CoE(センターオブエクセレンス)という言葉を耳にしたことがある経営者や人事担当者は少ないかもしれません。CoEとは近年注目されている人事戦略の1つです。
CoEを導入したいと思っている方の中には、そもそもCoEの具体的な役割が分からなかったり、どのように導入したら良いのか?など悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
今回の記事では、CoEとは何か、CoEが注目されている理由、役割、導入するメリットをまとめました。
また導入事例もあわせてご紹介しているので、自社にあった導入方法を見つけるヒントにしてみてください。
Contents
CoE(センターオブエクセレンス)とは?
CoE(center of excellence)は「優秀な中心」を指し、目標達成のために優秀な人材、設備、ツール、ノウハウなどを1つの組織やグループに集約することです。特に人事では核となる機能を意味します。
まずはCoEに関心が集まる背景や人事におけるCoEについて具体的に確認していきましょう。
CoEが注目されている背景や理由
近年ではIT化が加速し、ビジネス市場は高度化・複雑化したため、企業は素早い変化に対応しなければなりません。DX(Digital Transformation)の重要性が増し、データ連携をして経営データを上手く活用する必要があるものの、縦割り組織では適切に連携できないのが課題となっています。
そのため組織内の優秀な人材やツールなどを集約して、業務を横断的に取り組むために、企業はCoEに着目しました。
人事におけるCoEの意味
人事戦略として有効な手段であるCoEですが、3ピラーモデル(3つの柱)となる人事の組織モデルは以下の通りです。
- CoE(Center of Excellence):賃金体系を整備し、人材育成を担う
- HRBP(Human Resource Business Partner):人事戦略の側面から経営を支援する
- HRSS(Human Resource Shared Service):給与計算や社会保険手続きなどの労務を行う
上記3つが人事の果たす役割であり、会社の価値を高め社内を改善する効果をもたらします。
CoEに求められる5つの役割
CoEの役割は次の5つです。
- 1.社内知識の収集と整理
- 2.戦略や企画の立案
- 3.フィードバック
- 4.業務プロセスの構築
- 5.社内イノベーションの促進
CoEの役割は広いため、横断型に機能するCoEを構築するように意識することが大切です。それぞれの役割について以下で確認していきましょう。
1.社内知識の収集と整理
1つ目の役割は情報収集と整理です。部署や従業員が持つ情報や知識が全体に共有されていないケースは珍しくありません。しかし、社内の知識を経営層に集めることは経営戦略を立てる上で必要不可欠です。情報を取りこぼさずに収集・整理するためにどのような情報を共有すべきか従業員に理解してもらいましょう。
CoEを導入する際に、集約すべき情報とそうでないものを分けるため、円滑に情報収集が可能となります。
2.戦略や企画の立案
CoEは、経営戦略や企画の立案にあたり、次に挙げるような役割を担っています。
- 組織変革や統廃合
- 分社化・子会社化
- 営業力の強化
- 海外展開
- 関連企業や協力企業との関係強化
- 新製品や新サービスの開発・展開
- 新技術や設備の導入
自社のニーズを汲み取って、必要な立案を行いましょう。海外展開や他社との関係強化もCoEの役割に含まれますが、部署移動や組織変革などの内部施策に役立てる企業が多いです。
3.フィードバック
フィードバックを通して従業員のモチベーションアップを図り、業務改善につなげることもCoEの役割です。
フィードバックで内的動機付けを高めることによりモチベーションが向上し、従業員は目標達成に精力的に取り組むため、業務改善や生産性が上がる可能性を高めます。お金といった外的なものよりも、内的な動機付けは意欲向上の効果がより大きいです。
CoEを導入したら終わりにするのではなく、効果測定をして定期的に従業員へフィードバックを行いましょう。
4.業務プロセスの構築
組織全体の業務を見直し、プロセスを構築するのもCoEの重要な役割です。具体的な施策は以下の通りです。
- 業務の棚卸と不要な作業の廃止
- 業務分担の見直し
- 業務の可視化
- マニュアルのメンテナンス
- 部署間の連携強化
CoEの導入により縦割りな組織を横断的に分析して、第三者が課題に気付き改善を促し、業務プロセスを新たに構築可能となります。
5.社内イノベーションの促進
縦割り組織は所属する部署の知識や技術のみに特化するものの、他の分野に精通していないためイノベーションが起こりにくく、近年は横断型人材が求められるようになりました。
横断型人材とは、さまざまな分野の知識やノウハウを習得している人を指します。この人材を育成するにはジョブ・ローテーションの実施が有効です。あらゆる部署に在籍してさまざまな知識を蓄積でき、部署同士の連携もしやすくなります。
CoEで横断的な組織・人材を育てることが、社内イノベーションを起こしやすい環境整備につながります。
人事分野におけるCoEの役割とは?
CoEが人事で果たす役割には、次のようなものがあります。
- 自社で活躍できる人材の採用
- 適切な人材配置
- 技術やノウハウを集約し、質の高い業務を行える人材の育成
- 人事評価制度の構築と運用
CoEにより、人材育成のエキスパートや成績優秀な営業職の従業員、役職者を横断的に集約するため、「自社が必要とする人物像」を明確化できます。また、ノウハウの共有により、どのような人事評価制度が従業員のモチベーションを上げるか理解を促進し、人事評価制度の見直しに役立つでしょう。
CoEを導入するメリット
ここまではCoEの意味や役割などを説明しました。次に、CoEを導入するとどのような利点があるのか3つピックアップして解説します。
社内の連携が強化される
CoEを導入することで、ルールの整備や体制の再構築が進むため、社内連携が強化されるというメリットがあります。
横断的なチームを作るため、部署や組織の壁を超え、各部署の関係者と直接連携できるので、スピーディーな社内調整が可能です。
情報共有がしやすくなる
1つ目の連携強化により、部署間での情報共有がしやすくなる点もCoEのメリットの1つです。技術を他の部署や事業で共有でき、さまざまなサービスや商品の企画立案も容易になります。
蓄積されたノウハウが社内全員に共有できるよう一元管理する仕組みを作りましょう。
複雑な課題の解決力が向上する
3つ目のメリットは、解決力が上がる点です。たとえば製品を開発する際はマーケティング、開発チームなど複数の部署が関与し、1つのサービスを生み出すのが一般的です。従来の組織であればそれぞれの部署が分かれているため、課題解決や情報共有に時間がかかるため、複雑な問題を解決するのに多くの時間を取られていました。
しかしCoEでは、部署の枠をなくし、知識を集約させるため問題解決がスムーズに行えるというメリットがあります。
CoEの導入事例
CoEはまだまだメジャーな戦略ではありませんが、本章ではいち早くCoEを導入した企業を2つピックアップし、ご紹介します。
資生堂
1つ目は次に挙げる4つのCoEを設立した資生堂です。
- フレグランス
- スキンケア
- デジタル
- メーキャップ
上記4つはそれぞれエリアが分かれており、スキンケア事業は日本、メイクとデジタル事業はアメリカです。またフレグランス事業はヨーロッパを拠点にし、最先端の技術・情報を集められる仕組みとなっています。
事業ごとの連携もスムーズに取れるように体制が整っており、全世界でマーケティングを展開し、ブランド力の強化を図っています。
NTTデータ
NTTデータが運営しているCoEの柱は「学術的な知」と「産業界を牽引する先端テクノロジー」の2つです。
AI事業は人材育成のために知識を収集・整理し、研修や技術のサポートを実施し、IoT事業のCoE拠点を数か国に置き、インフラの整備を進めています。NTTデータはCoEの導入により、グローバルに事業を展開してソフトウェア開発の生産性を上げ、市場の競争力強化を目的としています。
CoEに関するまとめ
CoEを導入すれば、横断的に人材、ノウハウ、設備、ツールなどを集約して円滑な情報共有や解決力の向上につながり企業にとって大きなメリットがあります。
しかし、社内全体のデータを上手く活用するには計画的に進めないと、単発のプロジェクトで終ってしまい、期待している効果が得られない恐れもあるでしょう。
CoEを導入するために、まずは導入事例を調べて自社に適した導入方法は何か、検討することからはじめてはいかがでしょうか。