企業活動においてもよく耳にするエンゲージメントという言葉。
実際、ビジネスの現場にどう影響してくるのでしょうか?そして、このエンゲージメントはどのように活用するのが良いのでしょうか?
言葉の意味から実際に打つべき施策、成功した企業例まで詳しく解説します。
Contents
エンゲージメントとは?
エンゲージメントとは、従来、「約束」「協約」「契約」といった意味で使われる英単語です。
企業活動においては、「顧客が企業や商品、ブランド、サービスに対してどれだけの好意や愛着心を持っているか」という意で使われています。SNSなどで目にする機会も多いのではないでしょうか。
従業員エンゲージメントとは?
このエンゲージメントという言葉は、組織と従業員の関係性を表現する際にも用いられます。
この時のエンゲージメントは一般的に従業員エンゲージメントと呼ばれます。これは会社と従業員、従業員同士のタテとヨコ双方の信頼関係が築かれている状態を指し、愛着心・愛社精神という言葉でも表現されることがあります。
従業員一人ひとりが組織に愛着を持ち、従業員と企業が一体となってお互いに成長し合い絆を深められている関係をイメージするとよいでしょう。
従業員エンゲージメントを高める効果
実際に従業員エンゲージメントを高めるとどのようなメリットがあるのでしょうか。
一般的には、エンゲージメントを高めると以下のような効果があると言われています。
優秀な人材の流出が防げる
実力に基づいて報酬を決定する会社が増えた今、優秀な従業員であればあるほど、キャリアアップのためにより良い待遇を備える職場に移る傾向があります。
従業員エンゲージメントが高まっている状態は、従業員が企業の目指す方向性を信頼し、愛着心や帰属意識を持っている状態であるため、 優秀な人材の流出を防ぐことができます。
労働生産性が上がる
エンゲージメントが高まった状態では、社員が評価されている実感を持つことができ、会社のビジョンに共感した状態で業務に取り組むことができます。よって、一人ひとりが熱量高く自発的に行動できる環境を作ることができます。
従業員エンゲージメントを高めるために見るべきポイント
従業員エンゲージメントは、大きく分けて8つの領域に分類されると言われています。領域ごとに自社の状態をチェックしていきましょう。
1.組織文化
経営理念や人材ビジョンは明確化されているでしょうか。組織の従業員は組織の目標や目的を意識しているでしょうか。
従業員がこれらの項目について理解しない状態で仕事をすると、各々がバラバラの方向に進んでしまい、強固な組織をつくることが難しくなります。
2.社会的認知度
自社の企業価値、コーポレートブランドは明確化されているでしょうか。それは世間に認知されているでしょうか。
適切に世間に認知される形で企業のブランド価値を高められると、従業員のエンゲージメントも高くなります。
3.仕事
従業員は十分な挑戦機会、権限、裁量を与えられているでしょうか。
これらが満たされている職場においては、従業員はやりがいをもって積極的に業務に取り組むことができます。
4.成長
従業員は自分のキャリアと将来の展望について理解できているでしょうか?定期的に成長機会を与えることは、従業員エンゲージメント向上に重要な要素です。
企業が社員に有効な将来への道筋を示すことで、従業員のモチベーションを高める手助けとなります。
5.人間関係
オープンで正直にコミュニケーションが取れる職場文化になっていますか?透明性のある情報を提供し、従業員が積極的に発言できる環境は、従業員エンゲージメントを高めるために重要です。
効率的な社内コミュニケーションがとれていない際は、企業成長に向けて改善に取り組むべきでしょう。
6.環境
職場を発展させる魅力を保つ環境作りができているでしょうか。長年続く解決すべき誤った慣習はないでしょうか。例えば、生産性を無視した理屈抜きの長時間労働の社風であれば、従業員は疲弊してしまうことも考えられます。
7.評価
従業員がお互いを尊敬し、高め合う文化は形成されていますか?
職場における働き方が多様化する中で、各世代・各グループがお互いの個性を認め、尊重し、お互いを理解することが、ますます重要になってきています。
従業員が世代・グループの垣根を越えて知識・情報・成功体験を積極的に共有したり、適切なフィードバックを与えあうことができれば、より強い組織が生まれます。
8.報酬
従業員がやる気に満ち溢れていて元気な状態であれば、より積極的に仕事に取り組むことができ、生産性も向上する傾向があります。
ワークライフバランスの定義は個々人の捉え方によって変化しますが、各自の生活における仕事とそれ以外の事項へのリソース配分が最適化されていると、健康を維持し充実感を得ることにつながります。
従業員の福利厚生プログラムが機能的に運営されているかも確認すべきでしょう。
従業員エンゲージメントを高める施策
以上のチェック項目を確認したら、改善すべきポイントに絞って施策を打ちましょう。
エンゲージメントを向上するためには、まずサーベイを用いてエンゲージメントを可視化して、低い項目に対してアクションを起こすことになります。
それぞれの領域において、代表的な施策をご紹介したいと思います。
1.組織文化
基本的にはミッション・ビジョン・バリューが作られているかどうか、そして作っていたとしてもそれが浸透させられているかどうかが大事になります。以下のような施策が有効です。
-MVVを作成する
-バリューをピアボーナスに紐づけて、浸透を図る
2.社会的認知度
会社の良いところを社外に発信することが必要となるので、以下のような施策が有効です。
-社員のイベント登壇・メディア掲載
-会社の紹介資料を作成し、公開する
-社会貢献活動の実施及び実施内容を自社HP・説明会等で発信する
3.仕事
仕事のやりがいを創出するには、会社としてキャリアパスの相談や、チャレンジングな目標設定に協力するような制度を創ることが有効です。
-1on1ミーティングを定期的に実施することで、部下の嗜好を知る
-20%ルールを設定して、通常業務以外の業務も担当できるようにする
4.成長
従業員の成長角度を高めるための機会を設定してあげることが必要です。従業員が自らの成長の過程を想像しやすくなるような工夫をしましょう。
-社員研修の機会を設定する
-トレーニングを選定できるようにする
-会社内のキャリアパスを見える化する
5.人間関係
立場や仕事内容が違えば、見える景色も物事のとらえ方も異なるものです。改善すべき点を洗い出し、適切なコミュニケーションの活性化を図ることが必要となります。
-エンゲージメント・サーベイを実施して上司への不満を可視化する
-社内飲み会を定期的に開催する
-性格診断を用いて、部下のタイプ別のマネジメント方法を知る
-OKRを設定する
-シャッフルランチ制度を導入する
6.環境
環境一つで仕事のパフォーマンスは良い方にも悪い方にも変化します。可能な範囲で、従業員が良いコンディションで業務に取り組める勤務環境を整えていきましょう。
-始業時間と就業時間の厳守を徹底する
-フレックスタイム制を導入する
-リモートワークを許可する
-サテライトオフィスを設置する
-従業員を巻き込んだオフィス設計を行う
7.評価
基本的に従業員を認める文化が根付いていないと、組織はギスギスしてうまくいかなくなっていくケースが多いです。まずは承認の文化を取り入れ、その次に適切なフィードバックを行える仕組みを創出しましょう。
-リアルタイムフィードバック制度を導入する
-アワードを設定する
-フィードバックの内容を記録する
8.報酬
場合によっては労働への対価を見直すことも有効です。従業員のモチベーションを引き上げられる制度を模索しましょう。
-給与のアップを検討する
-日毎の支払い制度を導入する
-ストックオプションを支給する
-会社独自の福利厚生を設定する
エンゲージメントを高めた企業の事例
実際にエンゲージメントを高めることに成功した企業の施策事例をいくつかご紹介します。
ココナラ
会社と個人の目標をリンクさせる目標管理メソッド「OKR」を導入して以降、全員が自らの役割と目標を理解した上で業務を進められるよう、期初にマネージャーとの1on1を通した入念なコミュニケーションが実施されています。
目標(Objectives)を決め、その達成のために必要な要素を3?4の成果指標(Key Results)に分解し、進捗をトラッキングしていく目標管理の手法です。
全社→部門→個人の目標を連動させることで、会社と個人の目標をリンクさせることが、OKRの最大の特徴です。
voyage
同社のエンジニア評価では、被評価者が自分の半年間の仕事の中から1つネタを選び、「ビジネスとしてどういう課題があったのか」「それを解決するために、どういう施策を考えたのか」を発表する「技術力評価会」を実施しています。
評価者との90分間の対話を通して、評価の判断軸を明確に伝えることで、評価の納得感を生み、また、被評価者の成長を促進しています。
評価内容をしっかりと文章で書いて、文章で理解してもらった後、フィードバックでも補足しながら、しっかりと「伝える」というところに重点を置いています。
fringe
どうしても、会社の中では「成果を数字で測りやすい人」「声の大きい人」ばかりが評価されがちです。
この課題を抱えていた同社では、「◯◯さんがバグをこっそり潰してました!」というような、目立ちにくい仕事を讃える「発見大賞」というMVP制度をスタート。
さらにその評価を報酬にも反映させるべく、ピアボーナス(成果給)の仕組みを導入しました。
具体的には、従業員が互いにポイントを送り合えるシンプルなシステムを構築し、一定数のポイントを貯めたら、Amazonギフト券と交換できる仕組みを作りました。
実際に施策を運用する際には
上記の例で見てきたように、エンゲージメントを高め社員のパフォーマンスを向上させた企業はそれぞれの組織に適合する施策を編み出して実行しています。
環境や従業員の性質によって打つべき施策は変わってきますので、他社が行った施策をそのまま採用するのではなく、自社にフィットする施策を都度考える必要があります。
自社にこういった上流部分の設計ノウハウがない場合は、業務委託という方法で経験豊富な人事に施策の考案を依頼するのも有効な手段です。
エンゲージメント施策についてのご相談も承っておりますので、業務委託の使用を検討している方は、是非お気軽にお問い合わせください。