人事研修で行うべき内容とは?主な研修方法や取り入れ方を解説

人材育成・マネジメント

日本の労働力人口は減少の一途をたどっており、人材の確保・育成・定着率の向上への取り組みが急務となりました。採用活動や人材育成を行う人事担当者が持つ役割は大きく、人事担当者の育成を検討している企業も多いと思います。

しかし、「従業員の教育や研修のノウハウは持っていても、人事担当者の研修で何をすべきか分からない」とお困りの方もいらっしゃるでしょう。

本記事では人事の役割をはじめ、人事研修の目的や主な内容、研修方法について解説します。また、自社で人事研修をするリソースが不足している方向けに、人事研修のサービスを提供している会社もご紹介しています。

そもそも人事に求められる役割とは?

人事の役割は、人材を活性化させて企業を発展させることです。人事の主な仕事は、「採用」「教育・研修」「評価」「労務」の4つです。

人事と総務は一括りにされやすい言葉ですが、総務部は備品や設備の管理、社内イベントの企画や運営といった企業運営のサポートを担当しています。厳密には異なる部署であっても、総務が人事を兼任している企業も少なくありません。人事の仕事について下記で詳しく確認していきましょう。

採用

人事は経営計画をベースに「どのようなスキルや経験を持った人材を採用したいのか」「どの部署に何人をいつまでに採用したいのか」といった採用計画を立て、人材確保に向けた活動を行います。採用の具体的な流れは以下の通りです。

  • 採用方針・採用計画の策定
  • 求める人物像の明確化
  • 採用手法の選択
  • 選考
  • 内定後のフォロー
  • 採用活動の課題を洗い出し

採用手法は求人媒体の利用、ダイレクトリクルーティング、リファラル採用、人材紹介の活用など多様化しています。社内のリソースや採用活動の期間を考慮し、人材不足で現場がひっ迫しないよう、自社に適した採用手法を選び人材を確保するのは、人事の重要な業務です。

教育・研修

組織の目標を達成し、業績を上げるために、従業員の持つスキルや業務の習熟度に合わせて、教育・研修の企画と実施を行います。代表的な研修・教育を下記にまとめました。

  • 新入社員研修
  • 管理職研修
  • マネジメント
  • ハラスメント関連

内製化して自社の従業員に講師を務めてもらう場合もあれば、外部講師へ委託することもあります。

評価

制度の設計・運用・見直しや人事面談といった、従業員のスキルや業績を適切に評価する仕組み作りも、人事の業務の1つです。評価の具体的な仕事は、次の通りです。

  • 評価制度の設計
  • 人事面談の実施
  • 昇給・昇格の管理
  • 人材配置・異動

公正な評価は、従業員のモチベーションアップへつながり、納得感の薄い評価では従業員の不満を生む要因となります。従業員のキャリア観や企業が従業員に求めるスキル、特性などは年々変化するでしょう。評価制度を構築した後も、定期的なメンテナンスを行い、ニーズに合っていなければ再構築も検討してください。

労務

労務とは、労働に関する業務のことです。労務の代表的な仕事として、次のようなものが挙げられます。

  • 社会保険手続き
  • 勤怠・休暇管理
  • 給与計算
  • 安全衛生の管理
  • 健康診断の実施・手配
  • 福利厚生の管理

従業員のサポート的な意味合いの強い仕事ですが、安心して会社で働くためには欠かせない大切な業務です。メンタルヘルスの不調による休職や退職を防ぐためにも、人事担当者にはメンタルヘルスケアに関する一定の知識が必要となるでしょう。

人事研修の目的とは?

人事研修の目的は、人材管理に必要な知識・スキルの習得です。人事は経営資源である「ヒト」に関する業務を担っている、重要なポジションです。

人材の確保から従業員の給与計算、マネジメント施策、社会保険手続きといった業務を幅広く行わなくてはなりません。そのため人事担当者には、業務の基本的な知識はもちろんのこと、社会情勢や従業員の価値観の変化をつかむ能力や、変化に適応するため自ら学習できる自発性が求められます。

トレンドを取り入れた人事研修を外部の研修機関が提供しているので、積極的な活用をおすすめします。

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人事研修の主な内容

人事に必要なスキル・知識を下記に列挙しました。

  • 労務に関連する諸法令
  • 採用の知識
  • 人事制度の知識
  • コンプライアンス
  • コミュニケーションスキル
  • プレゼンテーション、企画の立案に関するスキル
  • タレントマネジメント

ここからは、スキル習得に役立つ研修内容について解説します。

人事部としての心構え・コミュニケーションのとり方

心構えでは、人事として適切な行動や人事のあり方といったことを学び、マインドセットをしておきます。また、人事は他部署と連携したり、採用活動で応募者とやり取りをしたり、社内外の人たちと接する機会が多いため、高いコミュニケーションスキルが必要です。

人事は中立な立場で従業員と関わらなくてはならず、感情をコントロールし冷静なコミュニケーションが取れるよう研修を行います。

人材採用関連の知識

採用関連の研修では、面接の流れや応募者への質問などの知識をメインに学習します。応募者によって採用で見極めるポイントは異なるため、新卒採用向けとキャリア採用向けに分けて研修しましょう。

採用関連の研修では、ロールプレイング形式で面接の実践を盛り込むといった工夫が必要です。

労働法に関する基礎知識

従業員が安心して働くには、安全衛生や労働に関する法令が遵守されていることが重要です。人事研修では、労働契約や就業規則をはじめ、従業員とのトラブル対応について学習します。

人事制度に関する知識

従業員を公正に評価するには、従業員と会社にマッチした人事制度の導入がポイントです。適切な人事制度を設計・運用するために、人事制度の領域や目的、設計の方法といった内容を学びましょう。

人事制度のトレンドは移り変わりが激しいので、研修以外でも情報を日々キャッチできるよう意識することも大切です。

人事評価制度のトレンド9選!2020年代最新の傾向や企業の事例

社員の育成や研修方法

確保した人材の定着化や、従業員の能力を最大化させる方法について学習します。たとえば、従業員のキャリアプランを設計する方法や、研修プログラムを構築する方法が挙げられます。

従業員の仕事に対する価値観は変化しており、従来の育成方法では期待している効果が得られにくい可能性があります。時代や従業員に合った育成・研修方法を、人事研修で学びましょう。

人事の研修方法

人事研修も、他の社員研修と同様の方法で行います。人事研修の代表的な方法として、次の3つが挙げられます。

OJT

業務を実践しながらスキル・知識を習得する方法をOJT(On the Job Training)と言います。メリットは、上司や先輩といった担当者が個別に教育するため、フィードバックを適宜受けられることや、費用を抑えられる点です。

しかし、担当者によって質にムラが発生しやすく、体系的な基礎知識が漏れる可能性があるといったデメリットもあります。OJTだけではなく、他の研修方法も併用すると良いでしょう。

OJT教育とは?新人育成する上で担当者が知るべき手法や注意点

OFF-JT

OFF-JTは、業務から離れてセミナー・研修に参加し、知識を得る研修方法を指します。基礎知識を体系的に学べ、一度に多くの従業員が参加できる点が魅力です。

研修場所を確保したり、スケジュール調整などに労力を要するため、頻繁に開催はできません。従業員を講師として育成するには一定の時間も必要なので、リソースが不足している場合は外部講師に依頼すると良いでしょう。

eラーニング

eラーニングとは、インターネットを使って講義を受講する学習方法です。パソコンやスマートフォン、タブレットからアクセスでき、時間や場所を選ばない点がメリットと言えます。

自社で動画を撮影しカリキュラムを構築する場合もあれば、外部のパッケージを利用する方法もあります。人手不足で十分にOJTが実施できない企業や、従業員が業務を中断してOFF-JTに参加しづらいケースにおすすめの学習形態です。

人事研修を行っている研修会社

社内で人事研修を行うほかに、外部機関を活用するのも有効な手段の1つです。本章では、人事研修を提供している主な研修会社を3つに絞ってご紹介します。

株式会社インソース

株式会社インソースは企業向け研修を多く取り扱っている会社で、採用事務、面接、給与事務、外国人就労、人材育成、人事評価制度構築といったテーマの人事研修を提供しています。基礎知識だけではなく、実践スキルをリーズナブルな価格で利用できるのが特徴です。人事向けのプランには下記のようなものがあります。

ミッションが共有されている「強い組織」をつくるプラン
全員が自らの果たすべき役割を認識して実行し、組織目標の達成に向けて一丸となるための考え方とスキルを学ぶプラン。新人から経営層までを5階層に分け1回ずつ研修を実施

人事評価制度を「愛」をもって構築・見直しするプラン
あらゆる企業の評価者・被評価者へ教育を行ってきた実績により、「愛」のある人材教育と人事評価を同時に満たし、現場で役に立つ制度の構築を行うコンサルティングプラン

採用戦略立案から内定者へのアプローチまでの全支援プラン
採用戦略の立案から、選考中の就活生とのコミュニケーションツール・アセスメントツールの導入、面接官への教育、内定者へのフォローなど、1年間を通して包括的に支援する

引用元:人事向け研修 | 現場で使える研修ならインソース

リクルートマネジメントスクール

リクルートマネジメントスクールは、社員研修・社員教育を扱っており、従業員1人から参加できる公開型研修サービスを提供している会社です。人事向け研修では、主に下記について学べます。

  • 研修企画・設計入門
  • 新卒採用・キャリア採用
  • 育成担当者研修
  • リモートマネジメント
  • DX

リクルートマネジメントスクールの特徴として、実践に役立つ研修プログラムであること、経験を豊富に持つトレーナーがいること、ラインナップが多彩な点が挙げられます。100種類以上のコースが3時間から学べるので、忙しくても要点を絞った知識の習得が可能です。

SMBCコンサルティング

SMBCコンサルティングは相談から企画提案を無料で受け付けており、課題解決に適したプランを作成しサポートしてくれる点が特徴です。代表的な人事向けセミナーの例を、以下に抜粋しました。

人事制度の構築・運用
人事評価・等級・報酬などの制度の基本から、要員計画の策定、人事データの分析、制度の見直し、人事の戦略的役割まで、人事制度の構築・運用に関する知識や実務ポイントを習得します。

人材マネジメント施策
効果的な人材育成を進めるための人材開発・研修体系の構築、研修プログラムの設計や、ワークライフバランス、メンタルヘルスマネジメント、組織活性化などの課題に対する実務について習得します。

労働法制
労働基準法などの労働法制の基本から、労働時間管理、健康管理、非正規雇用管理の実務や、法改正、労基署等の行政の最新動向まで、法律知識や実務ポイントを習得します。

社会保険・給与計算
社会保険・年金、給与計算の基礎知識と年末調整の実務、再雇用者・海外勤務者等をめぐる労務実務のポイントを習得します。

引用元:SMBCコンサルティング

SMBCコンサルティングでは、社内研修や定額制のビジネスセミナーなども開催しているので、組み合わせて活用するとより高い教育効果が得られるでしょう。

状況に応じて即戦力フリーランス人事の活用も

人事の育成に時間をかけず、最短で戦力を確保したい場合は、フリーランス人事への委託をおすすめします。フリーランスへ依頼するメリットは研修コストを抑え、スキル・経験がすでに備わっている人材を必要なタイミングで活用できる点です。フリーランスの得意分野にもよりますが、フリーランス人事へ依頼できる業務内容として、採用代行や評価制度の設計・運用などが挙げられます。

フリーランス人事を探す方法には、ダイレクトリクルーティングやリファラル採用、人材エージェントの活用、求人広告の掲載が一般的です。フリーランスのスキルや稼働時間、委託する業務範囲によって費用は変動するので、予算や双方の希望をすり合わせる必要があります。

弊社「人事プロパートナーズ」では、即戦力の人事人材をご紹介しています。フリーランス人事の採用を検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

人事研修に関するまとめ

従業員の意識や価値観が変化し多様性が進むなか、人事には従業員一人ひとりへの柔軟な対応が要求されています。人材管理や育成方法への深い理解や、高いコミュニケーションスキルを養う手段として、人事研修の重要性が今後さらに増していくでしょう。

人事研修はOJTやeラーニングのほか、外部機関の利用も効果的です。まずは、人事の状況を把握してどのような研修内容を選択すべきかの検討から始めてみてはいかがでしょうか。