1on1ミーティングとは?目的や進め方、効果を高める為のポイント

人材育成・マネジメント

近年、1on1ミーティングは1対1で上司と部下が話し合う場として、多くの企業で取り上げられています。一方で、「本当に意味があるのか」「何を話していいのかわからない」「どうやって取り入れればいいのか」と、ミーティングの目的や進め方について戸惑う声もきかれます。

そこでこの記事では、1on1ミーティングの意義やメリットといった基本部分から、効果的に運用するためのポイントについて解説します。

1on1ミーティングとは?

1on1ミーティングとは、定期的に上司と部下が1対1で話し合う場をいいます。部下の成長を促す、人材育成の手法として多くの企業で取り入れられています。

1on1ミーティングの目的

1on1ミーティングの目的は、1対1の対話を通じて、部下に現状把握や問題解決について「考えさせ」「気づかせる」点にあります。上司が一方的に正解を伝える場ではなく、あくまでも部下に話してもらい、考えてもらうことを目的とします。そのために、上司は傾聴やコーチングといったスキルを身に着けることが重要です。

1on1ミーティングを効果的に行うことで、部下は問題点と改善策に自ら気が付くことができます。一方的に指導されたり、正解を教わったりするケースとは異なり、主体的に問題に取り組むことができるのです。

1on1ミーティングと評価面談の違い

1on1ミーティングは、あくまでも部下と質の良いコミュニケーションを図ることを目的としています。対話を通じて信頼関係を醸成すると共に、部下の成長を促します。ときには、業務とは直接関係のないプライベートな話題に触れることで、部下が心を開いてくれることもあります。

評価面談との違いは、プロジェクトの進捗確認や部下の成績の評価を目的としていない点です。1on1ミーティングでの質問が評価に影響することはないというように、あらかじめ部下に目的の違いを伝えておくことも重要です。

1on1ミーティングが注目され始めた背景

日本で1on1ミーティングが注目されたきっかけは、ヤフー株式会社が人材育成に取り入れたことです。2012年頃から1on1ミーティングを導入したヤフーでは、組織運営の向上と、部下の潜在力の開花を目的に取り組んでいます。

また、職場でのコミュニケーションのあり方が変化したことや、働くことの価値観が多様化したことも、1on1ミーティングが注目される背景にあります。部下の考えていることがわからない、昔ながらの職場の飲み会が減った、リモートや時短勤務などで部下と顔を合わせる機会が少ない。こうした変化は、チームビルディングや職場の信頼関係の醸成において、マネジメント層に課題を抱かせることになりました。

また、終身雇用が終わり、予測不可能な時代といわれる現代では、ひとり一人が主体的なキャリアを形成することが、働きがいにつながります。1on1ミーティングは、マネジメント層が目標管理を行う人材育成の手法と平行して、部下の成長を支援するために必要とされているのです。

1on1ミーティングのメリットや期待される効果

1on1ミーティングは、1対1の対話を通じて、部下の成長を促すほか、信頼関係の構築、また部下の会社に対するエンゲージメント向上が期待できます。

部下の成長

1on1ミーティングは、部下に主体的に考える場や、気づきを与える場です。上司の問いかけを通じて、現状の課題や改善策について、部下自身が考え答えを口にします。1on1ミーティングの場を主導するのは上司ですが、主体はあくまでも部下。答えを部下が見つけることにより、成長を促すだけではなく、職場での主体性を育てることができるでしょう。

部下との信頼関係の深まり

評価面談とは異なり、1on1ミーティングは仕事以外の話題にも触れます。カジュアルな雰囲気で話を進めるため、部下が心を開いてくれる可能性が高くなります。また、1on1ミーティングの目的は、「部下の話を聴くこと」です。話を聞き、自分のことを理解しようとする上司の姿勢に、部下は仕事の不満や不安も口にできるようになるのです。

エンゲージメントの向上

定期的な1対1の対話の場は、エンゲージメント向上にもつながります。部下が日頃から考えていることや、不満に思っていることを、タイミングを逃さず聴くことで、離職など大きな決断をする一歩手前で対策を打つことができるのです。

1on1ミーティングの進め方

1対1で部下と対話をするとなった場合、1on1ミーティングの経験がない上司は進め方に戸惑うかもしれません。ときには、雑談に終始してしまい、仕事上の部下の成長にはつながらないということも。ここからは1on1ミーティングを効果的に行うための進め方について解説します。

目的を決め共有する

まず、会社全体やチーム、職場で1on1ミーティングを導入するにあたり、1on1ミーティングそのものの目的を共有しましょう。評価面談とは異なり、評価を下す場ではないこと。さらに、部下の考えや不満などを共有できる場であることなど、部下が主役の時間であることを伝えます。目的を共有することで、雑談の場で終始することを避けることができます。

テーマを決める

1on1ミーティングを実施する前に、何をテーマとするかを決定します。上司主導で決めるのではなく、テーマを部下が決定できるのが理想です。相談したい事柄や、仕事で悩んでいることなど、いくつか事前にピックアップしておくのも、部下が決める際の助けになります。

ミーティングの実施

ミーティングでは、部下が話したいことを聞き出します。傾聴やコーチングといったスキルを用いて、上司が一方的に話をして終わることがないよう気をつけましょう。また、1on1ミーティングで話した内容を記録しておくことは、人材育成の方針決定に役立ちます。ミーティングの終盤では、記録をもとに話した内容を振り返り、職場での行動につなげましょう。

フィードバックと次回ミーティング設定

1on1ミーティングで部下の話を聴いたあとは、適切なフィードバックを行いましょう。部下から提案された改善策や気づきについて、アドバイスを行うことで部下のモチベーションアップにつながります。また、1on1ミーティングは、週に1回など短いサイクルのなかで繰り返します。そのため、ミーティングの時間内で次回のテーマと時間を設定しておくと、時間を有効活用できます。

ただし、改善策や部下自身の成長など、結果が目に見えるのには時間がかかります。短期的に達成できる行動目標を立てるなど、1on1ミーティングのスパンにあわせたテーマや目標を設定するよう心がけましょう。

1on1ミーティングで話すことは?主なテーマ・ネタ

いくら1on1ミーティングが評価面談などとは異なる場だとしても、上司と1対1で話すというのは緊張するものです。予め、話すテーマやネタを上司が持っておくことで、部下の緊張を和らげることができます。また、話が脱線したまになるのを防ぐことにもつながります。1on1ミーティングで取り上げられる内容についてご紹介します。

プライベートの話題

ミーティングの冒頭では、アイスブレイクとしてプライベートの話題や、雑談から入ることをおすすめします。「最近、調子はどう?」というような問いかけや、入社や異動したばかりの社員に対しては、「職場(仕事)には慣れた?」というように聞いてみるのもいいでしょう。

そのほか、週末の過ごし方や趣味についてなども、場を和ませる効果があります。リラックスした雰囲気を作りつつ、徐々に仕事の話題など深いテーマへ移っていくのがいいでしょう。

業務や課題についての話題

1on1ミーティングは、1対1の対話であるため、部下も仕事の悩みや課題について相談しやすくなります。以下のような問いかけを用いて、業務で困っていることはないかなどを聞いてみましょう。

「取り組んでいる業務で、何か困ったことはないか?」
「業務で改善したいことなど、提案があれば教えてほしい」

また、昇級や異動で仕事内容が変化したり、結婚・出産などライフスタイルが変化した部下については、「現在の業務量は適切か?」「仕事で調整してほしいことはあるか?」など、問いかけてみるのもいいでしょう。部下が抱えている不満や課題について理解を深めることができます。

キャリアについての話題

1on1ミーティングを繰り返し、信頼関係が構築されたタイミングで、キャリアの話題を振ってみるのもいいでしょう。興味のある業務や、将来的に目指しているキャリアについてなどは、1on1ミーティングだからこそ扱えるテーマです。

部下の要望を、そのまま人事異動に反映できるとは限りませんが、話せる場があることで部下の納得感が高まります。また、部下の要望を把握し、その後の人材育成に活かすことができます。

会社の方針や戦略

1on1ミーティングは、会社の方針や戦略を個別に伝える場としても活用できます。期初や目標設定面談後などは、1on1ミーティングを活用するチャンスです。上層部の決定をわかりやすく部下に伝えるとともに、何か不満や疑問を抱いていないかを問いかけます。全社会など、全体に向けての場では伝えづらい、戦略の詳細や背景なども伝えることができます。

話をする際は、「どう思ったか」という問いかけを交え、部下が自分ごととして捉えられるようにサポートすることも重要です。

1on1で話すこととは?テーマ別の具体例や実施時に意識すべきこと

意味のない1on1ミーティングになってしまう状況とは?

1on1ミーティングを導入したものの、部下の成長につながっていない気がする。業務を優先してミーティングが形骸化している。そんな状況では、以下のような問題点が隠れているかもしれません。

目的が共有されていない

ミーティングの時間を設定しても、業務優先でリスケジュールが続いている。そんなケースでは、部下はもちろんのこと、1on1ミーティングを主導するマネジメント層も、ミーティングの目的を理解していない可能性があります。

なぜ、1on1ミーティングを行うのかという、会社としての方針を明確にして伝えましょう。「部下の成長を促す」ことや、「仕事の悩みや課題を相談できる」など、目的が明確になることで、業務を邪魔されたくない・面談に時間をとられたくないと部下が思うのを避けることができます。

上司が一方的に話している

1on1ミーティングが傾聴ではなく、上司が一方的に話す場になってしまっていると、参加する部下もミーティングの意味が感じられません。1on1ミーティングを主導するマネジメント層に対して、ミーティングの目的を共有するだけではなく、ミーティングの理想的な流れや扱うテーマ、そして部下の話を引き出すためのテクニックなどについて、研修を設けることをおすすめします。

傾聴やコーチングは、問いかけや気づきを促すために重要なテクニックです。すぐに身に着けるのは難しいかもしれませんが、知識の習得やロールプレイングを通じて、上司のマネジメントスキルを伸ばすことができます。

効果的な1on1ミーティングにする為のポイント

最後に、1on1ミーティングを効果的に運用するためのポイントについてご紹介します。

部下の話を傾聴する

1on1ミーティングで重要なのが、部下との信頼関係を築くためのコミュニケーションです。部下に安心して話をしてもらうためには、上司が傾聴のテクニックを有効的に活用する必要があります。

傾聴とは、共感しながら聞くことです。ここでは、必ずしも相手の意見に同意する必要はありません。否定したり、自分の考えを押し付けたりしないことが大切です。相手に安心感を持ってもらうためには、相手の仕草や表情などを合わせる「ミラーリング」、相手の話すスピードやリズムなどを合わせる「マッチング」、相手が言った事実や感情などを繰り返し伝える「バックトラッキング」などが役立ちます。

できれば部下にテーマを決めてもらう

1on1ミーティングの場を効果的に活用するためには、事前にテーマを決めておく必要があります。その際は前述の通り、可能であれば部下自身に「上司に聞きたいこと」「話がしたいこと」を主軸として選んでもらうのが理想です。部下が自分で選ぶことには、ミーティングの場に主体的に参加するという意味があります。

選ぶのが難しいという場合、テーマを事前にいくつかピックアップしておく方法も有効です。

継続する

1on1ミーティングが単発で終わってしまったり、いつの間にか自然消滅してしまったりする状況では、部下の育成にはつながりません。短時間で行える1on1ミーティングでも、仕事の都合により実施できないタイミングがあるかもしれません。そのような場合には、次回の日程をスケジューリングし、継続が途切れないよう配慮しましょう。

全社的に取り組む

上司主導で実施するのではなく、全社的に取り組むことで、1on1ミーティングの効果を高めることができます。具体的には、「人事部門がミーティングのテーマなど、テンプレートとして活用できる素材を用意する」「管理職向けの研修を実施する」「1on1の実施状況や効果について、定期的なモニタリングを実施する」といった点が挙げられます。

近年では、タレントマネジメントシステムなどを用いて、1on1ミーティングの実施状況や内容を可視化する取組みも見られます。「どのような場として活用されているか」「何を話しているのか」「部下にどんな影響が見られたか」を把握することで、個々の部下の状況を確認できます。ただし、1on1ミーティングはプライベートな話題に触れることもあるため、情報の開示範囲については十分に気を配ることが重要です。

1on1ミーティングに関するまとめ

1on1ミーティングは、部下の成長を促す場です。傾聴やコーチングなどを用いて上司が部下の話を聞くことで、信頼関係の構築や部下のエンゲージメント向上が期待できます。実施の際は、ミーティングの目的を全社で共有するとともに、部下が主体的に取り組めるような工夫を行いましょう。継続的に実施することで、対話の場が、部下の成長につながるでしょう。