プログラマーの転職先として、目指すべきゴールのように捉えられることも多い「自社開発」ですが、果たして本当に目指すべき転職先なのでしょうか。
特に経験の少ないプログラマーほど、自社開発をある意味で神格化しているような意見も見られます。
実際に「自社開発」「受託開発」「客先常駐」の全てを経験するとなると、時間や労力もかかるため、事前にそれぞれの特徴を理解した上で、自分自身が本当に目指すべき方向性を決める必要があります。
そこで本記事では、各開発の働き方から働く上での魅力や注意すべきポイントについてご紹介していきたいと思います。
それぞれの働き方の違いをしっかりと理解した上で、転職先の企業を選ぶようにしましょう。
Contents
自社開発が本当に目指すべき転職先?
インターネット上の情報では、「プログラマーなら自社開発を目指すべき」「一番働きやすいのは自社開発企業」などの少し過剰とも取れる発言が多く見られます。
また初心者プログラマーを中心に、自社開発企業の経験がなくても、「転職先として目指すべきは自社開発企業だ」と盲目的になっている方も多いようです。
自分の目的を明確にし、それぞれの働き方をよく検討した上で出した答えが自社開発であれば問題ありませんが、なんとなく「自社開発が良いのでは?」程度の認識で転職活動をしてしまうと入社後に後悔する可能性が否定出来ません。
それぞれの企業における働き方とメリット・デメリットを順に確認していきましょう。
自社開発とは?
自社開発では、他の企業から依頼を受けるのではなく、自社のサービスや商品としてシステムを作成し公開・販売する企業を指します。
自社開発の働き方、メリット・デメリットを確認していきましょう。
- 自社開発の働き方
- 自社開発のメリット
- 自社開発のデメリット
自社開発の働き方
自社開発の特徴として、商品やサービスを1から自社で作成する点が挙げられます。
受託開発では「何を作るのか」は依頼主からの提案により決まるのに対し、自社開発ではアイデアを生み出すところから自社で考え、自分達でプログラムを開発していきます。
一般的には自社内にIT事業部のような部署が設けられ、企業内の一角が確保されます。
他部署と連携を取りながら、企業内部で目的のシステムを作成していくことになります。
自社開発には大きく2つのタイプが存在し、「企業内で利用するシステムを開発する自社開発」「企業外のユーザーが利用するシステムを開発する自社開発」に分かれます。
自社開発のメリット
自社開発のメリットは大きく分けて「スケジュールの調整が付けやすい」「コミュニケーションが取りやすい」「サービスの良し悪しを直接実感することができる」の3つが挙げられます。
スケジュールの調整が付けやすい
自社開発では、受託開発の働き方に比べるとスケジュールの調整が付けやすいメリットがあります。
受託開発の場合、発注元の企業が提示する金額や納期などに合わせるため、厳しいスケジュールが組まれることも少なくありません。
一方で自社開発の場合には、制作期間が長ければ従業員の賃金分の負荷は掛かってしまいますが、比較的余裕を持ったスケジュールを組むことが可能です。
特に上述した企業内で利用するシステムを開発する場合には、直接売上に繋がることが少ないため、かなり緩めの納期が設定される傾向にあります。
コミュニケーションが取りやすい
自社開発の場合、自社の社員が大半を占めるためコミュニケーションが取りやすいのもメリットです。
受託開発や客先常駐の場合には、コミュニケーションを取る相手が自分とは異なる企業の社員になることも多いため、気軽に質問出来ないといったケースも少なからず出てきます。
一方で、自社開発ではプロジェクトが始まる前からの知り合いであったり、他の部署でも同じ企業で働いているため、ある程度気さくにコミュニケーションを取ることが可能です。
サービスの良し悪しを直接実感することが出来る
サービスの良し悪しを直接実感することができるのは、プロジェクトが成功した暁には自信にも繋がる大きなメリットとなります。
受託開発の場合、システムを納品した時点で保守などの作業を除き作業が完了となります。
ユーザーが実際にどのように利用して、どのような感想を持ったのか直接聞くことが出来ません。
一方で、自社開発では一般向けにサービスを公開したのであれば、レビューや体験談としてインターネット上に投稿されたり、社内向けシステムでは同僚からの使用感を直接聞くことが可能です。
大きな売り上げが発生した場合には、昇進に繋がるケースも多く、自分が作ったサービスとして自信にも繋がるメリットがあります。
自社開発のデメリット
自社開発のデメリットとしては、「スキルがないと入社が難しい」「使用するスキルが偏る」の2つが挙げられます。
スキルがないと入社が厳しい
自社開発はプログラマーに人気の働き方とあって、競争率が激しく入社が厳しいのが実情です。
また、自社開発の場合には、客先常駐のようにとりあえず経験の浅い人でも出向させておけば会社として利益が出るわけではないため、新卒以外の未経験者を採用することは基本的にありません。
企業が求めるスキルを、ある程度以上のレベルで保有していることが入社のための最低条件となるでしょう。
使用するスキルが偏る
企業によって得意とする分野は異なり、分野により使用するスキルも異なります。
自社開発では、ある程度決まった分野の技術しか利用しないことが多く、習得出来るスキルにも偏りが生まれます。
また、社内独自で開発したフレームワークなどを利用している場合には、社外に出ると全く使えないスキルとなる可能性もあることはデメリットとなり得ます。
自社開発と比較した受託開発の働き方
次に自社開発と「受託開発」を比較して、働き方の違いについて確認していきましょう。
- 受託開発では依頼元が中心の働き方
- 受託開発ならではのメリット
- 受託開発ならではのデメリット
受託開発では依頼元が中心の働き方
受託開発では、自社で開発するシステムのアイデアを生み出すのではなく、あくまで発注者から依頼されたシステムを作成する点が自社開発と大きく異なります。
サイトのデザインや機能といった面で、提案をすることはありますが、最終決定権は発注者側です。
また納期についても、発注者側からいつまでに納品して欲しいといった依頼が出されるケースが多くなります。
受託開発ならではのメリット
受託開発のメリットは、「様々な企業のシステム開発に携わることが可能」「安定して仕事を獲得しやすい」「事務所持ち帰り案件が多い」の3つが挙げられます。
様々な企業のシステム開発に携わることが可能
受託案件では、1つの区切りとしてシステムの納品が挙げられます。
システムの納品が完了すると、別の企業から依頼されたシステム開発に参画することになるため、様々な企業のシステム開発に対し、同じ企業に所属していながら参加することが可能となります。
安定して仕事を獲得しやすい
企業で働く従業員には直接関係ない部分かも知れませんが、自社開発に比べて安定して仕事を獲得しやすく、企業として安定しやすい傾向にあります。
自社開発では、商品が売れなければ売り上げが上がらないのに対し、受託開発では納品が完了した時点で売り上げとなるため、企業としても予算の都合が付けやすい点もメリットです。
事務所持ち帰り案件が多い
受託開発では、客先常駐の働き方とは異なり、受託企業が自社でシステム開発を行うことが多い点もメリットです。
また自社開発のように全てのリソースを自社で用意しなければならないとは限らず、専門的な機器やサーバーに関しては、発注者側で用意したものを利用出来ることも少なくありません。
従業員としても、基本的には自社内で作業を行い、必要な場合にのみ発注企業の元に伺えば良いため働き方の融通が聞く点もメリットです。
受託開発ならではのデメリット
受託開発ならではのデメリットとしては「スケジュールが厳しくなりやすい」「顧客の意見に振り回されやすい」の2つが挙げられます。
スケジュールが厳しくなりやすい
受託開発では納期が短く設定される傾向にあり、スケジュールが厳しい案件が多くなっています。
要因としては、案件を獲得するためになるべく安く・早く納品出来ることをアピールして営業することが挙げられます。
依頼者側からすると、どこの企業に依頼するか決めるための要素として「価格」と「納期」が重要なポイントとなるため、受注したい企業間で価格競争が起こり、無理なスケジュールが設定されるケースも少なくありません。
筆者の経験では、デスマーチと呼ばれる残業だらけのプロジェクトに陥り易いのが受託開発かと思います。
顧客の意見に振り回されやすい
顧客の意見に振り回されやすいのも受託開発のデメリットです。
発注者がIT分野に精通しているとは限らず、むしろ知識がない場合の方が多いのが実情です。
最初に決めた要件が変更されることや、後出しで仕様に関する情報が出てくることも少なくありません。
受託開発の場合には、発注者側が圧倒的に業務知識が豊富なため、システム開発を実際に始めてみると、発注者側から不満や気付きが生まれて仕様変更が起きやすく、結果的にスケジュールが遅れる原因となることも多いので注意が必要です。
自社開発と比較した客先常駐(SES)の働き方
システム開発のもう1つの働き方「客先常駐(SES)」を自社開発と比較した場合にはどのような違いがあるのか確認していきましょう。
- 客先常駐では多様な企業の案件に参画する働き方
- 客先常駐ならではのメリット
- 客先常駐ならではのデメリット
客先常駐では多様な企業の案件に参画する働き方
客先常駐では、プロジェクト毎に様々な企業の案件に参画して開発を行います。
一般的にはシステム依頼者のオフィスまたは受託開発を行っている企業のオフィスなどへ出向し、自社開発や受託開発企業のサポート的な形で働くことが多くなっています。
客先常駐の場合には、受託開発のようにシステムの納品が1つの区切りとは限らず、設計やコーティング・テストなど特定の期間のみプロジェクトに参加することも多いのが特徴です。
客先常駐ならではのメリット
客先常駐ならではのメリットは「様々な企業の人と交流を持つことが出来る」「現場を転々としていても問題視されない」「極端な残業にはなりにくい」の3つが挙げられます。
様々な企業の人と交流を持つことが出来る
客先常駐では、働き方の特性上、様々な企業に訪問する形になるので自社以外の人と交流を深めることが可能になります。
エンジニアは職業柄、他の企業の人と関わりを持つ機会が少ないため、人脈を広げることは難しいのですが、客先常駐においては自社よりも上流を担当する企業の社員と交流を深めることも難しくありません。
将来的に転職を希望する場合にも、築いた人脈からヘッドハンティングや紹介などを介して新しい働き先が見つかることも少なくないでしょう。
現場を転々としていても問題視されない
客先常駐では、プロジェクトやフェーズ毎に案件が変わることは珍しいことではありません。
そのため、1年間の間に複数の現場を転々としていたとしても、特に問題になるようなことは少ないのが実情です。
長く同じ職場で働くことが苦痛に感じる方などには、客先常駐として数ヶ月単位で案件を移っていくのは効率的な働き方とも考えられます。
極端な残業にはなりにくい
客先常駐では、極端な残業にはなりにくいメリットがあります。
要因としては、自社が常駐先企業と契約する際に、労働時間単位で契約が行われるため、残業が多くなればなるほど、常住先企業が支払わないといけない費用が高くなってしまうことに起因します。
企業同士の間では、ブラック企業のように残業代を払わないなどの措置は実質不可能なため、常駐先企業としてもなんとか契約時間内で作業が完了するよう配慮します。
受託開発の場合には、納品が最優先とされるため、長時間残業も起こりやすくなりますが、客先常駐の働き方では、上記の理由から比較的残業時間を抑えられると考えて良いでしょう。
客先常駐ならではのデメリット
客先常駐ならではのデメリットとしては、「案件毎に求められるスキルが異なる」「人間関係を案件毎に1から築く必要がある」の2つが挙げられます。
案件毎に求められるスキルが異なる
客先常駐では、案件毎に求められるスキルが異なり、フレームワークはもちろんプログラミング言語自体も案件によって切り替えて使用する必要があります。
様々なスキルを学べるという意味では良いのですが、全てのスキルが中途半端になりやすく、技術者として高度なレベルに到達することが難しいといったデメリットが付きまといます。
人間関係を案件毎に1から築く必要がある
客先常駐では、案件によって働く場所も変わるため、案件を移るたびに1から人間関係を築く必要があります。
客先常駐では数ヶ月~1年単位で案件が変わることも珍しくないため、関係が深まり始めたタイミングでプロジェクトを抜け、新たなチームに参加することも少なくありません。
「コミュニケーションをほとんど取らなくて良いため客先常駐の方が楽だ」という意見もありますが、上手くチームに溶け込むためには、ある程度メンバーとの関係性を深めることは必須となります。
数ヶ月単位での信頼関係構築は負担も大きく、デメリットと呼べるでしょう。
自社開発が必ずしも良いとは限らない理由とは
自社開発は、多くのプログラマーが希望しているとはいえ、それなりのリスクがあることもしっかりと確認しておきましょう。
- サービスや商品の売り上げ次第で会社の経営状況が変わる
- 自社開発でも労働時間が膨れ上がる可能性はある
- 1つの技術に偏りがちなため、転職に苦労することも
サービスや商品の売り上げ次第で会社の経営状況が変わる
自社開発では、受託開発や客先常駐のように、必ず売り上げが発生するゴールが見えた状態で開発を進めているわけではありません。
サービスや商品が完成しても、売り上げ次第では赤字になることもあります。
特にスタートアップ企業などでは、自社で開発しているサービスの売れ行き次第で企業の命運が決まると言っても過言ではないプロジェクトが多数存在しています。
そのため、サービスや商品の売り上げ次第では、給料が上がらなかったり解雇になることも視野に入れておく必要があるでしょう。
自社開発でも労働時間が膨れ上がる可能性はある
自社開発ではスケジュールの融通が効きやすいと上述していますが、サービスや商品に問題が起きた場合には、全責任が企業に襲ってくることになり、24時間体制での対応に追われることも少なくありません。
また、スタートアップ企業では運営を軌道に乗せるために、朝から晩まで働いているなんてことも頻繁に耳にします。
自社開発だから納期もなく、緩いスケジュールなんだと思って入社すると後悔することになるかも知れません。
1つの技術に偏りがちなため、転職に苦労することも
自社開発では、特定のスキルに特化して開発を進めていくケースが大半です。
新たなスキルを積極的に取り入れている企業も存在しますが、多くの企業では1つの言語やフレームワークに特化してサービスや商品を開発していきます。
同じ会社で定年まで働くのであれば問題ありませんが、転職することになった場合に市場が求めているスキルを身につけているのか、自分自身で意識しておくことも自社開発企業では必要になるでしょう。
まとめ:自社開発企業に転職するべきかは目的次第
本記事では、自社開発と受託開発、客先常駐(SES)での働き方を比較しながら、それぞれのメリット・デメリットについてご紹介してきました。
結論としては、自社開発企業に転職するべきかはご自身の目的次第となってしまいます。
「自社開発は納期がゆるそうだから」「自由に働けそうだから」といった楽をしたい理由で転職してしまうと、後々後悔する可能性も否定出来ません。
ご自身の目的や目標を十分に検討した上で、転職活動を実施するようにしましょう。

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