人事評価制度のトレンド9選!2020年代最新の傾向や企業の事例

制度設計

人事制度を導入・見直しする際に、トレンドとなっている評価制度や、最新の評価制度を取り入れている企業の事例に興味を持つ経営者や人事担当者は多いと思います。

トレンドとなっている評価制度を取り入れ正しく機能させるためには、制度の内容を理解し自社に適した手法を選ぶことが重要です。

今回の記事では人事制度の変遷を解説し、トレンド手法を9つに厳選しご紹介しています。またトレンドを取り入れるメリット・デメリットや、導入事例などもあわせて取り上げているので、最後まで読んで人事評価制度の検討に役立ててください。

人事評価制度におけるトレンド変化の背景や変遷

1970年代の人事評価制度のトレンドは年功主義型でしたが、年月を経て今では役割主義型に移行しています。どのような背景でトレンドが変化したのか本章で詳しく確認していきましょう。

なお、評価制度の基本的な概要を知りたい方は以下の記事を参考にしてください。

人事評価制度とは?目的や評価基準、成功ポイントをわかりやすく解説

人事制度は2020年代から役割主義へ

人事評価制度は2000年代から役割・行動を総合的に評価して、行動の価値に対して報酬を支払う役割主義型が主流となりました。人事評価制度の変遷を年代ごとに表すと以下のようになります。

  • 1970年代「年功主義型」
  • 1980年代「職能主義型」
  • 1990年代「成果主義型」
  • 2000年代以降「役割主義型」

終身雇用を前提とした年功序列が一般的だった1970年代は、従業員が持つ個々の特性よりも、偏りなく従業員が管理されていることを重要視していました。その後、個性を重視する社会に変化したことを背景に、1980年代は職能主義へ、1990年代からは成果主義へと変遷します。職能主義とは、業務を最後まで遂行する能力を評価することを意味し、成果主義は業務の結果を評価することです。

成果主義型がチームワークの弱体化や離職率を高めやすいといった問題を引き起こすことから、2000年代以降は生産性を高める役割主義型へと変化しました。

評価基準は「行動」へフォーカス

個人の勤続年数、能力、成果を重視するのではなく、役割主義型は従業員の起こした行動に着目します。行動を評価する手法として、後述するバリュー評価や360度評価を用いるのが代表的です。

評価期間はリアルタイム化

1990年代の成果主義は成果が出るまでに一定の時間がかかるため、多くの企業が1年単位で評価を行ってきました。一方、役割主義は行動にフォーカスするため成果が出るのを待つ必要はなく、リアルタイムでの評価が可能です。

オープン主義評価で「評価の見える化」

オープン主義評価とは、評価基準や評価結果を社員に公開する人事評価制度を指します。1990年代まではどのような基準をもとに評価が行われるのか、詳細は一部の担当者のみが把握し、多くの社員には明かされていませんでした。しかし、非公開型の評価制度では従業員の不満が生まれモチベーションを下げることが問題となり、現在は納得感を高めやすいオープン型の評価制度に注目が集まっています。

人事評価制度のトレンド手法9選

人事評価制度が社会情勢などの影響を受け、変化してきた流れを説明しました。ここからは、現在トレンドとなっている9つの手法を厳選し解説します。

1.ノーレイティング

ノーレイティングはランク付けをせずに従業員を評価する手法です。上司と部下が面談を行い、従業員はリアルタイムでフィードバックを得られます。また、目標設定も短い期間ごとに行うため、環境の変化に柔軟に対応できるのが特徴です。

2.バリュー評価

バリュー評価は行動に注目した評価制度を指し、企業の掲げる価値に合った行動を行ったか、が評価に反映されます。大きな成果を上げたからといって、必ずしも高い評価が得られるわけではありません。企業は価値を明確にし、従業員に浸透させることが求められます。

3.360度評価

上司のみが評価するのではなく、同僚や部下など複数人が評価を行う手法です。評価者が増えるので多面的な評価が可能となり、上司だけでは見えなかった被評価者の一面を評価に反映できるのが特徴です。ただし、低評価を恐れるあまり上司が部下を叱らなくなったり、派閥を組んでお互いを監視しあったり、人間関係に影響を及ぼしやすい傾向にあります。

4.リアルタイムフィードバック

リアルタイムフィードバックとは、短期間で従業員にフィードバックを行う人事評価制度の手法です。フィードバックを1~2週間などのスパンで行うため、状況に合わせた目標を立てやすく、業務課題をすぐに発見できるといった点がメリットとして挙げられます。

5.コンピテンシー評価

コンピテンシーとは成果を上げている従業員が持つ行動特性を意味し、評価の基準、項目を作成に行動特性を盛り込む人事評価制度のことです。優秀な人材の行動をモデルにするので即戦力となる人材を育成しやすい一方で、コンピテンシーの抽出が難しいといったデメリットもあります。

6.チェックイン(Check-in)

チェックインには3つの特徴があり、1つ目は3ヵ月に1回以上のペースで面談を実施すること、次にノーレイティングであること、最後に賃金を決定するのは上司であることです。継続的に面談を行うことで、上司と強固な関係性を築き、従業員の成長を促進しやすいといったメリットがあります。

7.パフォーマンス・デベロップメント(PD)

パフォーマンス・デベロップメントとは「部下の成長」に焦点をあてた評価を言います。業績を重視するのではなく、上司は部下の成長にコミットすることを基本にしています。上司とのコミュニケーションが活発となり、リアルタイムでのフィードバックを得られるのが大きな特徴です。

8.ピアボーナス

ピア(peer)とは仲間を指し、従業員がお互いにボーナス(報酬)を進呈しあう仕組みです。贈るものはポイント、メッセージなどで現金は扱いません。導入するコストはかかりますが、評価されることで社内のコミュニケーションを活性化し、表面化しにくい行動や成果が評価されることで従業員の満足度を高められるといった効果が期待できます。

9.OKR

OKR(Objectives and Key Results)とは、達成目標と達成度を設定し、企業や個人、チームが同じ課題に取り組んでいく手法です。大きな特徴として、数字などの定量的な指標を盛り込まないことが挙げられます。

人事評価制度のトレンドを取り入れるメリット・デメリット

トレンドの人事評価制度を運用すると、どのような効果を自社にもたらすのでしょうか。本章では、3つのメリットと2つのデメリットを解説します。

トレンドの評価制度を取り入れるメリット

人事評価制度のトレンドを導入するメリットは大きく分けて、組織全体の生産性向上と人材獲得の競争力強化、生産性の低い人材の放出の3つです。

組織全体の生産性向上

トレンドの手法を用いることで評価制度がアップデートされ、従業員の行動や価値観を適切に評価できるため納得感を高めやすいです。「企業に正しく評価されている」と従業員が感じれば、もっと評価されるために効率良く業務を遂行するためにどうすれば良いかを考えるようになり、結果的に生産性向上へつながるでしょう。

人材獲得の競争力強化

トレンドの手法の活用は、「企業が社会や従業員のニーズに敏感に対応している」と外部にアピールするチャンスです。人事評価制度で企業改革に成功すれば、転職活動中の人に注目され、他社との差別化を図るのに役立ち、人材の確保へつながることができます。

生産性の低い人材の放出

勤続年数をベースに評価する年功序列と違い、トレンドの人事評価制度は個々の従業員が業務にどのように取り組んだか、業績を上げたかなどを評価します。生産性が低い従業員は社内で生き残るのが難しくなり放出されるでしょう。

トレンドの評価制度を取り入れるデメリット

トレンドを取り入れる際に発生しやすいデメリットとして、次の2つが挙げられます。

ベテラン社員からの反発

年功序列で評価されてきたベテラン層にとって新しい制度導入は、自身が不利になるおそれがあるため、歓迎されにくいでしょう。不満が大きければ離職へと発展することもあり得るので、制度導入時には説明会を開催し目的や意図などの理解を促しましょう。

失敗した際の組織弱体化の恐れ

トレンドだからと慎重に検討せず導入してしまうと、失敗して社内に悪影響を及ぼし、弱体化へとつながるリスクが高いです。失敗を避けるためにも、自社の風土に合うか、従業員の価値観に馴染むかなどを考慮して選ぶことが大切です。

トレンド人事評価制度を取り入れた企業の事例

前章では、トレンド手法を活用するメリットとデメリットについて解説しました。ここからは実際にトレンド人事評価制度を導入した企業事例を5つご紹介します。

アドビシステムズ

アドビシステムズは2012年にチェックインを導入し、離職率の大幅減少と株価の上昇に成功しました。チェックインでは従業員個人の成長に着目した面談を実施するため、上司と部下が活発にコミュニケーションを取れるのが特徴です。

> 「チェックイン」という新たな形の「マネージャーと従業員のコミュニケーションの場」を設けることで、社員のパフォーマンス向上を狙ったものです。(略)従業員は、マネージャーと頻繁に自身の成長について話すことで、「マネージャーに見てもらえている、サポートされている」と感じられるようになりました。

引用元:SELECK

メルカリ

メルカリはノーレイティングと「絶対評価」と呼ばれる評価制度を実施していましたが、2021年2月に人事評価制度を大幅に刷新しました。

> 新人事評価制度では「グレード」を基軸に、各個人の成果・行動の2つの観点から評価。成果に対しては「該当するグレードで期待されている成果を達成できたかどうか」、行動に対しては「メルカリグループが定めるバリューを発揮し、実践できたかどうか」を問います。成果が評価されればボーナスに、成果・行動ともに評価されれば昇給につながります。

引用元:メルカリ

ゼネラル・エレクトリック

ゼネラル・エレクトリックは9ブロックと呼ばれる人事評価制度を廃止し、2016年にパフォーマンス・ディベロップメントを開始しました。

> おおむね月に一度、面談の場をつくり、会社やチームとして優先すべき課題や、今月フォーカスしている仕事の進捗状況などを話し合う。また上司は部下の今後のキャリアについて、部下の希望を聞く機会にもなっている。パフォーマンス・ディベロップメントのツールには、周囲の人たちから指摘されたことが全部そこに溜まる。それをもとに公式には四半期に1度、できれば最低月に1度、上司と「タッチポイント」という1対1の面談の場を設けることになっている。

引用元:DIAMOND ONLINE

ヤフー株式会社

ヤフー株式会社は「ヤフーバリュー」というバリュー制度を採用し、価値観に沿った行動ができてれば給与に反映する仕組みを実施してます。

> 社員に「才能と情熱を解き放ってもらう」ためには、評価や目標設定の考えも大幅に変更しなければなりません。まずは2012年、業績評価・行動評価を見直ししました。たとえば業績ですが、今まではTo Do管理型で行われていました。やらなければならない項目を設定しそれに対して成果をはかるものですね。しかし、それでは何か新しい業務が発生しても、「これは目標で設定してないから」とチャレンジ精神が失われてしまいます。そこで大きな目標に挑戦してもらうために、個人の業績は会社の短期業績にも影響を与えるとし、「賞与」に還元することにしました。一方、行動評価。こちらは今まで、一般的な行動ができているかどうかという基準から、ヤフーのバリューを体現できているかどうかへ変化させました。「バリューに沿った行動がとれていること」こそ、将来的に業績に貢献できるとし、「給与」に反映するようにしました。

引用元:d’s JOURNAL

GMOインターネット株式会社

GMOインターネット株式会社は等級ランクを公開し、360度評価を採用している企業です。等級ランクは他部署を含めた匿名の360度評価により決定され、従業員の不満が減るなど納得感のある人事評価制度の運用を実現しました。

> 同社の人事評価では、6段階の等級とその中にランクがあり、この等級とランクごとに給与額の枠が定められており、自己目標の達成度に応じて給与が決定する仕組みとのことです。(略)「360度評価の公平な評価によって不満がなくなった」「給与額がオープンになったことで、仕事に責任を持つようになった」という効果があったとのことです。

引用元:財経新聞

トレンド人事評価制度を取り入れる際の注意点

トレンドという理由で自社に導入しても、他社と同じような効果を得られるとは限りません。人事評価制度を取り入れるときは、次に解説する2点に注意し慎重に検討することが重要です。

自社の風土に合っているか

人事評価制度が最新で流行っていても、自社の風土に合っていなければ期待している効果は得られません。風土や社員の価値観などを踏まえ、現場の反発が起こりにくくスムーズに運用できるかを確認し、人事評価制度を選びましょう。

メリットとデメリットを把握する

どの人事評価制度でもメリットだけではなく、デメリットとなる側面もあります。デメリットが現場の従業員にどの程度負担を与えるか配慮しておかないと、大きな不満につながるでしょう。

メリットとデメリットの両方を比較し、最もバランスの良い人事評価制度を取り入れることが、人事評価制度を効果的に機能させるポイントです。

人事評価制度のトレンドに関するまとめ

今回は人事評価制度のトレンド人事評価制度を9つをピックアップし、企業事例とあわせてご紹介しました。社会情勢や社員の価値観など、さまざまな要因を受けて人事評価制度のトレンドも日々変化します。

人事評価制度を導入したら定期的に見直しを行い、自社の状況に合った内容にして、制度が効果を発揮するよう工夫をしましょう。