管理職の転職は難しいと言われる4つの理由と成功ポイントを解説

人材育成・マネジメント

管理職の転職は、普通の転職と比べ難易度が高いといわれています。社内登用が基本的なことから、市場に公開される求人数が少ないことや、管理職のポジションに求められるスキルが高いことが主な理由です。ただし、実績のアピールの仕方や、転職活動のやり方を工夫することで、希望通りの求人に出会える可能性が高くなります。

本記事では、管理職の転職事情や難しいと言われる理由、転職のメリット・デメリット、納得の行く転職にする為のポイントなどについて紹介します。

管理職ポジションの人が転職を検討する主な理由

終身雇用が一般的であった昔とは異なり、昨今では管理職ポジションに就いていながら転職を検討する人が増えています。

2022年の労働力調査 によれば、転職する人の割合が多いのは当然25歳~34歳ですが、30代後半から60代前半の年齢層でも、比率はやや下がるものの転職者の数が増えています。35歳〜64歳の転職者の数は、2012年時点では10.5万人でしたが、2022年では11.3万人となっています。管理職というポジションのデータではありませんが、近しい年齢の人達の転職は明らかに増加しています。

では、管理職で転職を検討する理由にはどのようなものがあるでしょうか。主な例を紹介します。

待遇面での不満

まず挙げられるのが、待遇面での不満です。管理職は部下の育成や部署の成績など、メンバー時代とは異なる部分で責任を負います。プレッシャーが重い仕事であるにも関わらず、期待していたほどの報酬がもらえていないと待遇面での不満が増大してしまいます。

また昨今では、給与面や勤怠管理の部分はいち従業員とさして変わらないにも関わらず、残業代が支給されない「名ばかり管理職」の実態も問題となっています。管理職として働きながら、「割に合わないな」と言う気持ちが解消されないと、転職へ気持ちが大きく傾いてしまいます。

会社の将来への不安

管理職になると、会社の経営について知ることも増えてきます。業績が上向きのときはいいですが、厳しい業績が続く場合、会社の将来性について不安を覚え、転職の検討につながります。また、自社だけではなく業界の行く先に不安を感じて、転職を検討するケースもあります。

ヘッドハンティング

管理職は、スキルや経歴を買われヘッドハンティングを受けるケースが多くなります。近年では、SNSの発達により、個人の肩書や経歴でつながることもできるようになりました。

また、「いますぐの転職」ではなく、「とりあえず話を聞く」というような形で、他社とのつながりを持ち、数カ月~数年後に転職を検討するといったケースもあります。優秀な人材の流動性が高い時代では、他社からの声もかかりやすくなっています。

管理職の転職が難しいと言われる4つの理由

管理職の転職は、一般の転職と比較して難しい部分があります。以下にその理由を紹介します。

1.そもそも求人数が少ないから

まず、そもそも公開されている求人数が多くありません。管理職は社内で限られたポジションです。空きがあった場合でも、社内の人材を昇進させるケースが一般的であるため、外部に求人として公開されないケースが多くあります。転職サイトで求人を探そうとしている場合には、最初の段階で難しさを感じるでしょう。

2.選考ハードルが高いから

企業は、管理職に対して高い報酬を支払う代わりに、それに見合ったスキルを求めます。外部から管理職を採用する場合には、業務に精通した知見に合わせ、企業にとって「その人を採用する」という明確な理由が必要です。採用する側も慎重になるため、選考のハードルが上がります。

3.実績のアピールが難しいから

管理職は、さまざまな部分に責任を負うポジションです。部下の育成や業務の進捗管理など、成果の可視化が難しい部分もあります。また、管理職としての経験が長くても、棚卸がうまくできていないと、実績アピールにつながらない可能性もあります。

4.年齢の問題

年齢が上がるにつれ、求められる能力も高くなります。 一般財団法人労務行政研究所が過去に行った調査 では、管理職の昇進年齢は係長で30歳前後、課長で30代前半から30代後半、部長で40代前半から後半といわれます。

そうした年齢を考えると、転職市場では、一定の年齢を超えると管理職での転職は難しくなると考えられます。自分の年齢と現在の役職を考え、転職市場での需要を考えることが重要です。

事前に理解しておくべき管理職の転職市場

社内登用が多いことや、年齢と比例して求められる能力が高くなる管理職の転職。近年では、年齢が上がっても管理職としての転職に成功するケースもあります。最新の管理職の転職市場について解説します。

40代・50代でも転職は可能

昨今では、転職市場が流動化したことから、ある程度の年齢でも管理職として転職することが可能です。40代・50代でも、スキルや経験を満たしていれば、即戦力として歓迎されます。

とはいえ、年齢が上がるほど求められる要素が増え、該当する求人が少なくなります。転職の厳しさを踏まえた上で、自分に合った求人を探す努力が必要になります。

同業界での転職の方が有利

同業界での転職は、異なる業界に進むよりも経験を活かせるため有利といえます。業界の構造を理解していることや、業務を通じて得た知識がアピールポイントとなるからです。

また、転職先の企業規模も重要なポイントとなります。マネジメントする人数が異なれば、求められるスキルが変わります。求人内容を熟読し、どのような要素が求められるかを検討しましょう。

管理職が転職する際に知っておくべきメリット・デメリット

管理職が転職する際、年収アップが見込める反面、経歴を活かしきれないなどのミスマッチが起こる可能性があります。転職を進めるにあたって、メリット・デメリットを理解しておきましょう。

管理職が転職するメリット

管理職のポジションで転職する場合、年収アップが見込めるほか、さらなるキャリア形成にプラスに働くことが期待できます。また、長年一つの企業に勤めてきた人にとっては、環境を変えることで新たなモチベーションを見つけることができます。

年収アップや高待遇の可能性

転職で得られるメリットの大きなものが年収アップです。また、労働環境に不満がある場合、自分にとって望ましい条件を探して転職をする人もいます。たとえば、介護といった家族の事情で、より働きやすい職場を求めるケースは少なくありません。中高年になり、地元へのUターンを検討するケースもあります。

キャリアアップが見込める

転職で新たな分野に挑戦することで、よりキャリアが広がります。たとえば、大手製造業で管理職を務めていた人が、同分野の外資系の日本法人に管理職として転職した場合、前職での知見を活かしつつ、新しい事業の推進に携わることが可能です。

環境変化による刺激

企業によっては、一定年齢で役職定年を設けているところもあります。そうした職場では、管理職として勤めていても、ある年齢を境に一線から退かなくてはなりません。また、大幅な年収ダウンになる可能性も考えられます。

転職することで、新たな職場で、これまでにないやりがいを見つけることができます。管理職として長く働き続けたいという要望を持っている人は、転職でのメリットを享受できるでしょう。

管理職が転職するデメリット

一方、新たな分野にチャレンジする際の負荷や、ミスマッチの可能性について慎重になる必要があります。

プレッシャーがかかる

管理職として新たな職場に移る際、大きなプレッシャーを感じるかもしれません。たださえ、転職は心理的な負荷が高くなります。その状態で管理職ともなれば、周囲の人も「できる人材のはず」という目で見てくるため、早く結果を出さなくてはと焦りを覚えることも。

また新しい分野に挑戦する場合、若いころと比較し、体力的に厳しいといった声も聞かれます。転職の際はプレッシャーがかかることを踏まえた上で、自身のコンディションを整えましょう。

様々なミスマッチの可能性

労働条件や事業に魅力を感じていても、思わぬところでミスマッチを感じるかもしれません。管理職ともなれば、経営層に近いポジションで働きます。

そのため、経営陣と事業に対して同じ考えを持てるかどうか、共感度合いが重要となります。また、社風が自分と合っているかどうかも重要なポイントです。採用過程で時間をかけ、じっくりと話を聞くようにしましょう。

管理職の転職を成功させる為のポイント

管理職の転職を成功させるためには、以下のポイントに注意しましょう。

企業フェーズによって求められる経験の違いを把握する

大企業や中小企業、ベンチャーなど、企業フェーズによって管理職に求められる経験が異なります。たとえば、大手企業であれば若手の人材育成スキルや、社内・社外の人脈が重視されるかもしれません。

一方、拡大期にある組織では、プレイイングマネージャーとしての働きが求められたりもします。転職先の組織が、何を管理職に求めているのか、注意深く知ることが、採用のミスマッチを軽減させるでしょう。

定量的にアピールする

自身の実績について、定量的にアピールできるようにしておきましょう。「〇〇業での経験を〇年」「〇人規模のチームをマネジメント」など、数値が入ることで、先方もスキルや経験を判断しやすくなります。アピールする際には、具体的なエピソードを交えて話すことで、自身のスキルを伝えやすくなります。

適切なタイミングを知る

管理職の転職は、そもそも公開求人が市場に多いとはいえないため、時期的なタイミングに変わりはありません。ただし、自身のキャリアのなかで適切なタイミングを見極めることが重要です。

たとえば、管理職になりたてで転職活動をしたとしても、管理職としての実績が少ないため転職が難しいと考えられます。実績を残したあとや、今いる組織で後任の目途が立ったときなど、タイミングを見極めましょう。

希望条件も明確にしておく

年収や労働条件について、自分が望む条件を明確にしましょう。求人を探す際や転職エージェントを利用する際など、事前に要望を伝えておくことで、希望の求人に出会いやすくなります。

管理職の転職にオススメな求人の探し方

管理職の転職は、ヘッドハンティングや人脈を活用した手法が一般的です。それ以外に、ダイレクトリクルーティングや転職エージェントの活用も考えられます。

ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングとは、企業が採用データベースやSNSを通じて、候補者と直接やり取りする採用手法です。企業が候補者の経歴をもとにスカウトを送るため、採用のミスマッチの確率が低くなります。

ダイレクトリクルーティングで企業から声をかけられるためには、見つけてもらわなければいけません。転職サイトに登録し履歴書をアップデートしたり、仕事用のSNSアカウントを作るなど事前準備を整えましょう。

ダイレクトリクルーティングの代表的なサービスとしては、以下のものがあります。

  • LinkedIn
    アメリカ発祥のビジネスSNS。個人がアカウントを登録しており、企業が採用で活用できるスカウト機能などを有している。全世界でユーザーが登録しているため、幅広い採用活動が可能。ただし、すぐに転職を考えていない潜在層も多い。
  • Wantedly
    「想いでつながる」をテーマとした採用媒体。労働条件ではなく、会社のビジョンややりがいに特化した求人が特徴。採用広報にも活用できる。スカウトの送信が可能。
  • ビズリーチ
    ハイクラスに特化した転職サイト。個人登録時に審査があり、職務経歴書が充実している点が特徴。転職顕在層向けのメディアであるため、高い返信率が期待できる。

転職エージェント

転職エージェントは、市場に出回らない非公開求人の情報を持っています。例えば、「JACリクルートメント」や「パソナキャリア」などが有名です。

なかには、管理職などミドルクラス・ハイエンドの求人に特化しているところもあります。転職エージェントの活用は基本的に無料のため、自分にあったキャリアアドバイザーと出会えるところを探してみるといいでしょう。

管理職の転職に関するまとめ

管理職の転職は、キャリアアップのほか、モチベーションアップにもつながります。新たな分野で、これまでの経験を活かしたいと考える人や、納得の行く待遇や労働環境を求めている人にとって、転職はプラスに働くかもしれません。転職活動では、譲れないポイントを決めて取り組むことが重要です。人脈や転職エージェント等を利用し、市場にはなかなか出ない求人を探してみるといいでしょう。