少子高齢化によって労働力人口が減り、優れた人材を競合と奪いあう状況の近年では、マネジメントによって人材を有効に活用しようという動きが強くなりました。
ただマネジメントと一口に言っても、階層別、業務内容別などさまざまな種類が存在します。どのようなマネジメントに取り組む必要があるかは企業によって異なるでしょう。
そこで本記事では、マネジメントの種類を一覧にし、網羅的にご紹介します。マネジメントの種類を包括的に理解して、部下のマネジメントやマネジメント人材の育成に役立ててください。
Contents
マネジメントとは
ピーター・ドラッカーはマネジメントを「組織が成果を上げる機能、機関」と位置づけています。マネジメントの役割は大きく分けて、次の3つです。
- ミッションの達成
- 従業員を生かす
- 社会貢献
従業員を生かすとは、仕事によって自己実現できるチャンスや報酬、役職を付与し、個人の強みや特性を最大限引き出して成果が出るようにマネジメントすることを指します。
マネジメントの目的は、組織の経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報の4つを上手く活用し、「目標に向かって組織運営をする」ことです。
マネジメントについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
マネジメントには様々な種類がある
マネジメントには、階層別や業務領域、スタイル別によって区分され、種類や役割は多岐にわたります。次の章から、それぞれの種類を一覧で解説します。
階層別マネジメントの種類一覧
階層別マネジメントは、組織内の役割に応じて次の3つに分けられます。
階層 | 対象者 |
---|---|
トップマネジメント | 経営層 |
ミドルマネジメント | 管理者層 |
ローアーマネジメント | 監督者層 |
階層別に必要とされるマネジメントの方法は異なるため、対象者ごとに役割を正しく理解しましょう。
トップマネジメント
トップマネジメントは、会社の運営に関わる重大な意思決定・責任を負い、経営計画・戦略を立てて会社の目指す方向を決定しなくてはなりません。トップマネジメントは、いわゆる代表取締役、取締役、役員といった経営層に必要とされるスキルです。
ミドルマネジメント
ミドルマネジメントは経営層の意思を従業員たちに浸透させるなど、経営層の補助的な役割を担っています。さらに現場の従業員の要望や意見などを拾い集め、チームを動かさなくてはなりません。ミドルマネジメントは、本部長、部長、次長、課長といった管理者層に要求される能力です。
ローアーマネジメント
経営層、管理者層が提示した戦略を達成するために、実際の現場で従業員の指揮監督を行うのがローアーマネジメントの役割です。組織の向かう方向がズレないよう、明確に経営層の意思を現場の行動に反映しなくてはなりません。たとえば、係長、主任、リーダーなどが対象者です。
業務範囲別マネジメントの種類一覧
階層だけではなく、担当する業務によっても求められるマネジメントは違います。本章からは、業務の範囲別に分け、①組織運営、②人材管理、③メンタルヘルスの3種類に分類し、該当するマネジメント方法を確認していきましょう。
組織運営 | 人材管理 | メンタルヘルス |
---|---|---|
チームマネジメント | タレントマネジメント | メンタルヘルスマネジメント |
プロジェクトマネジメント | モチベーションマネジメント | ストレスマネジメント |
ナレッジマネジメント | パフォーマンスマネジメント | アンガーマネジメント |
組織運営におけるマネジメントの種類
組織運営のマネジメントは次の3つに大別できます。
- チームマネジメント
- プロジェクトマネジメント
- ナレッジマネジメント
業務の特性に応じたマネジメント方法について、概要を以下で説明します。
チームマネジメント
チーム内のメンバーと活発にコミュニケーションを取って、生産性を向上させて目標の達成させるマネジメントのことです。
プロジェクトマネジメント
プロジェクトマネジメントはその名の通り、プロジェクトの進捗や人材の管理をするマネジメントを言います。
ナレッジマネジメント
従業員一人ひとりの経験や知識、ノウハウなどの管理は、ナレッジマネジメントと呼ばれます。知的財産を共有して全体の競争力、企業価値を向上させる経営手法の1つです。
人材管理におけるマネジメントの種類
人材管理マネジメントの種類は以下の3つです。
- タレントマネジメント
- モチベーションマネジメント
- パフォーマンスマネジメント
能力やスキル、モチベーションのアップ、フィードバックの実施により各従業員が力を発揮し活躍できるようにするためのマネジメントを指します。
タレントマネジメント
従業員の能力、スキルに適した人材配置をすることをタレントマネジメントと言います。正しく配置するには、従業員の持つ能力とスキルをリアルタイムで把握することが重要です。
モチベーションマネジメント
モチベーションマネジメントとは、内的動機付けを行ってモチベーションをアップさせ、成果が発揮できるように活動を促すマネジメント方法のことです。内的動機付けとは、自分自身の興味・関心によって発生する達成感を言います。
パフォーマンスマネジメント
部下と上司が目標達成に向け何をすれば良いかを考え、行動の結果をフィードバックして従業員に発見を促し、パフォーマンスを上げるマネジメント方法です。
メンタルヘルスにおけるマネジメントの種類
メンタルヘルスとは心の健康を指します。メンタルヘルスに関するマネジメントにより、従業員のストレスを緩和し、職場の環境改善を図ります。たとえば、次のようなものが挙げられます。
- メンタルヘルスマネジメント
- ストレスマネジメント
- アンガーマネジメント
それぞれの概要を、以下で詳しく解説します。
メンタルヘルスマネジメント
従業員が職場で自身の能力を発揮し、活気のある環境作りをすることが目的です。心の健康はストレスによる影響を受けやすいため、後述するストレスマネジメントと同義に思われます。
しかし、メンタルヘルスマネジメントの対象は「心に負荷を与えるもの」であり、ストレスに限定されず、不安や焦りなどの精神的負担を含みます。
ストレスマネジメント
ストレスマネジメントは、適切にストレスと上手く向き合いコントロールできるようにすることです。ストレスは職場に限らず日常で発生するため、完全に排除はできません。
ストレスが蓄積すると、心身の不調を引き起こし疲れやすくなるといった症状が出はじめます。ストレスと正しく付き合うために考えコントロールすることを、ストレスマネジメントと呼びます。
アンガーマネジメント
アンガーとは怒りを意味し、アンガーマネジメントは怒り、劣等感、悲しみなどをコントロールすることです。アンガーマネジメントを身に付けることで、怒りに支配されずに済み、不適切な行動に出るリスクを減少させます。
スタイル別マネジメントの種類一覧
マネジメントスタイルを8つと、意思決定の手法を以下の表にまとめました。
スタイル | 意思決定の手法 |
---|---|
独裁型 | トップダウン |
協議型 | ボトムアップ |
民主型 | ボトムアップ |
放任型 | 両面 |
説得型 | トップダウン |
変革型 | 両面 |
協調型 | 両面 |
独裁型
独裁型の管理職にいる人は自身が意思決定をし、チーム全員がその決定に従うよう、方針を定めなくてはなりません。他のチームメンバーの意見は求めていないのが、独裁型マネジメントの特徴です。効率的に業務を遂行する必要がある状況や、スピーディーな意思決定を求められる際は独裁型マネジメントが効果を発揮します。
ただし、斬新で画期的なアイデアが生まれにくく、方法を間違えると離職率の増加を引き起こすリスクがあるので注意しましょう。
協議型
独裁型マネジメントと異なり、部下の意見や不安に耳を傾けるのが協議型マネジメントの特徴です。意見を言いやすい環境になっているものの、最終的な意思決定は管理職が行います。
意見を言えるため従業員の貢献意欲がアップし、問題の解決が早くなったり、離職率が下がったりするメリットがあります。その一方で、複数の人が意思決定に際し発言するため、独裁型よりも効率が悪い点がデメリットと言えるでしょう。
民主型
3つ目のスタイルは民主型で、参加型と呼ぶこともあります。独裁型・協議型よりも意思決定にあたって部下が深く関わっており、風通しが良いマネジメントです。またコミュニケーションも活発で、組織のビジョン達成に向け管理職と現場の従業員が協力できる関係にあります。
従業員は会社で大切に扱われていると感じるため、意欲的に会社に貢献します。しかし、議論をしてさまざまな意見を集めて意思決定するため、独裁型マネジメントより効率が悪くなります。
放任型
指導者に近いスタイルで行うマネジメントです。必要な場合に部下を援助し、通常は部下が自身で判断し業務を行います。部下に裁量を与えることでゆとりが生まれ、自発性が高い部下に適したマネジメントであり、クリエイティブな業界に効果的です。
ただし、部下が放置されていると感じることもあるので、サポートや指示が必要な場面か否かはよく見極めなければなりません。
説得型
説得型マネジメントは、意思決定は管理職が行い、決定が会社にとって適したものであると、部下に説得して理解を求めるのが特徴です。説得のときは、意思決定のプロセスを共有し、部下と信頼関係を築きます。独裁型マネジメントよりも部下からの反発が少なく好まれる傾向にあります。
特に部下の業務経験が浅い場面で効果を発揮するマネジメントです。なお、説得して理解を得ようとするものの、意思決定自体は管理職が一方的に行い部下はほぼ意見を出せないので、信頼を壊さないよう配慮が必要です。
変革型
イノベーションを起こす環境づくりをする際に、効果的なマネジメントスタイルです。部下が若干達成しにくい目標設定を行い、全力投球させて上司も協力しながら部下のスキルアップを図ります。部下の問題解決力や適応力が上がり、イノベーションが促されるといった特徴が魅力です。
しかし、部下が変革型マネジメントに適していない場合は効果が得られない可能性もあるため、対象にする部下は慎重に見極めましょう。
協調型
チームワークを重視し、部下と協力し合うので協調型のマネジメントスタイルを取る管理職は部下から尊敬されやすいです。特に非営利団体が協調型を採用しており、管理職は従業員の士気を高めるのに長けています。部下に意思決定を促し、生産性を高めさせるマネジメントのため、リーダーを育てやすいというメリットがあります。
ただし、部下と協力しようとするあまり、馴れ合いになってしまったり協力体制を築くために疲弊してしまったりするケースがあるので注意が必要です。
マネジメントに求められる能力の種類一覧
効果的なマネジメントを行うには、次に挙げる4つの能力が欠かせません。
- 意思決定力
- 分析力
- 管理能力
- コミュニケーション能力
以下で詳細をみていきましょう。
意思決定力
1つ目の能力は意思決定力です。意思決定はチームの方向を決め、適切に業務遂行できる環境整備に役立ちます。チームで何かを決定するときは、さまざまな意見が飛び交うでしょう。
管理職は、対立意見や新しい案も聞きいた上で、冷静に最適な判断を行わなければなりません。マネジメントでは、チームが最大限に成果を出せるよう、スムーズに意思決定する力が求められます。
分析力
2つ目は、自身やチームの課題や状況を観察し、原因の特定をする分析力です。分析力が優れていないと、部下に的確な指示を出せず周囲を混乱させてしまうでしょう。
管理職は目標達成に向け、チームがどのような課題を抱えており、どうやって解決すべきかを判断する必要があります。分析力を高めるためにはロジカル・シンキングを習得するのが有効です。客観的かつ理論的に物事を捉えて、解決に導く力を養いましょう。
管理能力
マネジメントは人やプロジェクトを管理し、成果を上げることを目的としており、管理能力は欠かせないスキルの1つです。
たとえば、プロジェクトを進めるときは仕事の進捗、時間数、予算を管理する力が管理職には求められます。業務が滞っているときは、分析力も活用してトラブルを解決し、プロジェクトが成功につながるよう導かなくてはなりません。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力は部下と良好な関係を築く上で非常に重要なスキルです。経営戦略や組織のビジョンを浸透させるためにも、日ごろからコミュニケーションを取ってください。
管理職には部下や同僚など相手の立場に立って考えたり、部下の可能性を引き出したりといった力が求められます。コミュニケーション能力を高めて、チームメンバーとの信頼関係を築きましょう。
ここまでは、マネジメントに必要なスキルを説明しました。さらに、マネジメント能力の種類やマネジメント能力を向上させる方法は以下の記事で詳しくご紹介しています。
マネジメントの種類に関するまとめ
「マネジメント=人材の指導や管理」と思うかもしれませんが、種類や役割はさまざまです。マネジメントが必要な相手や状況を見極めるためにも、マネジメントの概要を理解しましょう。
マネジメントに求められるスキルをご紹介しましたが、どれも特別な能力ではありません。どれも研修や実践である程度スキルを磨くことができます。マネジメントできる人材を育てたい場合は、どのスキルを磨くべきか従業員をよく観察しましょう。
また、一人ひとりの性格や環境などを把握し、必要なマネジメントを施せるよう、人事担当者は現場の状況を理解しつつ、他部署と円滑に連携を取ることが重要です。