管理職は、組織の一体感を高め、人材を育てる上で重要な役割を担います。管理職として必要なスキルを習得するには、階層に合わせた管理職研修が有効です。とはいえ、自社に適切な研修内容がわからないと悩む方もいるでしょう。
この記事では、管理職研修の目的や種類について整理すると共に、管理職研修を実施するうえでのポイントについてわかりやすく解説します。
Contents
なぜ管理職研修が必要なのか
管理職は、自身の役割を果たすだけでなく、組織をマネジメントし部下を育成することが求められます。つまり、優秀なプレイヤーが即優秀な管理職になれるとは限りません。管理職研修は、以下に紹介する「管理職の壁」を乗り越えることを目的に行われます。
チームの課題設定スキルが足りない
管理職は、チームをまとめ共通の目標に導く役割です。会社の経営目標を理解し、担当するチーム目標に落とし込む力量が求められますが、このとき課題を正しく把握し言語化する能力が欠けていると、チームに一体感が生まれにくくなってしまいます。
関係者との連携能力が足りない
現場レベルでは解決できない課題に取り組むのも管理職の役割です。部署間や外部パートナーと連携が必要な場合や、トラブルが発生したときなど、管理職の対応がその後の結果を左右します。自分の担当部署だけではなく、外部にも意識を向け、互いの利害を理解しながらの関係構築能力が求められます。
部下の育成スキルが足りない
優秀なプレイヤーだった社員が管理職になった際、ぶつかるのが「部下の育成」という壁です。能力や経験は、部下よりも管理職である本人のほうが上。そのため、あらゆるシーンで部下の「できなさ加減」が目についてしまい、結果として「自分がやったほうが早い」と仕事を取り上げてしまいます。部下を信用できなければ、部下の能力は育ちません。
プレイヤーとマネージャーの業務バランスが取れない
会社によっては、プレイヤーとしての役割を持ちつつ、マネジメントも任される管理職もいるでしょう。そうした場合、現場の仕事とマネージャーとしての業務のバランスがとれず、結果としてマネジメントがおろそかになってしまうケースがあります。管理職としても機能するため、求められる役割への対応力を磨く必要があります。
管理職に求められる役割とは
管理職研修の内容を決める前に、前提として管理職に求められる役割を把握する必要があります。まずは管理職の役割をおさらいしていきましょう。
業務の管理・改善
管理職は、担当する部署やチームとして成果を出すという責任が伴います。個人の成果を最大限発揮させるには、人材の配置・予算配分、業務プロセスの見直し等が求められます。担当する組織の状態を把握し、改善を推進するのが管理職の役割です。
部下の育成・評価
部下の育成は、昨今の管理職に求められる重要なスキルです。部下のキャリアプランに合わせた業務配分や、課題への適切なフォローが実行できる優秀な管理職のチームでは、部下が育ち、結果として生産性向上につながります。
経営理念・方針の浸透
管理職は、組織のなかでは経営陣と現場をつなぐ役割を果たします。経営陣の考える戦略を理解し、現場の目標・行動に落とし込むことが重要です。現場での日々のコミュニケーションを通じて、経営陣の描くビジョンを浸透させる役割を担います。
階層別:管理職研修の目的
管理職の階層は、大きくわけて新任管理職と上級管理職の二つに分けられます。以下に、それぞれの階層で重視される管理職研修の目的を解説します。
新任管理職研修の目的
管理職になったばかりの新任管理職は、視点を個人から組織に移すことが重要です。管理職研修では、プレイヤーとマネージャーの役割の違いを認識することや、新任管理職に求められる部下の育成スキルの習得、目指すべきリーダー像の理解などを行います。マネジメントの基本を学び、管理職としてのマインドセットが研修の主な目的となります。
上級管理職研修の目的
上級管理職研修では、新任管理職よりもさらに大きな規模の組織を任されるため、それに適したマネジメント手法や、リスクマネジメント、そして戦略立案が研修のテーマとなります。研修は、経営視点での組織マネジメントや、事業考案、業績に対する経営数字の捉え方などを学びます。管理職の経営的視点を育て、戦略的発想からのマネジメントスキルを磨くのが上級管理職研修の目的です。
管理職研修の主な内容とプログラム
管理職研修として行われる代表的なプログラムをご紹介します。
新任者向け基礎研修
新たに管理職となった人向けに、管理職やリーダーに求められる役割について学びます。また、部下の自主性や能力を伸ばすためのコーチングの手法や、管理職としての課題解決・役割遂行に必要なスキルを身に着けます。
上級管理職研修
リスクマネジメントや業績の拡大、組織デザインなど、上級管理職に求められる役割に合わせて、経営数字の捉え方やマネジメント手法を学びます。
チームマネジメント研修
ファシリテーション、チームビルディングといったチームで活き活きと仕事をするための手法のほか、ダイバーシティやハラスメント、メンタルヘルスなど組織として向き合うべきテーマについて学びます。
リスクマネジメント研修
リスクマネジメント研修では、情報漏洩など企業のリスクとなる事態を防ぐため、部下のセキュリティ意識を高めるための手法を学ぶ研修のほか、実際にインシデントが発生した際の対応力を学ぶ研修があります。
フィードバック研修
フィードバック研修では、部下とのかかわりのなかで、部下の能力や自主性を伸ばすための適切なかかわり方を学びます。効果的なフィードバックを行うスキルを磨き、部下の育成力を向上させます。
キャリア開発支援研修
部下のキャリア開発を支援するため、管理職の役割を学び、キャリア開発を促すコミュニケーションスキルなどを磨く研修です。部下のキャリアビジョンに適した積極的な支援の方法を身に着けます。
管理職研修を実施する手順
社内で管理職研修を実施するには、自社に求められるプログラムを選ぶにあたって、理想とする管理職像の設定・課題の抽出から始めることが重要です。以下に、管理職研修を実施する基本の流れをご紹介します。
理想像の設定と課題の抽出
自社の管理職に求める「理想像」を設定します。管理職として、どのようなスキルを身に着けておくべきか。振舞い方や考え方など、設定した理想像が管理職研修で「目指すべき姿」となります。
あわせて、組織として考える管理職の課題を洗い出します。管理職の現状把握のため、これまでの経歴やスキル、成果、強みや弱みなどを分析します。理想像と現状のギャップが、管理職研修で埋めるべき課題となります。
研修カリキュラムの作成と外部ツールの検討
洗い出した課題に対して、優先順位をつけ、学習目標や行動目標などのゴールを設定します。それに合わせ、研修カリキュラムを作成しましょう。研修カリキュラムの検討の際は、内容だけでなく、実施のタイミングや手法もあわせて検討します。
集合研修や合宿などのスタイルは、拘束時間が長くなるため、開始時期を慎重に選びましょう。また、研修をなぜ行うのか、目的を事前に参加者と共有することが、実りある研修につながります。
研修の実施と効果測定
研修の実施後は、効果測定を行いましょう。事前に設定した目標が達成できたのか、研修後の効果測定で確認することができます。効果測定の方法は、研修直後のアンケートのほか、研修前後の習熟度チェックテスト、上司や同僚・部下による職場での行動観察(評価)などがあります。
管理職研修のおすすめサービスと料金相場
管理職研修の料金は参加人数や日数によって費用が異なりますが、講師を派遣して行う場合は40万円〜60万円が相場といわれます。一方、専門企業が開催する公開型セミナーに、自社の管理職が参加する場合は、1万円前後〜5万円ほどが目安となり、開催期間が長くなるにつれて料金も上がります。以下に、おすすめの管理職研修サービスをご紹介します。
Schooオンライン管理職研修
Schooが提供する管理職研修は、オンラインの研修です。参加者は、好きな時間に好きな場所から、興味のある講座を受講することができます。管理職基礎スキルを身に着けるものから、マネジメントスキルや部下の育成について学ぶものなど、管理職のレベルに合わせて多様な講座が揃っています。講座は1時間から1時間半のものが多く、参加者の受講状況なども確認できます。
20人以上からの契約となっており、管理職全体のスキルを高めたいという企業に適しています。
インソース
インソースは、上級管理職や階層別研修など、さまざまなテーマに合わせた研修を用意しています。ヒアリングをもとに、自社に最適な研修プログラムの立案から依頼することもできます。講師派遣型の研修のほか、公開型研修やオンライン研修も実施しており、自社の課題にあわせて柔軟に選ぶことができます。
管理職研修を行いたいけれど、プログラムに迷っている、ノウハウを持つ外部パートナーに相談したいといった企業に適しています。
リクルートマネジメントスクール
リクルートマネジメントスクールは、社員1名から参加できる公開型研修を提供しています。最短で3時間、長くて3日の研修プログラムがあり、オンライン研修も行っています。階層別の研修やテーマに合わせた研修内容が充実しており、さまざまな企業から参加者が集うため、ほかの管理職の姿に刺激を受けることができます。
新任から上級まで、階層にあわせた管理職のスキルアップを目指す企業におすすめのサービスです。
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効果的な管理職研修にする為のポイント
せっかく管理職研修を実施したのに、なんだか効果がない気がする。管理職研修に参加する社員のやる気が感じられない。そのような事態を防ぐには、以下の点を踏まえて管理職研修を実施しましょう。
研修の目的を伝える
管理職研修に参加する社員と、研修の目的を共有しましょう。日々の業務に追われる人は、「研修」と聞いただけでは、強制的に参加させられるという意識になってしまいます。受け身の姿勢では、研修から得られる内容も少ないでしょう。
なぜその研修が必要なのか。研修参加が本人にどのようなメリットをもたらすのか。時間を作って説明します。研修を通じて、得てほしいスキルなど会社からの期待感を言葉にするのも、本人のモチベーションをアップさせるのに効果的です。研修の目的を共有するタイミングは、評価面談のあとや、会社として新たな経営指針を立てたタイミングなど、節目に合わせることで、変化に対応するための施策の一つとして、スムーズに受け入れてもらえるでしょう。
自社の現状に合った研修にする
研修プログラムは、自社の課題に合わせたものを選びましょう。いくら時代のトレンドに合ったテーマでも、組織の現状や経営方針とかみ合わないテーマは意味がありません。たとえば、既存事業での新人育成が課題となっているのに、新規事業立案のための戦略的思考を管理職が強化しても、課題が置き去りになるだけです。
自社の現状把握のため、管理職にアンケートを取るのも一つの方法です。
受講者からフィードバックをもらう
研修実施後は、参加した受講者のフィードバックを参考に、改善に活かしましょう。会社として把握していた「課題」が、現場の感じるものとズレている可能性もあります。そうした点がアンケートで発覚した場合は、管理職が必要としているスキルや直面している課題について、改めて分析した上で、研修プログラムの選定に活かします。
単発で研修を終わらせるのではなく、定期的な実施と効果測定を続けることで、より成果の期待できる研修プログラムを実施できるでしょう。
管理職研修の実施に適した時期
管理職研修を実施する時期は、企業によって異なりますが、4月や10月など、異動・組織変革が多いタイミングに合わせることで、管理職としての意識の醸成やスキルの習得を後押しする効果が期待できます。逆に、組織として大きく動くタイミングや、繁忙期を避け、ある程度落ち着いた時期に課題を整理して管理職研修を実施する企業もあります。
管理職研修に関するまとめ
管理職研修は、それぞれの階層に見合った管理職としての意識醸成・スキルの習得を後押しするものです。研修を通じて、参加者は自身の不足している部分に気づき、知識をアップデートすることができます。昨今では、ハラスメントの対応やコンプライアンスについて法令・人々の価値観ともに変化が激しく、管理職はこうした変化に対応することが求められます。自社の組織フェーズや経営課題を見極め、適切な管理職研修を実施することで、組織の成長につながるでしょう。