけを見ても判断できません。

フリーランスは消費税が免除される?請求はできる?インボイス制度の影響も解説

5.社会保険料を確認する

税金とは別に、国民年金と国民健康保険などの負担を確認します。

国民年金保険料は2026年度で月額1万7,920円です。一方、国民健康保険料は前年所得や年齢、世帯の加入人数、居住する自治体によって異なります。

国民健康保険については全国共通の金額を当てはめず、自治体のシミュレーターや保険料率を使って試算しましょう。

6.税金・社会保険料を差し引いて手取りを計算する

事業所得から税金と社会保険料を差し引き、手取りの目安を求めます。概算では、以下のように整理できます。

  • 手取り=事業所得-所得税-住民税-個人事業税-消費税-社会保険料

ただし、個人事業税や消費税は対象者だけが負担します。また、住民税や国民健康保険料は前年所得をもとに計算されるため、今年の売上から今年中にすべて差し引かれるわけではありません。

独立直後に手元資金を使い切ってしまうと、翌年度に住民税や国民健康保険の負担が増えた際に資金繰りが厳しくなる可能性があります。納税時期まで含めて資金を確保しておくことが重要です。

税金・手取りのシミュレーション結果を左右するその他の項目

同じ売上や所得でも、実際の税金・社会保険料は人によって異なります。特に家族構成、年齢、居住地は結果へ影響しやすいため、Web上のシミュレーション結果をそのまま自分の手取りと考えないようにしましょう。

配偶者・扶養親族の有無

配偶者や扶養親族の状況によって、所得税・住民税で利用できる控除が変わります。

例えば、一定の要件を満たす配偶者がいれば配偶者控除や配偶者特別控除、扶養親族がいれば扶養控除を適用できる場合があります。控除額が増えると課税所得が小さくなり、所得税や住民税も変わります。

一方、国民健康保険では加入人数が保険料に影響します。単身者向けのシミュレーションを家族世帯へそのまま当てはめることはできません。

年齢

年齢によっても社会保険料の負担は変化します。

国民健康保険では、40〜64歳の加入者に介護分が加算されます。江戸川区の2026年度では、医療分・支援分・子ども・子育て支援金分に加え、所得割2.45%と均等割1万7,400円の介護分が設定されています。

そのため、同じ所得・同じ自治体でも、30代と40代では国民健康保険料負担が異なる場合があります。年齢条件まで合わせて試算することが必要です。

居住している自治体

国民健康保険料は市区町村によって料率や均等割額、上限などが異なるため、居住地によって手取りに差が出ます。

今回のシミュレーションでは江戸川区をモデルにしていますが、他の自治体では同じ所得でも国民健康保険料の負担が同額になるとは限りません。江戸川区も、国民健康保険料の計算方法や料率は市区町村によって異なると案内しています。

正確な金額を知りたい場合は、自分が住んでいる自治体の最新料率やシミュレーターを確認しましょう。

個人事業主が手取りを増やすための節税方法

シミュレーション結果を見ると分かるように、個人事業主は売上から多くの税金を引かれます。手取りを増やすために、節税対策を検討しましょう。以下に、個人事業主が手取りを増やすための節税方法を解説します。

かかった経費を漏れなく計上する

個人事業主の場合、「所得金額=売上-経費」です。かかった経費を漏れなく計上して、課税される所得金額を減らしましょう。事業で使った費用はもちろん、家賃や光熱費などの費用も家事按分で経費計上できる可能性があります。

経費を計上した場合に備え、領収書や請求書など、取引内容を確認できる証憑を保存しておきましょう。事業との関係を説明できない支出は、税務調査で必要経費として認められない場合があります。

利用できる所得控除を確認する

所得控除を漏れなく適用することも、税負担を適切に抑えるうえで重要です。

代表的な控除には、以下があります。

  • 基礎控除
  • 社会保険料控除
  • 医療費控除
  • 配偶者控除・扶養控除
  • 小規模企業共済等掛金控除

特に2026年分の所得税では、基礎控除が所得に応じて変わります。過年度の基礎控除額をそのまま使うと税額を誤る可能性があるため、2026年分の所得に対応する控除額を確認してください。

青色申告特別控除を活用する

青色申告では、要件を満たすと55万円または65万円の青色申告特別控除を受けられます。55万円・65万円の要件を満たさない青色申告者には、10万円控除があります。

65万円控除を利用するには、55万円控除の要件を満たしたうえで、e-Taxによる期限内申告または一定の電子帳簿保存にも対応する必要があります。

単に「青色申告にすれば65万円控除される」わけではありません。帳簿の付け方や申告方法まで要件を確認したうえで利用しましょう。

タイミングを見て法人化する

所得が増えてきた場合は、法人化した場合との税・社会保険料の違いを比較する方法もあります。

ただし、「所得800万円を超えたら必ず法人化した方が得」といった一律の基準はありません。法人では法人税だけでなく、法人住民税、役員報酬に対する所得税、社会保険料、税理士費用や決算費用なども考える必要があります。

資本金1億円以下の一定の法人では、所得800万円以下の部分に15%の法人税率が適用される場合がありますが、これだけを個人の所得税率と比較して判断するのは不十分です。

所得水準や役員報酬、家族構成、事業の成長計画などを含めて、法人化した場合の総負担を試算しましょう。

フリーランスが法人化するメリット・デメリットと適切な目安タイミング

小規模企業共済やiDeCoを活用する

将来の資金を準備しながら所得控除を利用する方法として、小規模企業共済やiDeCo(個人型確定拠出年金)があります。

小規模企業共済は、個人事業主などが廃業・退職後の資金を積み立てる制度です。掛金は月額1,000〜7万円の範囲で設定でき、支払った掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除の対象になります。

iDeCoの掛金も所得控除の対象です。国民年金第1号被保険者の場合、2026年11月までは国民年金基金等と合わせて月額6万8,000円が上限ですが、2026年12月1日から共通上限が月額7万5,000円へ引き上げられます。

どちらも将来に備える制度であり、普通預金のように自由に使える資金ではありません。税負担だけでなく、当面の生活費や事業資金を確保したうえで掛金を決めることが大切です。

ふるさと納税を行う

ふるさと納税は、単純に税金そのものを少なくする一般的な節税方法とは性質が異なります。

自治体へ寄附すると、寄附額のうち2,000円を超える部分について、一定の上限まで所得税と住民税から控除を受けられる仕組みです。

控除できる上限は所得や家族構成、他の控除などによって変わります。上限を超えた寄附は自己負担になるため、個人事業主は確定申告前の所得見込みをもとに寄附額を検討しましょう。

フリーランスができる節税対策4選!効果的な方法と注意点を解説

個人事業主の税金や手取りに関するよくある質問と回答

個人事業主の税金や手取りに関するよくある質問を、回答と併せて解説します。

個人事業税がかからない場合はある?

個人事業主でも、個人事業税がかからないケースはあります。

まず、事業が地方税法で定められた法定業種に該当しなければ、原則として個人事業税の対象ではありません。また、法定業種に該当していても、所得から各種控除と年290万円の事業主控除を差し引いた結果、課税対象額が残らなければ税額は発生しません。

なお、営業期間が1年未満の場合は事業主控除が月割りになるため、単純に「所得290万円以下なら必ず0円」と判断しないよう注意してください。

シミュレーションと実際の税額が違うのはなぜ?

税金・手取りのシミュレーションは、設定する条件によって結果が変わるためです。必要経費や所得控除、配偶者・扶養親族の有無、年齢、居住する自治体、国民健康保険の加入人数などによって負担額は異なります。

また、住民税と国民健康保険料は前年所得をもとに計算されるため、今年の売上だけを入力したシミュレーションとは時期がずれる場合があります。個人事業税は業種、消費税は課税事業者に該当するかどうかでも異なります。

記事や計算ツールの結果は目安として使い、実際の税額は確定申告や自治体から届く通知で確認しましょう。

個人事業主の手取りはどう計算する?

まず、売上から必要経費を差し引いて事業所得を把握します。

そのうえで、所得税、住民税、該当する場合は個人事業税・消費税、さらに国民健康保険料や国民年金保険料などを差し引けば、手取りの概算を求められます。

ただし、所得税は課税所得、国民健康保険料は前年所得など、負担ごとに計算の基準が異なります。そのため、「年収の○%が税金」といった一律の割合では正確に計算できません。

まとめ

個人事業主の手取りは、年収だけで決まるものではありません。必要経費や青色申告特別控除、所得控除、家族構成、年齢、居住する自治体などによって、税金・社会保険料の負担は変わります。

まずは「売上から必要経費を引く」「所得控除を反映する」「所得税・住民税などを計算する」「社会保険料を確認する」という順序で、自分の条件に合わせて試算しましょう。

また、住民税や国民健康保険料は前年所得をもとに決まるため、独立後に売上が増えた場合は翌年度の負担まで見越して資金を残しておくことが重要です。青色申告や所得控除など利用できる制度も確認しながら、税金だけでなく実際に手元へ残る金額を基準に事業の資金計画を立ててください。

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