人材育成は、労働力人口が減って人材確保に苦しむ企業が取り組むべき重要な施策の1つです。しかし、いざ人材育成を行おうとしても、「人材育成の目標の立て方が知りたい」「人材育成の目標の具体例を読んでイメージをつかみたい」と課題を抱える人事担当者は多いでしょう。
人材育成は時間と労力が発生し、失敗してしまうと企業にとって大きな打撃となります。それを回避し人材育成を成功させるには、適切な目標設定が非常に重要です。では、具体的にどうやって人材育成の目標を立てれば良いのでしょうか。
本記事では人材育成とは何か、人材育成で目標が重視されている理由、目標設定のポイント、目標例をまとめました。
効果的な人材育成を行うために、目標の基本を押さえ、自社の目的に合った人材育成をして企業の成長につなげましょう。
Contents
そもそも人材育成とは
人材育成とは、「長期期的な視点で企業に貢献できる人材を育成すること」です。業務に関するスキル・知識を学ばせる教育とは異なり、人材育成は主体性を育て一般的な基礎能力を向上させることに重点を置きます。
つまり「どう行動するか、どう考えるべきか」従業員が自ら思考できるよう、長期的な計画を立てて育てることを、人材育成と呼びます。
人材育成における目標の考え方
人材育成の目標を決めるときは、従業員のキャリアデザインを尊重しましょう。会社だけの目線で人材育成の目標設定すると不信感につながるおそれがあります。
目標設定のポイントは以下のとおりです。
- 従業員のキャリアデザインを意識する
- キャリアデザインと企業の成長の方向性が重なる目標にする
人材育成の目標は従業員のキャリアデザインを踏まえ、従業員の成長が企業の経営戦略の実現につながるように設定することが大切です。
人材育成において目標が重要な理由
人材育成で目標を設定することで、
- モチベーションアップ
- 人材育成の効果が可視化できる
- 企業の成長
という3つのメリットが得られます。以下で詳しく確認していきましょう。
モチベーションが向上する
人材育成の目標が重要である理由の1つ目は、モチベーションアップです。目標があればどこに向かって努力すれば良いか、方向性が明確になります。また、目標に対し従業員の中で「達成したい」「成功したい」という気持ちが湧き、モチベーションアップが期待できます。
さらに目標を1つずつ達成し成功体験を繰り返すことで、仕事への自信につながるでしょう。
社員の成長度合いが分かる
人材育成の目標は、従業員の成長を知る指標の1つです。目標で具体的な数値に落とし込み達成度合いとして成果が可視化されることで、従業員を評価する際の判断材料になります。
目標設定は期限を設けて数値的な基準を定めるなどして、達成度合いが評価できる目標を立てることが重要です。
会社全体の成長に繋がる
目標を定め、従業員が成長することで企業の成長にもつながります。目標設定によって従業員のモチベーションがアップし、育成を通して能力が向上すれば、業務効率化が進み生産性の向上が期待できます。
人材育成の目標を達成しながら従業員一人ひとりが成長し、競争力や企業力が高まることで、企業全体も成長していくでしょう。
人材育成の目標設定をする上で大事な6つのポイント
目標設定の重要性を理解したら、次は具体的な目標を立てましょう。目標設定が適切に行われていないと、期待している効果が得られません。
ここでは、目標設定で押さえておくべき6つのポイントをご紹介します。
1.具体的で数値化できる目標にする
1つ目のポイントは目標設定に数字を盛り込むことです。抽象的な表現では成果の測定が難しいです。可能な限り数値を使用したり、具体的な行動を盛り込んだり、評価しやすい目標設定を立てることが効率良く人材育成に取り組む上で重要です。
例えば「○月までに」「前年対比○%を目指す」など、期限や売り上げを明確に示しましょう。また数値以外の目標を設定する場合は、「クレーム対策に力を入れる」ではなく「クレーム対策のミーティングを毎週30分時間実施する」など行動を明確にし、達成度合いが測れる工夫をしてください。
2.本人に合った達成可能な目標にする
2つ目のポイントは目標が達成可能なものか検討することです。高すぎる目標を設定してしまうと、達成に向けた取り組みそのものの難易度も上がるため、行動の継続が困難になるかもしれません。高すぎる目標は挫折につながり、モチベーションの低下を引き起こすリスクがあります。
従業員自身が「頑張ったら達成できそうだ」と思える目標を立て、従業員の実力から乖離しすぎない目標設定を心掛けましょう。
3.期日を明確に決める
目標を設定のポイントは、期日を設定することです。期日が明確であれば、ゴールから逆算して着実に目標達成を目指し進んでいけます。また効果検証は期日後に行えば良く、振り返りをする上でも重要な目安になります。
なお、目標の振り返りの際は達成度合の確認に加え、達成できた・できなかった要因、気づきなどの洗い出しも行い、次の目標達成の質を高めるヒントを探しましょう。
4.段階的な目標を設定する
4つ目のポイントは、段階的に目標設定をすることです。大きな目標を1つだけ掲げるのではなく、長期的な目標を設定し、そこから細分化した目標を設定してましょう。目標を段階的にすることで成功体験を積み重ねられ、モチベーションを維持しながら目標に取り組めます。
例えば「1年後までに○を達成する」と長期的な目標を設定し、「月末までに○を達成する」など短期間で達成できそうな目標をいくつか設定しましょう。
段階的な目標を掲げることで進捗確認が容易になり、最終的な目標からズレないよう常に軌道修正が可能です。
5.管理シートなどを使い計画を作成する
人材育成の目標は、管理シートなどを使って明文化しましょう。管理シートには目標、進捗、達成度、上司からのコメントやアドバイスといったフィードバックの項目を設定します。
管理シートを作成するときは現状を整理し、課題の棚卸をしてください。次に課題解決に向けた大枠となる目標を立て、その目標を達成するための目標を段階的に組み立てていきましょう。
6.進捗を可視化できるようにする
定期的な進捗確認も大切です。ミーティングや面談を行い、目標の達成度を記録しましょう。進捗を可視化することで目標に対するモチベーションを持続させられ、期日や目標となる数値を再認識してもらえます。
さらにミーティングを通して従業員同士が目標を意識し合うことにより、目標に関する新たなインスピレーションの獲得、チームワークの強化といった効果が期待できます。
目標の管理方法と注意点
ここまで人材育成の目標設定が重要な理由や、目標を立てる6つのポイントを解説しました。
人材育成の目標に関する基本的な知識を踏まえ、本章では目標を管理する方法とその際の注意点を確認していきましょう。
振り返りの場を設ける
人材育成の目標を立てたら、定期的に振り返りをすることが大切です。ミーティングや面談を開いて、従業員同士や上司と進捗状況の報告・確認をしましょう。
振り返りを通して正しい方向で目標に進んでいるか、また手段や方法を見直す機会になります。もし方向や手段が間違っていると気づけば、早い段階での軌道修正が可能です。
また振り返りの場で上司や先輩、他の従業員からアドバイスをもらえば、多角的に課題を認識でき、新たな閃きが生まれる可能性を高められるでしょう。
結果だけでなくプロセスも見る
人材育成の目標達成に対し、従業員が「どう取り組んでいったのか」というプロセスにも着目しましょう。人材育成は中長期的な視点で従業員の主体性を育て、経営戦略を実現できる人材に育てることを目的としています。目標に向けてどのような行動を起こしたのか知ることは、主体性を育んでいくための重要なヒントになります。
もし短期的には結果が出ていなくてもプロセスの中に成果へつながる行動があれば、その点を評価しましょう。
プロセスに目を向けることで目標への道筋を細かく分析でき、改善が必要な箇所を洗い出して次回の目標にも盛り込め、さらなる成長が期待できます。
人材育成の目標例
人材育成の目標は、それぞれの職種や業種の個性によって少しずつ変わってきます。次に営業、エンジニア、人事、管理職の4つに分け、具体的な目標例をご紹介します。
営業の目標例
営業は個人別、チーム単位で目標を持っているのが一般的です。業務の目標とキャリアデザインが融合する目標を設定することがポイントになります。
営業職の目標には、以下のようなものがあります。
- 来期末まで朝礼時に20分のロープレをし、チーム全体の売り上げを30%アップさせる
- 1日5件のアポイントを獲得し、第三四半期末の個人売り上げを600万円に伸ばす
- 年度末までに訪問件数を1日15件にし、新規顧客を獲得して売り上げを2,000万円を達成する
目標達成までの行動についても細かく数値を設定し、具体的な目標を提示しましょう。
参考文献:営業戦略に有効なフレームワークとは?課題解決に役立つ型を確認
エンジニアの目標例
エンジニアを取り巻く環境の変化は非常に速く、意欲的に学習できる人材が求められます。オンラインによる非対面コミュニケーションが活発となっているため、UIスキルの向上は企業の成長に大きなプラスとなるでしょう。
エンジニアの例をご紹介します。
- 第三四半期末までに、会員ページのUXを改善することによって、継続利用率を5%アップさせる
- 来期までに、毎朝チームメンバーで進捗状況を確認し、納期達成率を100%にする
- 今期末までに5つのWebアプリケーションのUIを向上させ、CVR(コンバージョンレート)を120%改善させる
人事の目標例
人事部は仕事が定量的ではなく、数値での目標設定が難しい傾向にあります。そこで業務の効率化や時間的な生産性の向上、従業員の離職率、労務環境の改善といった業務に関する具体的な行動や数値を取り入れることがポイントです。
以下が人事の目標例です。
- 消耗品にかかるコストを見直し、前年度比30%削減する
- 有給休暇の消費率を前年度比30%増やす
- MOS資格を取得し、書類作成にかかる業務時間を70%にまで短縮させる
- 年末までにタイムカードのシステム見直しを行い、給与計算の業務時間を15%短縮
管理職の目標例
管理職には部下の成長に関する目標が効果的です。マネジメントに加え、メンタルヘルスや残業時間や労災といった労務管理の知識も、部下を育成する上で重要な情報になります。管理職の人材育成では、マネジメントや労務管理の知識を習得できる目標を設定しましょう。
具体例は次の通りです。
- 毎月の残業時間をチェックし、残業が多い部下には個別に面談を実施。進捗状況の確認やアドバイスをして、仕事への取り組み方を指導し、部下の残業時間が1人あたり月45時間を超えないようにする
- チームのメンバーと個別にランチミーティングや面談を行い、来期の成長率を前年比130%にする
人材育成の目標に関するまとめ
人材育成は計画を立てて適切に実施しないと、期待した成果がともなわず失敗してしまうリスクが高くなります。人材育成を成功に近づけるためには目標設定を正しく行い、効率良く取り組めるよう設計することが重要です。
今回の記事では人材育成にとって目標設定が重要な理由、目標設定のポイント、目標管理の方法や人材育成の目標例などを網羅的にご紹介しました。
目標設定の重要性を理解し、従業員が意欲を持って業務に取り組める環境を作り、会社と従業員両者が成長できる環境を整えましょう。従業員が目標を達成して成長するに従い、企業全体の成長へとつながります。