管理職が潰れる原因と潰さないために企業が行える対策

管理職潰れる 人材育成・マネジメント

「このままでは自社の管理職が、ストレスで身体的・精神的に潰れてしまうのではないか」と心配な経営者の方もいるのではないでしょうか。

確かに、管理職のストレスとプレッシャーは軽視できない問題です。管理職が潰れる前の変化に気づき、早めに対処することが重要です。

この記事では、管理職が潰れる原因や、潰れない組織にするための環境づくりについて解説します。最後まで読むことで、管理職が働きやすくなり、より実力を発揮してくれる企業になるでしょう。ぜひ、参考にしてください。

管理職が潰れてしまう原因とは

人が仕事上で潰れてしまう原因の多くは業務上の精神的ストレスです。特に、管理職においては「管理職だからこそ負担がのしかかる」ことが原因となります。

代表的な原因を解説しますので、当てはまっていないかチェックしてみてください。

業務量過多による負担

独立行政法人労働政策研究・研修機構がまとめた管理職ヒアリング調査結果によると多忙だと感じている人が多くいます。

この原因は、管理職は部下の指導・育成業務などの管理職としての業務に加え、自らも現場業務も兼任しているためです。マネジメントに多く時間を取られ、プレイヤーとしての業務にあてる時間がなくなり、結果として残業が多くなってしまうことがあります。

加えて、人手不足であることもプレイヤーとしての業務負担に拍車をかけている原因のひとつです。

パーソル総合研究所が発表した中間管理職の就業負担に関する定量調査結果報告書によると、50.8%の管理職が「自分の会社は人手不足である」と回答しています。

責任の重さによるプレッシャー

管理職になると、自分の業務に対する責任だけではなく、部下の責任も負わなければならないことが一般的です。

このようなプレッシャーを感じ、耐えられなくなってしまうケースも少なくありません。
管理職への昇進を希望しない理由として「管理職になると責任が重くなる」ということをあげている人が69.3%を占めていることからもわかります。
※参照:独立行政法人労働政策研究・研修機構 | 多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査(企業調査・労働者調査)

実際に、パーソル総合研究所が実施したグローバル就業実態・成長意欲調査によると、日本では管理職になりたいと思う一般社員は19.8%しかいません。

社員が管理職になりたくないと思う理由と企業側が行うべき対策

人間関係の問題

管理職は組織内で人間関係のトラブルが起こった場合、双方からの意見を聞き解決しなければなりません。

片方の意見だけで判断すると偏った対応になる可能性があるため、両者の意見を尊重し双方の立場や言い分を考慮しながら解決策を見つける必要があります。

このようなトラブル調整などは、業務の成果にはならない上、時間だけを浪費する行為のためストレスになるケースも少なくありません。

パーソル総合研究所が発表した中間管理職の就業負担に関する定量調査結果報告書によると「組織内のトラブルや障害を解決すること」を一番の負担と感じています。

部下のマネジメントに関する負担

管理職になると、部下のマネジメントをしなければならないケースがほとんどです。

しかし、部下との年齢が離れすぎていて考え方にギャップがあり、意思疎通がうまく行かないことも少なくありません。

上司と部下の関係である以上、上手にコントロールし組織の一員として能力を発揮させるのが管理職の役目です。ときには、上司として厳しく指導しなければならない場面もあるでしょう。

指導の際も部下のモチベーションを下げないように配慮が必要で、接し方が悪ければ思うように活躍してくれず管理職の責任になることもあります。

このような、部下のマネジメントを負担に感じている管理職は少なくありません。先ほどのパーソル総合研究所の調査でも、負担に感じている項目の上位はマネジメント関連であることからもわかります。

リモートワークなど環境の変化

コロナ禍でリモートワークが増えたことで、メンタルに変化が起こったケースもあります。

たとえば、対面でのコミュニケーションが減ったことで部下や仲間と話す機会を失われ、責任と数値管理だけに追われる感覚になってしまうなどです。

部下が目に見える場所で統率をとっていた管理職にとって、自分の姿を見せられないことや、対話ができない環境の変化でメンタル不調を訴える管理職が増えています。

管理職が潰れることによる企業・組織への悪影響

次に、もし管理職が潰れて精神疾患などで休職する事態が生じた場合、組織にどのような影響があるかを解説します。

コストの増加

従業員が休職すると、その間に支払う手当などに加え、代わりの人員を補充するための費用が発生します。ましてや、管理職の代替となると一般の従業員より高くなることがほとんどです。

内閣府の調査によると、仮に年収600万円の人が6か月間休職した場合、企業が支払うコストは、合計で422万円になるという試算が出ています。

このように管理職が休職するとなれば、コストの増加により企業経営に影響する可能性も否定できません。

現場の物理的な業務負担

管理職は現場を兼任していることが多いため、実質人員減となります。マンパワーが減るため、現場の業務負担は避けられません。

誰かが代わりを務めなければならず、通常は携わっていない不慣れな仕事であった場合にはさらに負担がかかるでしょう。

このような状況が長期にわたって続けば、従業員から不満が出る可能性もあります。

現場の心理的な負担

管理職が不在となることで、人員が減ることによる物理的負担に加え、リーダーがいなくなるという心理的負担から現場が混乱することが多くあります。

具体的には次のようなものです。

  • 人員不足による業務量の調整が必要
  • 職務を代行できる人材がいない
  • 責任者が不在となることで指示命令系統が乱れる
  • 困ったときに相談できる上司がいないことへの不安

退職のように事前にわかっていれば対処が可能ですが、精神疾患の場合は即日休職となるケースが多いため、対処が難しくなります。

管理職本人への影響

精神疾患などの場合は、体調を考慮して職務制限や休職という対応がベストでしょう。

しかし、休職や職務の制限が長期化すれば管理職としての役割を果たせないため、このまま管理職のままにしておくわけにはいかないのも企業として当然の考え方です。

休職や降格は本人のキャリアや生活設計に大きな影響を与えます。したがって、本人も休職が長引けば待遇に影響があることを認識しており、無理して業務に復帰しさらに悪化するということにもつながりかねません。

このように本人への影響は避けられないため、早めに症状に気づいて対処することが必要です。

潰れる直前の管理職に気づくには?

前章で解説したとおり、管理職が潰れて周囲に影響が出る前に気づいてあげなければなりません。

管理職は自分に悩みがあっても部下に相談するわけにもいかず、自分で抱えこんでしまう人が多いのも特徴です。

そのため、ストレスを感じやすく精神疾患になるケースも多くあります。早めに気づくポイントは「いつもと違う」を見つけることです。

たとえば、いつもは明るい性格なのに暗い表情をしているなど、何かしら前兆があります。

常時50人以上の従業員を雇っている企業では、ストレスチェックが労働安全衛生法で義務付けられていますが、その場の実施だけに終わっている企業も少なくありません。日頃から管理職と定期的に面談を行うなど、企業として定期的にチェックする体制を作ることが重要です。

管理職が潰れそうな時に企業が行うべき対処

潰れそうな状況を発見した時の対処法としては大きく2つの対処法があります。ひとつは「本人」に対する対処、もうひとつは「現場」に対する対処です。

本人はもちろん、現場の部下にも大きな影響を与えるため、現場への対処も行わなければ現場の従業員が潰れてしまう可能性もあります。

本人に対する対処

本人への具体的な対処法としては以下の3つが重要です。

  • 見る:いつもと様子が違うと感じた時は、よく観察する
  • 話す:いつもと違う言動や「疲れた」といった発言があった時は、声をかける
  • つなぐ:よく観察し本人と話し、おかしいと感じたら病院へ連れて行く

緊急性がある場合とそうでない場合の対処法は異なりますが「見る」「話す」までは共通です。

特に、話すことは重要で、実は人間関係の悩みが原因のことも少なくありません。
早めに問題解決するためにも話すことは重要です。

緊急性がある場合は医師につなぎ、緊急性がない場合については休暇を与えることやカウンセラーに繋げるようにしましょう。

現場に対する対処

現場への具体的な対処法は「素早く明確に指示すること」です。

精神疾患などで休職する場合は期間がわからないため、混乱が広がる前に素早く対処しなければなりません。

たとえば、3ヶ月間は誰に代理をさせ、それより長くなるようであれば組織変更を行うなどと決め、早めにアナウンスすると不安は少なくなります。

管理職が潰れない企業・組織になる為にできること

管理職が潰れる原因は「仕事量の増加による負担」と「精神的負担によるストレス」です。
これらの要素をなくせば管理職が潰れない組織になります。

最後に、企業として対処できることを解説しますので、改善の参考にしてください。

業務量や人材配置を見直す

仕事量の増加による負担は、人手不足が原因であることがほとんどです。物理的に人員が不足しているケースや、人材が育っていないため仕事を任せられないといったケースが多くみられます。

管理職になればマネジメントなどの業務が増えるため、管理職の業務量を減らす代わりに増員するなどの措置で量的負担は解消できます。

繁忙期だけ負担が大きいなどの場合は、人材派遣などで対応してもよいでしょう。あわせて、OJTなどを通じて早めに一人前に育てることも重要です。

管理職同士の横の繋がりを強化する

管理職は立場上、自分の悩みを部下に打ち明けられず孤独になりがちです。

そのため、ひとりで問題を抱え込むことが多く、潰れる原因になることも少なくありません。

解消法としては、管理職同士の横のつながりを強化することです。定期的な管理職同士のミーティングや飲み会などでもよいでしょう。誰かに話すきっかけや話せる場を提供することがポイントです。

セルフケアの体制を作る

管理職が潰れないためには、早めに気づき対処することが重要です。他人が気づく前に自分で「おかしい」と思えば、休暇をとるなどの対応ができますが、なかなか自分では気付きにくいことが多くあります。

そのためにも、セルフケアの体制作りが重要です。

具体的には次のようなことが挙げられます。

  • ストレスチェックの重要性を周知し、確実に実施する
  • 定期的なカウンセラーや産業医の面談を義務化する
  • いつでも休暇がとりやすい社内文化を作る

厚生労働省のサイト「こころの耳」で簡単にできるセルフケア研修がありますので、チェックしてみるのもひとつです。

まとめ

管理職が潰れる原因は組織にあることがほとんどです。「管理職としての責任が重い」「課長という立場上、助けを求められない」などほとんどの場合、組織が変わることで対処できます。

精神疾患は本人のメンタルによる部分もありますが、仕事が原因となれば企業としての責任を問われかねません。

そのためにも、管理職を潰さない体制づくりが必要です。まだ対策を行っていない企業は、本記事を参考に早めの体制づくりをおこないましょう。