経営層や人事担当者の中には、「組織が思っている方向に進んでいない」「従業員やチームの雰囲気が悪い」と悩んでいる人も多いと思います。社風や従業員などに悪い影響が出始めている場合、組織が上手く機能していない可能性が高いです。優秀な人材が辞めたり、業務に支障が出たりする前に、組織作りに着手する必要があります。
しかし、組織を作ると言っても、何から手を付ければ良いのでしょうか?
本記事では組織作りを始めようと考えている人に向け、組織作りとは何か、組織作りの5つの原則、組織作りの方法を解説します。
また、組織を作る上でのポイントもあわせてご紹介しているので、組織の基本を理解するのに役立ててください。
組織作りとは
組織作りとは、「組織の文化や骨組み、人事システムなどを構築し、会社の中が上手く機能するよう人を動かすための仕組み」を作ることです。
例えば組織の文化を作ることで自社の価値観を従業員に浸透させ集団をまとめたり、人事システムを構築して働きやすい職場を整備したりするのが組織作りの役割です。
組織作りは、会社が発展していくために欠かせない業務であり、定期的に組織が機能しているか見直さなければなりません。
組織作りの目的
組織作りの目的を一言で表すと、「従業員を動かす」ことを意味します。従業員は会社にとって大切な経営資源の1つです。もし従業員がバラバラの方向を目指していたら、足並みがそろわずチームの統率が取れません。
つまり、従業員が会社の目指す方向と同じところを向き、チームで努力し成長しながら発展できるよう環境を整備することが組織作りの目的です。
組織作りで得られる成果
組織作りにより、強い組織の実現が可能です。前述した通り、組織を構成する従業員の目的意識がバラバラだと、組織がまとまらずチームで成果を出すことができません。
組織作りに取り組み、組織と従業員の目的や理念をリンクさせることで、組織と従業員一人ひとりが良い影響を与え、お互いに成長しあえる関係性を築け、組織が強くなっていきます。
強い組織とは
強い組織とは、「すべての従業員が同じ目標を目指し、行動する組織」のことです。例えば、会社の目標や理念、自身の役割を理解できている状態で、業務を行い成果を上げることを指します。
目標や理念の認識がそろっていると、従業員同士がお互いを仲間と意識でき、信頼関係が生まれやすいです。コミュニケーションが活発となり、刺激し合うことでスキルもアップするでしょう。
組織が強くなれば、内部変化はもちろん外部の変化にも素早く対応でき、強い組織を構築し続けることが可能になります。
組織作りにおける5つの原則
組織作りには、以下の5つの原則があります。
- 1.専門化の原則
- 2.権限責任一致の原則
- 3.統制範囲の原則
- 4.令統一性の原則
- 5.権限委譲の原則
それぞれ詳細を解説していきます。
1.専門化の原則
1つ目は専門化の原則です。専門化とは、従業員のスキルアップにより業務の効率を良くし、分業化することを意味します。
業務の内容やレベルにばらつきがあると、人によって業務の効率が下がってしまいます。そこで、似た内容の仕事に就かせて、質のいい仕事を効率良くできるような組織を作ることが、専門化の原則です。
2.権限責任一致の原則
権限責任一致の原則とは、付与された権限と、責任の重さに差が生じないようにする仕組みを言います。例えば優秀な人材に結果ばかり求めたり、権限を与えすぎて組織が崩壊したりすると、組織がうまく機能しません。
高すぎる責任は従業員のモチベーションを下げる要因となり、組織を腐敗させることになります。権限と責任を一致させることが、組織作りの2つ目の原則です。
3.統制範囲の原則
統制範囲の原則とは、別名「スパンオブコントロール」と呼び、管理する側と管理される人(部下)の人数をコントロールすることです。
管理者があまりに多くの従業員の面倒を見なければならない状況だと、一人ひとりの業務を把握できなくなり、トラブルを誘発する原因となります。管理者のキャパシティを超えない範囲内で、適度な人数を任せることを統制範囲の原則と言います。
この原則をうまく活用するには、人事など人材配置を決める立場の人が管理職の力量を正しく測る力を身に付けていることが重要です。
4.命令統一性の原則
命令統一性とは、指示(命令)を出す人を統一することです。チームや部署が細かいと、指示を出す人が複数現れ、異なる指示が出ることによって従業員が混乱し、現場の士気や統率力が乱れてしまいます。
もし、異なる指示が出された場合、従業員は権限の大きい人に指示の再確認をしなければならず生産性が下がり、管理者の時間のロスにもつながるでしょう。
指示を出す人は統一しておき、現場を混乱させない組織を作る原則が、命令統一性の原則です。
5.権限委譲の原則
権限委譲とは、自分の仕事を部下などに任せることを指します。仕事を任せるときは、相手の能力に合わせたものを選びましょう。
また、仕事のゴール(納期や達成目標)や、内容を明確にしておけば、相手との認識のズレを防げます。
曖昧な状態で仕事を丸投げしたり、相手が合意していない段階で一方的に背負わせたりすると、不信感につながるので注意してください。仕事を任せたときは、判断する権限も部下に与えましょう。
組織作りの方法
組織作りの概要を理解したところで、本章からは組織作りの具体的な方法を確認していきましょう。
参考文献:【組織作り】企業戦略をスムーズに実行できる組織の作り方
組織の文化を作る
最初に、組織の文化を作りましょう。組織の文化は自然に発生することがあります。その場合、経営者が描く文化とかけ離れていたり、コントロールができずチームや従業員に悪い影響を与えたりするケースがあるので注意してください。組織の文化の一例をご紹介します。
- 風通しが良く、発言しやすい
- スピード感を持って仕事をする
- 失敗しても挑戦できる
組織作りをするときは、まず組織の文化をテキスト化し、途中入社の人でも理解できる環境を整えましょう。組織の文化を言語に落とし込むことで、従業員一人ひとりが会社の規範や価値観を理解するのに役立ちます。
組織の構造を作る
2つ目は組織の構造作りです。組織の構造は、大きく分けて
- 職能別組織
- 事業部制組織
- チーム制組織
の3つです。組織の構造を作ることで職務内容や指揮命令系統、権限の所在が明確になります。それぞれ簡単に解説していきましょう。
職能別組織
職能別組織は、遂行する職務によって部門編成する組織のことです。例えば、仕入れ担当、営業担当、事務担当、物流担当、人事担当など仕事の役割や種類を基準に組織を形成します。
業務効率が向上し、専門性を高めやすいというメリットがある一方、組織が柔軟ではないので市場が急激に変化した場合に対応しづらいといった面を持ちます。
事業部制組織
事業部制組織とは、店舗事業部、通販事業部、新規事業部といった事業に分けて編成する組織形態のことです。それぞれの事業は独立しており、多くの大企業が事業部制組織を採用しています。
事業が独立しているので、意思決定がスピーディーに行え、事業の責任も明確になるというメリットがあります。その反面、他事業と協働しづらく、ノウハウも共有されにくいのがデメリットと言えるでしょう。
チーム制組織
チーム制組織とは、各部署の中でプロジェクトごとにチームを編成する組織形態で、前述した職能別組織や事業部制組織と併用されることもあります。このチームはプロジェクトが終了したり、目的が達成したりすると解散し、新しいチームの編成・解散を繰り返します。
チーム制組織のメリットは、2つあり、1つは組織が柔軟なため市場の変化に対応しやすい点です。さらにさまざまなチームに在籍してきたメンバーが知識を持ち寄るため、革新的なサービスや製品を発明しやすいのが2つ目のメリットです。
ただし優秀な人材をメンバ―として構成されることが多いため、人材が抜けた穴を他の従業員がカバーしなければならず、従業員に負担がかかる点がデメリットになるかもしれません。
組織の人事システムを作る
最後に、組織の人事システムを作ります。人事システムには、以下のようなものがあります。
- 人事評価
- 採用
- 報酬・給与
例えば、採用時期や面接回数といった採用方法を決めてスケジュールを管理するのも、人事システムの1つです。人事システムを作って基準やサイクルを明確にすることで、経営者の気分で給与が増減したり、基準があやふやで評価に納得感がなく従業員から不満が生まれたりするリスクを下げられます。
従業員が長く働けるように、人事システムを構築して組織が正しく機能する環境を整えましょう。
強い組織を作る上で大切なこと
組織が強くなれば、会社は半永久的に成長し、事業を継続していくことが可能です。では、具体的に何をすれば組織が強くなるのか、ポイントを7つ確認していきましょう。
企業理念とビジョンの浸透
1つ目は、企業理念とビジョンの浸透です。強い組織を作るためには、すべての従業員が同じ方向を目指していなければなりません。
従業員一人ひとりが持つ力や成果よりも、チームで出す成果の方が大きな影響力を持ちます。会社が業績を上げていくには、チームの統率が取れてまとまっていることが重要です。
従業員がまとまれるよう、まずは方向となる企業理念やビジョンを理解してもらいましょう。
会社全体での組織目標の共有
次に大切なことは、会社全体で組織の目標の共有です。ビジョンの浸透と同じく、目標の共有により、従業員が同じ方向を向いて協力しながら成果を上げるよう行動することができます。
企業理念やビジョンは抽象的なことが多く、具体的な行動には落とし込めていません。そこで組織目標を示し、組織や個人の目標などを細分化して共有することで、「組織のために自分は何をすれば良いか」を従業員に理解してもらえます。
自社に合った人事評価制度の構築と可視化
3つ目は人事評価制度を作り、分かりやすくルールを明記することです。人事評価制度は従業員の待遇に直接関係するため、従業員のモチベーションに大きな影響を与えます。人事評価制度が古かったり、自社にマッチしていない場合は人事評価制度の見直しから始めましょう。
自社の風土や従業員に合せ、自社に適した人事評価制度を作り、「何をすればどう評価されるか」という基準を可視化してください。人事評価制度を構築・可視化して、従業員が一人ひとり会社に正しく評価されていると実感できれば、仕事の意義を感じやすくなり、組織の結びつきを強化できます。
経営計画書と人事評価制度の連動
経営計画書と人事評価制度を連動させることも、強い組織作りを進める上では重要です。経営計画書とは経営理念、ビジョン、方針、行動指針、経営戦略、売り上げ目標、組織図などを記載する書類を言います。
経営計画書作成の目的は、
- ①経営理念を浸透させる
- ②目標が明確になる
- ③経営層や会社の価値観をすべての従業員に伝える
この3つです。
経営計画書と人事評価制度を連動させることで、会社の成長と従業員の成長が結びつき、片方が成長すればもう片方も成長できる仕組みを作り出すのに役立ちます。
人事評価制度を構築するときは、経営計画書と連動するように設計し、適切に従業員を評価できる環境整備を意識しましょう。
長期的な視点
5つ目のポイントは、長期的な視点を持つことです。会社が成長するためにはある程度の時間がかかります。掲げた目標を達成するには会社が成長しなくてはなりません。長期的に組織を強くし、目標達成していこうという意識が会社を大きくします。
数年後、10年後の未来を見据えて、どのような会社になりたいか目指す方向を決めて組織作りをしましょう。
人材育成の仕組み化
人材育成の仕組み化も、強い組織を作るには有効な手段です。人材育成を仕組み化する方法は主に次の流れで行います。
- スキルマップと人事評価制度を連動させる
- カリキュラムを作る
- 学習方式の決定とリソースの設計
- 効果測定の実施
スキルマップとは、職種や階級ごとに業務を棚卸し、いつまでに何をできるようになっておくべきかを表したマップです。目標が明確になり主体的な行動を促せるメリットがあります。このスキルマップを人事評価制度と連動させ、人材が育つ環境を作りましょう。
次にカリキュラムを決めて、座学や研修などどのような方法で育成するか、学習方式を決定します。学習のときに使う教材がリソースです。定期的に効果を測定して、改良を重ねることで、人材育成の仕組みは会社の財産になるでしょう。
他にも、人材育成の仕組み化にともない業務を標準化することで属人的になるのを防ぎ、人事や管理職の負担を軽減できるので、効率良く強い組織を作るのに役立ちます。
リーダー・マネージャーの育成
最後のポイントは、リーダーやマネージャー層の育成です。強い組織を作るには、部下を育成するリーダーやマネージャーの力が欠かせません。育成方法を以下にまとめました。
- ゴールの設定
- 役職ごとに求める条件やスキルを明確にする
- 候補者を絞る
- 育成計画を立案する
- 役割や期待していることなどを伝える
- トレーニングする
- モニタリングする
- フィードバックと改善策を考える
リーダーを育てる環境や仕組みが整っていないと、候補者にポジションを与えても、期待している効果が得られず挫折するリスクを高めるでしょう。
組織を強くしていくには、部署の従業員を育成・統率するリーダー・マネージャーの役割が重要だと理解し、育成する仕組みを作ることがポイントです。
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組織作りに関するまとめ
組織を強くすることができなければ、採用した従業員が定着しなかったり、会社が掲げる目標を達成できなかったりと、会社が衰退していくリスクを高めます。
会社が成長するには、会社の内側を強くしていくことが重要です。今回の記事では、強い組織になるために組織作りとは何か、組織作りの目的や得られる成果をはじめ、組織作りの基礎知識をお伝えしました。
組織が機能していないと悩んでいるのであれば、従業員やリーダーが経営理念を理解しているか確かめ、不十分なら組織作りを見直すタイミングが来ているのかもしれません。
組織力を高めるために、自社の現状を把握することからはじめてみてはいかがでしょうか。