マネジメントとは何か?意味や仕事内容、必要なスキルを簡単に解説

人材育成・マネジメント

「マネジメント」という言葉は誰しも一度は聞いたことがあると思います。しかし、マネジメントが何を意味しているか、リーダーやマネージャーとの違いを明確に理解している人は少ないのではないでしょうか。

会社組織の目標を達成するためには、マネジメントを正しく理解し、部下の育成や組織編成を適切に行うことが重要です。

今回はマネジメントの概要を知りたい人向けに、マネジメントの意味や定義、目的、役割といった基本項目をご紹介します。また、マネジメントに必要なスキル、階層別マネジメントの種類についてもまとめているので、ぜひ最後まで読んで実務に役立ててください。

Contents

マネジメントとは?

漠然とマネジメントという言葉を知っていても、意味や定義を正しく説明するのは難しいかもしれません。

まずは、人事の現場でよく使われているマネジメントの意味や定義、マネージャーやリーダーシップの違いなどを確認していきましょう。

マネジメントの意味や定義

マネジメントとは、ビジネスの現場では「経営管理」「組織運営」を意味します。マネジメントの概念は、アメリカの経営学者であるドラッカーの著書「マネジメント」から生まれました。

マネジメントの定義は、会社が組織の成果を上げるために、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を効率良く活用し、「目標」や「ミッション」の達成を目指す機関や機能のことです。

ドラッカーによる「マネジメント」と「マネージャー」の定義

ドラッカーは著書「マネジメント」の中で、マネジメントとマネージャーを以下のように定義しています。

  • マネジメント:組織の成果を上げる機関、機能、道具
  • マネージャー:組織が成果を上げるよう働きかけて、成果に責任を持つ人

マネージャーの主な役割は、次の3つです。

  • 目標達成に向けて業務を遂行
  • 部下とコミュニケーションを取り、目標達成に向けた動機づけを行う
  • 成果を評価・測定しながら部下の指導や人材育成を実施

マネージャーとよく似た言葉に「リーダー」がありますが、マネージャーとリーダーの違いは後述します。

マネジメントとリーダーシップの違い

リーダーシップは、「目標達成に向けた方向性を周囲に示すこと」であるのに対し、マネジメントは「設定した目標を成し遂げるための手段や方法を考え、管理すること」です。例えば、マネジメントとリーダーシップには、以下のような違いがあります。

  • マネジメント:目標やプロセスを管理し、成果を上げること
  • リーダーシップ:目標に沿った行動を示して模範となり、行動すること

さらにリーダーシップは「役職などのポジションを問わず発揮されるもの」ですが、マネジメントは「役職のある人が経営管理、組織運営する手法」という点でも大きく異なります。

マネージャーとリーダーの違い

リーダーはリーダーシップを発揮して集団の先頭に立ち、指揮しながら目標達成のために行動していく人を言います。一方でマネージャーは、リーダーが示した方向性に沿って、組織が目標に正しく進めるよう管理する役割を持ちます。

リーダーの役割は以下の通りです。

  • 従業員が自律するよう働きかけ、生産性向上を促進する
  • 従業員に権限を与えて、事業を推進する
  • 組織内の人員配置や意思決定などの基準を定める

つまりリーダーは経営方針や目標を示す人を表し、マネージャーはリーダーが決めた従業員を統率し、組織を円滑に管理・運営する人を指します。

マネジメントの目的と役割

マネジメントの定義に続き、次はなぜマネジメントが組織に必要なのか、目的と役割を説明します。

マネジメントの目的

マネジメントの目的は、目標設定に沿って組織運営を行うことです。組織資源であるヒト・モノ・カネ・情報を運用して、組織の発展を促すことを指します。

マネジメントの役割

マネジメントの役割は、次の3つです。

  • 組織が果たすべきミッションの達成
  • 組織の人材を活かす
  • 社会貢献

以下で詳しく解説します。

組織のミッション達成

1つ目の役割は、ミッションの達成です。会社は社会貢献のために組織ごとの目的やミッションを理解して、達成することが求められています。

つまり組織は適切なマネジメントを通して、目標達成により成果を上げ、組織を発展させなければならないのです。

組織の人材を活かすこと

仕事を通して働く人たちを活かすことも、マネジメントの役割の1つです。会社は仕事を通して、従業員に自己実現のチャンスや生活の糧となる対価を与えます。従業員はマネジメントにより、パフォーマンスを最大限に発揮し、成果を上げるのです。

仕事の環境を整備して従業員の個性に適した仕事を任せ、フィードバックや学習の場を提供し、人材を活かすことがマネジメントの重要な役割です。

社会貢献

3つ目の役割は、社会貢献です。会社は株主や経営者のものではなく「社会」のために存在し、社会のニーズに応える義務を追っています。なぜなら会社は社会から人や物、お金などの資源を預かって運営しており、社会のニーズに応えて価値提供をする必要があるからです。

そのため会社の掲げる目標は、最終的に社会貢献に寄与するものでなければならず、会社はマネジメントによって目標を達成し、社会貢献を実現しなければなりません。

「マネジメント」における具体的な業務内容

マネジメントの意味や役割といった概要を理解したら、次はマネジメントの具体例として、5つの業務内容を解説します。

1.目標の設定

1つ目の業務は目標設定です。従業員の持つ能力を引き出すには一人ひとりに適した仕事を任せて、会社のミッションを理解してもらい、正しい方向に進むよう指導することがポイントです。

そのため、上司は部下に仕事を任せる前に、どの方向に部下の能力を育てるかきちんと見極めて、目標を設定しなければなりません。

従業員の強みを活かして仕事で活躍できるかは、上司や管理職の人材配置や育成によるものが大きいと理解しておくのが大切です。

2.部下の動機付け

部下への動機付けも、重要なマネジメント業務の1つです。会社の生産性向上には、従業員のモチベーション維持・向上が欠かせません。

部下のやる気を起こさせ、能力を十分に発揮できる仕事を任せることで、従業員は意欲的に仕事をこなしていけます。上司は部下が意欲的に働ける環境づくりと動機付けを適切に行い、本来の実力が発揮できるようにマネジメントしましょう。

3.組織化・業務の標準化

3つ目の業務は組織化・業務の標準化です。組織化とは具体的に、次のようなことを指します。

  • 目標達成に必要な意思決定と活動を行う
  • 「仕事」を活動と作業に分類する
  • 業務別に組織を形成する
  • マネージャー、業務を行う人などの人材配置

次に、業務の標準化を確認していきましょう。

  • 業務の洗い出し
  • 業務フローの分析・整理
  • 業務フローのマニュアル化

組織化・業務の標準化を行うことで、個性や強みを発揮できる組織が築け、生産性向上や品質を安定させる効果が期待できます。

4.評価・フィードバック

適切に評価し、成果やプロセスへのフィードバックを行うことも、重要なマネジメント業務です。一定の間隔ごとに仕事の取り組み方や業績などを評価して、直接本人と面談しフィードバックをしましょう。

納得感のある評価と適切なフィードバックは部下の動機付けやモチベーションを向上させます。さらに、フィードバックを通して会社の目指す方向やビジョンを伝え、従業員は自分の役割を理解しやすくなります。

5.人材育成

最後に紹介するマネジメント業務は、人材育成です。マネージャーは部下の業務内容を把握し、相談に乗ったりアドバイスをしたりして、部下が自主的に成長できるようサポートをしましょう。

マネジメント次第で、部下が強みを出して特製を活かして働けるかが決まります。正しいマネジメントを行って人材育成することが、組織の目標達成につながります。

マネジメントに求められる主な4つのスキル

マネジメントに必要なスキルは、大きく分けて以下の4つです。

  • 意思決定のスキル
  • コミュニケーションのスキル
  • 管理スキル
  • 分析スキル

マネジメントは組織の成果を上げる手段であり、目的ではありません。目標を達成するためには一定のスキルが必要です。まずは、次の4つのスキルを理解し、身に付けていきましょう。

1.意思決定スキル

1つ目は判断する力です。マネージャーという立場になれば、業務上で判断をする場面に多く遭遇するでしょう。このときに判断の軸が定まっていなければ、部下に不信感を抱かれてしまい、チームの結束力にマイナスの影響を与えます。

そこでマネージャーは、優れた判断をするために対立意見や複数の案を吟味して、組織の目標に沿った意思決定スキルを身に付けなければなりません。また、適切な案が出なければ判断を見送ることも、重要な意思決定の1つです。

組織の目標を達成するために、マネージャーは正しい意思決定スキルを養いましょう。

2.コミュニケーションスキル

コミュニケーションスキルも、マネジメントには必要不可欠です。会社は多くの人が集まり、共同で業務を遂行しています。組織の目標に一丸となって進んでいくためには、チームも共通認識を持って同じ方向を目指さなくてはなりません。そこで必要になるのがコミュニケーションスキルです。

コミュニケーションは双方で行うものなので、マネージャーは相手の言葉に耳を傾け、相手の意見を尊重しながら情報伝達する力を鍛えましょう。

3.管理スキル

マネジメントに必要なスキルの1つが管理スキルです。例えば次にあげるものが、管理スキルにあたります。

  • 組織を適切に機能させ、目標の達成を目指す
  • 生産性を高めるために、適切な指導や育成、仕事の割り振りなどを行う
  • 業務の基準を高め、仕事の精度を上げる

適切な管理を実現するには、マネジメントの効果測定や部下へのフィードバックを通して、部下が強みを仕事に活かせるよう環境整備をすることが重要です。

4.分析スキル

4つ目は分析スキルです。会社の目標達成を目指して成果を上げていくためには、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)や知識、スキル、リスクを管理・分析する力が必須です。

マネージャーは①仮定を検証、②問題提起、③代替案を示す、④問題を理解するなどして、物事を分析し、組織の生産性を上げていかなければなりません。

ここまで、マネジメントに必要な4つの能力を説明しました。では、マネジメント能力を高めるには、具体的にどのような方法があるのでしょうか?

詳しくはこちらの記事を参考にしてみてください。

マネジメント能力とは?構成するスキルと能力を向上させる4つの方法

階層別マネジメントの種類

マネジメントの種類は、以下の3つの階層に分けられます。

  • トップマネジメント(最高経営者層)
  • ミドルマネジメント(中間管理者層)
  • ローアーマネジメント(監督者層)

本章では、階層別で求められるマネジメントの中身を詳しく解説します。

トップマネジメント(最高経営者層)

トップマネジメントとは社長、副社長、常務、専務、執行役員などを指します。トップマネジメントには、以下のような役割があります。

  • 組織の方針を決め、経営計画を練る
  • 経営の意思決定、最終的な責任を負う

トップマネジメントは、経営理念や事業方針など組織全体に関わる重要事項を決定します。そのため単独ではなく3〜4人のチームでトップマネジメントを行うのが一般的です。

ミドルマネジメント(中間管理者層)

ミドルマネジメントとは、トップマネジメントとローアーマネジメントの中間の立場で、支店長や本部長、部長、係長やマネージャーなどが該当します。

ミドルマネジメントの役割は、次の通りです。

  • トップマネジメントのサポート
  • 判断、指示命令、組織の運営方針を従業員へ伝える
  • ローアーマネジメント層の指揮監督
  • ボトムの意見を上に伝える

ミドルマネジメントはトップと現場をつなぐ役割を持っていて、特に大きな組織では重要な立ち位置です。

ローアーマネジメント(監督者層)

ローアーマネジメントは、主任、リーダーなど監督者層を指し、下級管理者層とも言います。ローアーマネジメントの役割を見ていきましょう。

  • 現場の業務を統制
  • 組織戦略を末端の現場に浸透させる
  • 経営層が考えるビジョンが実現できるよう指揮する

ローアーママネジメントが現場で経営層の意志を反映させるからこそ、ビジョンがずれないように組織が発展していけます。

会社が組織運営を適切に行うためには、経営者や人事担当者が階層別マネジメントの役割を把握して、それぞれが使命を果たせるように促すことが重要です。

業務別マネジメントの種類

階層別マネジメントを理解したら、本章では業務別マネジメントを確認していきましょう。

業務別マネジメントは主に、①組織運営に関するもの、②人材管理に関するもの、③メンタルヘルスに関するものの3つがあります。

1.組織運営に関するマネジメント

組織運営に関する代表的なマネジメント手法を、3つ解説します。

チームマネジメント

組織を統率するための計画を立てて、コミュニケーションをはかるマネジメントで、中堅やリーダーに求められるマネジメントの1つです。

プロジェクトマネジメント

プロジェクトを成功に導くためのマネジメントを意味します。例えば、目標や運営計画を立て、プロジェクトの人員配置、スケジュール管理などを行うことです。

ナレッジマネジメント

ナレッジとは知識や経験、技術などを指す英単語です。ナレッジマネジメントとは、従業員の持つ知識、経験、技術を社内で共有し、チーム全体の能力向上とパフォーマンスを最大に引き出す取り組みを指します。

この3つは、組織を上手く機能させるために欠かせないマネジメントです。

2.人材管理に関するマネジメント

次に人材管理のマネジメントを3つ、ご紹介します。

モチベーションマネジメント

従業員の「動機付け」を行って生産性を向上させ、成果を出すための行動を促すマネジメントを言います。

タレントマネジメント

タレントとは従業員を意味し、タレントマネジメントは個々の従業員が持っている知識やスキルを最大限発揮できるよう、人材配置や育成などを戦略的に行うことです。

パフォーマンスマネジメント

パフォーマンスを高めるために、人事担当者や上司などが従業員と目標を考えて、スキルやモチベーションを向上させつつ、目標達成させるマネジメント手法を指します。

会社の目標を達成するためには従業員がモチベーションを維持し、自律的に仕事に取り組むことが重要です。上記のマネジメントを適切に行い、従業員の力を最大限引き出す仕組みを作りましょう。

3.メンタルヘルスに関するマネジメント

最後に、メンタルヘルスのマネジメントを3つ説明します。

メンタルヘルスマネジメント

メンタルヘルスとは心の健康管理のことです。心の不調で休職や離職をする人は近年増加しており、従業員が心身ともに健康で働けるよう環境を整備することは、経営者の大きな課題と言えます。メンタルヘルスマネジメントを行って、従業員が心の疾患を発症することなく活躍できるように取り組みましょう。

アンガーマネジメント

アンガーは「怒り」を意味します。アンガーマネジメントは、社内で適切なコミュニケーションを取るために、自身の怒りをコントロールすることです。例えば、怒りを客観視して原因を理解し、感情任せにしないよう振る舞うよう訓練します。

ストレスマネジメント

ストレスをコントロールして生産性向上を目指す、マネジメント手法のことです。代表的なものに「ストレスチェック」があります。

個人がパフォーマンスを発揮できるよう、組織の体制を整えてサポートすることが、生産性向上につながります。

マネジメントに今後求められるものとは

これからマネジメントに求められることは、

  • 従業員一人ひとりのキャリアに適した指導と育成
  • グローバル化や多様化する働き方への対応

の2つです。それぞれ解説してきましょう。

従業員一人ひとりのキャリアに適した指導と育成

部下を指導・育成することはマネジメントの大切な役割の1つです。従来のトップダウン手法で行うだけではなく、従業員ごとのキャリアも踏まえて指導・育成をしていくことが今後のマネジメントには求められます。

また指導・育成の際は部下自身が自律的に思考できるよう、会社やマネージャーがサポートしていくことも重要です。

グローバル化や多様化する働き方への対応

人口減少や高齢化に伴い、日本の労働力が減少し、テクノロジーの発展や働き方改革の影響などで働き方も多様化しました。

これからは従来のマネジメントではなく、多様化する働き方に適したマネジメント手法に切り替える必要があります。今後はマネジメントを多角的にして、さまざまな働き方に適合する手法を模索していきましょう。

マネジメントに関するまとめ

適切なマネジメントは会社や従業員を正しい方向に導き、人材育成に役立ちます。効率良くマネジメントを行うには、経営者や人事担当者がマネジメントの基本を理解しておくことが重要です。

今回の記事ではマネジメントの意味や定義、目的といった概要をはじめ、階層別・業務別に分けて「マネジメントとは何か」を分かりやすくご紹介しました。

この記事をきっかけにマネジメントの理解を深めて、自社のマネージャーのスキルを測定したり、業務遂行を見直したりと、マネジメントについて社内で検討してみてはいかがでしょうか。