管理職のあるべき姿とは?役割や必要なスキルと共に紹介

管理職のあるべき姿 人材育成・マネジメント

「管理職の育成方法」や「管理職としてのスキルを知りたい」など、管理職の育成に悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。たしかに理想的な管理職の姿を追求することは、組織やチームの成功に不可欠です。

近年は、働き方や働く人の多様化など、時代の変化とともにあるべき管理職の姿や求められるスキルも変化しています。今の時代にマッチした管理職を育てるためには「管理職のあるべき姿」の既成概念を捨てることが重要です。

この記事を読むことで、現代の管理職の役割やあるべき姿、必要なスキルがわかります。これから管理職を育成していく経営者の方や、管理職を目指している方はぜひ参考にしてください。

そもそも管理職の役割とは

「管理職は一般社員とは立場が違う」ことを理解しておく必要があります。管理職としてのあるべき姿を紹介する前に、そもそも、管理職にはどんな役割があるのかを確認しておきましょう。

業務の管理

管理職は一般社員とは異なり、経営側に近い視点で会社全体を見ながら物事を考えなければなりません。そのためには、自分の業務管理に加えて部下の業務管理も重要な役割です。

具体的には、チームとしての目標を設定しその目標に対してのタスクを割り当て、業務の進捗状況を把握しフィードバックや調整をおこないます。このように、管理職は組織全体の状況も考えた部下の業務管理が必要です。

部下の育成やマネジメント

組織が成長していくためには将来を担う人材の育成が欠かせません。したがって、部下の育成とマネジメントは企業の成長に大きく関係します。

そのため、部下の能力を正確に把握し、適切な評価やフィードバックでスキルを最大限に活かせる環境を構築することは管理職の重要な役割のひとつです。また、成長の機会を与えるためにプロジェクトを任せることや、悩み事を聞くなどのサポートも重要になります。

社員と経営側の橋渡し

管理職は経営陣の意図を理解して伝えるだけでなく、逆に部下やチームの声を経営陣に伝えることで組織全体の一体感を高める役割もあります。つまり、自らも現場で業務をおこなうと同時に、経営側の立場も理解しなければなりません。

このように、管理職には、一般社員と経営陣の間で円滑なコミュニケーションと情報の伝達を担う重要な橋渡しの役割もあるのです。

管理職のあるべき姿とは?

管理職になったばかりの人などは管理職としてどのようなことが必要なのかわからず、悩んでしまうことも少なくありません。管理職にはさまざまな役割があり、あるべき姿を定義するのは簡単ではありませんが、ここでは一般的な「管理職のあるべき姿」を紹介します。

経営視点を持っている

管理職は自分の部署やチームの業務を管理するだけでなく、組織全体の目標や戦略に沿って行動し、その成果に貢献する役割もあります。そのためには、経営側の視点を持ち適切な意思決定をおこなうことで、チームや部下の成長と組織のパフォーマンスを向上させるための行動が必要です。

目標設定と進捗管理ができる

管理職には部署やチームの目標を設定し、達成に向けた計画や戦略の策定が求められます。
たとえば、目標管理では目標の具体化や期限の設定、必要な人員の確保などです。

また、進捗状況を把握し必要に応じて調整や指示をおこない、プロジェクトや業務の円滑な進行を管理します。場合によっては、指導や改善もしなければなりません。

戦略を立案できる

部下とともに組織全体を動かすためには組織の目標やビジョンを明確にし、その達成に向けて行動するための戦略が欠かせません。管理職は組織の方向性を把握し、正しい現状分析で目標達成するための戦略を立案することが求められます。

また、途中で戦略の修正が求められるような場合においても、柔軟に戦略を立て直す力が管理職には必要です。

外部との調整力がある

組織は外部の関係者との関係性の構築や調整が重要です。そのため、管理職には外部との調整能力も求められます。たとえば、部下がお客様とトラブルを起こしたときの収束や、調整などは管理職の任務です。

また、外部の関係者との間で互いの利益を調整しながら協力関係を構築するなど、外部とのバランスの取れた関係を作らなければなりません。管理職はこのような外部との調整能力も重要な役割として期待されています。

公平に評価ができる

公平な評価は、部下のパフォーマンス向上にも影響します。適切な評価がされることで部下は自分の強みや改善すべき点を把握し、成長に向けた努力をするのです。管理職は客観的な目線で公平な評価をしなければいけません。

評価において重要なのは「主観を入れない」ということです。そうしなければ上司と部下の関係は悪くなり、部下のモチベーションも下がります。また、公平な評価をするためには、平等にチャンスを与えることも重要です。

リーダーシップと責任感を持ち合わせている

管理職は組織の中で重要な意思決定をおこない、その結果に責任を持つ必要があります。また、失敗や誤りがあった場合には責任を受け入れ、適切な対応と改善策の提案が必要です。

たとえば、部下が失敗したときは改善策を一緒に考えることや、部下にかわって謝罪するという対応も必要になります。このような行動が部下からの信頼を高め、チームの結束力が強くなるのです。そのためにも、日頃からの部下とのコミュニケーションを取る必要があります。

職場の雰囲気作りができる

職場の雰囲気作りは部下の満足度やモチベーションに大きな影響を与えるため、管理職はこの役割を十分に認識し、積極的に取り組む必要があります。具体的には、コミュニケーションをとり、部下のニーズや要望を聞くことが必要です。

職場環境は部下の生産性にも直結するため、成果を上げるための環境を作り出す管理職の役割は大きいと言えます。

成長意欲を持ち続けている

管理職は部下のお手本にならなければなりません。そのためには部下の成長を促すだけでなく、自分自身も成長を求めていかなければ部下からの信頼は得られにくくなります。

つまり、管理職が自ら成長意欲を持ち、自己啓発やスキルの向上を図ることで組織や部下への影響力が高まるのです。また、成長意欲を持ち続けることは、新たなチャレンジに取り組む姿勢を示すことも意味します。

たとえば、自ら新しい試みやアイデアを提案し、むずかしい課題にチャレンジすることで組織全体のモチベーション向上につながることも少なくありません。

管理職について詳しく知りたい方は、こちらの記事で紹介しています。

管理職とは?定義はどこから?役職の種類や必要な能力・役割を解説

管理職に必要なスキル

管理職は、変化の激しいビジネス環境や多様なチームメンバーとの関わりの中で能力を発揮し、部下を指導しながら組織に貢献しなければなりません。では、管理職には具体的にどのようなスキルが必要なのでしょうか。アメリカの経済学者ロバート・L・カッツ氏によって提唱された3つのスキルを紹介します。

テクニカル・スキル

テクニカルスキルとは「業務遂行能力」のことです。業務や専門領域に関する知識や、技術的な能力を持っているかが問われます。

あくまでも、組織として円滑に遂行させなければなりません。したがって、管理職は部下に対して的確な指示やアドバイスをするために、新しい技術やトレンドにも敏感になるなど継続的に学び続けることが重要となります。

ヒューマンスキル

ヒューマンスキルは「対人関係を円滑にする能力」を意味します。管理職は、コミュニケーションによって部下との信頼関係を築き、チームのモチベーションを高める役割を果たさなければなりません。

このヒューマンスキルには、もちろん社外との対人関係の構築能力も含まれ、以下の3つがあります。
良好な人間関係を構築する
自分の考えや思いを伝達する
相手の考えや課題を理解する

コンセプチュアルスキル

コンセプチュアルスキルとは「本質を見極める能力」です。管理職は組織の将来の方向性をみて戦略を立て、実行しなければなりません。そのため、本質を見極める能力を持つことが重要で、組織のビジョンや目標にもとづいた戦略的な意思決定をおこないます。

たとえば、売上や顧客データなどを分析して課題の本質を見抜き、素早く対策を提案する能力などもコンセプチュアルスキルのひとつです。このように、本質を見極め課題に対し的確な方向性を示す力は組織全体の成果につながります。

管理職に必要な能力について、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。

管理職に求められる3つの能力とは?スキルの高め方とあるべき姿

管理職のあるべき姿は時代や環境により変わる

過去においては、管理職は主に管理・監督の役割でした。しかし、現代ではより人間中心の組織文化が求められるようになり、管理職の役割も多様化しています。

つまり、時代と環境の変化はビジネスのあり方や組織の構造にも大きな影響を与え、それにともない、管理職に求められる役割やスキルも変化しているのです。そのため、管理職も新たな価値観や技術の進歩、働き方の変化などにあわせた柔軟性を持つことが求められます。

従来の「管理職とはこうあるべき」という既成概念が強すぎると、組織に悪影響を及ぼすことも少なくありません。大切なのは、既成概念から脱却し「一緒に働きたいと思える管理職」という視点で考えることです。

管理職が理想像を実現するために企業ができること

現代の組織では、管理職が理想像を実現することが重要な課題となっています。しかし、はじめて管理職を経験する人材などは、何から始めたらよいのかわからず、理想的な管理職像に悩むことも少なくありません。

最後に「管理職が理想像を実現するために企業ができること」の具体的な取り組みについて解説します。

管理職の理想像を一緒に作る

管理職の育成には、以下のアプローチが有効です。まず、組織のビジョンや価値観を共有し、管理職の役割や期待について伝えます。

ここで大切なのは、前述の通り「管理職はこうあるべき」を押し付けないことです。自分が目指したい管理職像を企業側が一緒になって考え、作り上げることがポイントとなります。

また、管理職は孤独になることも多いのでコミュニケーションを積極的に取り、ときには助言も必要です。しかし、単純に正解を教えるのではなく、あくまでも部下の意見や考えを尊重することで成長を促しましょう。

企業側がオープンなコミュニケーションと協力的な環境を提供し、一緒に理想的な管理職像を共有しながら育成することが重要です。

管理職のための研修をおこなう

管理職は組織のリーダーシップを担い、多岐にわたる業務と責任を持つ立場です。そのため多くの知識が必要となりますが、先輩から学ぶには限界があることも少なくありません。

そのようなときは、社外に依頼して管理職研修をおこなうのもひとつの方法です。研修を受けることで、自己意識や問題解決能力の向上、チームのモチベーション向上などにつながりやすくなります。

このように、企業は管理職のための研修プログラムを提供し、継続的な学習と成長を支援することも理想の管理職像を実現させるためには重要です。

管理職のあるべき姿に関するまとめ

管理職になると、考え方や視点を大きく変える必要があります。また、管理職には基本的な「役割」がありますが、管理職の理想像は時代によって変化します。

以前は部下の業務管理やマネジメントが重視されていました。しかし、近年では部下の手本となる行動やリーダーシップ、経営側の視点を持ちながら業務に取り組むことが求められています。

さらに、会社が目標を達成するためにはチームのメンバーである部下が心地よく働き、成果を上げることが重要なのです。そのためには、企業と管理職が協力して、従来の管理職のあるべき姿の既成概念にとらわれず、理想的な管理職像を作り上げていく必要があります。