新入社員研修は、新入社員の育成には欠かせないものです。多くの企業が導入する一方、その実施期間には開きがあります。短いところでは1日、長いところでは数ヶ月と、学ぶ内容や身に着けるスキルもさまざまです。
新入社員研修の適切な期間はどの程度なのでしょうか?
本記事では、新入社員の適切な研修期間や、期間ごとに適したプログラムやメリットを解説するとともに、研修を組み立てる際の流れについて解説します。自社で新入社員研修を導入する場合や見直しを図る際の参考にしてください。
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新入社員研修の平均的な期間は?
新入社員研修の期間は、1週間から1ヶ月、なかには3ヶ月と企業によってさまざまですが、従業員規模が大きくなるにつれ、新入社員研修の期間も長くなる傾向があります。
HR総研が過去に行ったアンケートによると、新入社員研修の実施期間は「1週間」と答えた企業が最多の25%でした。
「3週間以上」実施する企業の内訳では、大企業が63%を占めたのに対して、300名以下の中小企業は約3割となっており、従業員規模と研修体制・内容に相関性があることがうかがえます。
新入社員研修の期間は職種によっても異なる
新入社員研修の適切な期間は、職種によっても異なります。新卒ですでに職種別採用を実施している場合、新入社員研修で業務に必要な知識・スキルを身に着けることが理想的です。
その場合、新卒エンジニアのように、対象のスキルや経験に個人差があるケースでは、レベルに合わせて3週間~3ヶ月といった長い期間を設定することが望ましいでしょう。
接客や販売のような対面業務が重要となる職種の場合、新入社員研修でロールプレイングを通じて学ぶものの、実践で経験を積むことが望ましいと考えられます。そのため、座学の研修を1週間導入し、その後は現場でOJTとしてスキルを身に着けるケースがあります。また、初めから現場で教育担当が実務を教えるOJTのスタイルを取り入れ、短期間で即戦力の育成を行う企業も少なくありません。
営業、カスタマーサクセスといった職種も現場での経験が重要ですが、一方で商品やサービスに関する正しい知識も求められます。メールや電話対応、言葉遣いといった一般的なビジネスマナーを身に着ける必要もあるでしょう。その場合、全体として2週間~1ヶ月程度の研修スケジュールを組み、座学とOJTを組み合わせるやり方が適しています。
新入社員研修の期間ごとの研修内容や得られる効果
新入社員研修の期間を検討する場合、期間によって得られる効果が異なることを踏まえて考えることが大切です。短期間の研修には適していないプログラムもあります。以下に、期間ごとに適した研修内容や得られるメリットについて解説します。
研修期間が3ヶ月程度の場合
現場で働く際にある程度の専門知識が求められる業界では、3ヶ月の研修を行います。例としては、IT業界、製造業界、金融業界が挙げられます。最初の1週間で一般的なビジネスマナーを身に着けたあと、会社や業界、サービスについて学び、後半はより専門性の高いスキルを身につけられる研修プログラムを実施します。
3ヶ月という長い研修期間を設けることで、新入社員は会社に受け入れられているという居場所を感じやすくなります。また、業務で求められる知識を身に着けたうえで、現場に入れるため、業務への不安を減らすことにもつながります。研修期間を通じて配属を決定する方法を取り入れている企業では、3ヶ月の研修期間の間にいくつかの部署を経験させ、新入社員の適性を図ることもできます。
一方で、研修期間が長すぎることで、社会人として仕事へのモチベーションが下がってしまう可能性が危惧されます。「成長している」という実感は、業務を通じてこそ得られるものです。なかには、「早く先輩のようにバリバリ働きたい」と焦る新入社員もいるでしょう。研修期間内に、職場の先輩との交流機会を設けることや、半年・1年といった短期スパンでの成長ビジョンを共有することが大切です。
研修期間が1ヶ月程度の場合
1ヶ月の研修期間は、営業や事務のような座学とOJTを組み合わせる職種に適しています。最初の1週間でビジネススキルや、社会人としてのビジネスマインドを学び、残りの時間をOJTに当てます。
1ヶ月程度の研修の場合、学びと実践をちょうどよく組み合わせることができます。そのため、新入社員も短期間のなかで成長を感じやすい点がメリットです。また、現場に早く出ることから、新入社員の職種に対する適性を早いうちから把握することができます。
ただし、従業員によっては1ヶ月の研修では、一人前として現場で働くことに不安を感じる人もいます。3ヶ月後・半年後というように、期間を区切ってフォローアップ研修を実施したり、現場に配属されたあとの教育体制を確立したりすることで、新入社員のレベルアップを継続的に行えます。
研修期間が1〜2週間程度の場合
研修期間が1週間~2週間というケースは、ビジネスマナーを身に着けたあと、できるだけ現場で経験を積んでほしいという企業に適しています。現場の実務を通じ、成長していくことが求められるような販売や調理という職種で取り入れられます。
また、業界に限らず、「バディ制度」のような先輩社員が新入社員を1対1で指導する形式を取り入れている企業では、研修期間をあえて短く設定し、残りは現場で慣れながら学んでいくスタイルを取ることが多いです。
1週間や2週間の研修は、学生から社会人へ意識を切り替える期間として有効活用できます。また、最低限のビジネススキルやマナーを身につけるのにも向いています。
研修期間が短期の場合は、配属後のOJTで丁寧に知識やスキルを教え、新入社員の成長をフォローすることが重要です。
新入社員研修の期間の決め方
新入社員研修を過去に行った実績があれば、そのフィードバックをもとに期間を設定するのがいいでしょう。新たに導入するという場合には、目的や予算にあわせて検討する必要があります。以下に、一般的な新入社員研修期間の決め方について解説します。
研修の目的とゴールを設定する
まずはじめに、研修の目的を設定します。研修が終わった後、新入社員にどのようになっていてほしいかという「ゴール」を明確にすることで、適した期間・プログラムを考えることができます。
たとえば、「エンジニアチームの一員として働ける」がゴールであれば、研修中に使用言語やインフラについてなど、業務に求められる知識・スキルを習得させる必要があるでしょう。「会社のサービスについて理解してほしい」がゴールであれば、事業説明やサービスのメリットの座学と共に、お客様の声を聴く現場での経験が必要となるかもしれません。
はじめにゴールを言語化することで、その後の期間設定・プログラム内容の決定がスムーズになります。
研修の内容を決める
ゴールにあわせて研修内容を決定します。新入社員研修には、一般的なビジネスマナーを身に着けるもの、社会人としてのビジネススキルを学ぶもの、会社や事業・サービスについて学ぶもの、職種の専門知識を学ぶものなど、さまざまなプログラムがあります。
数日や数時間という短期が適したプログラムもあれば、1週間単位で行うのが望ましいプログラムもあります。ゴールにあわせて、プログラムの優先順位をつけることで、適切な研修期間を考える参考になるでしょう。
研修内容ごとにかかる期間を算出・合計する
大まかな内容を決定したあとは、プログラムごとに必要な期間を算出します。入社後から1日ごとの流れをシミュレーションすることで、親友社員の成長イメージを描くことができます。必要に応じて、プログラムを削ったり、順番を入れ替えたりすることも必要です。
必要に応じて調整する
ある程度内容が整ったら、関係部署の意見を聞き調整を行いましょう。現場でのOJTや、先輩社員が研修に参加するようなプログラムがある場合には、早い段階からの調整が必要です。また、集合研修などは、研修会場への移動時間なども忘れずに加味する必要があります。
新入社員研修の準備期間は?
研修の準備期間は、企業によって異なりますが、半年~3ヶ月というのが一つの目安です。とくに、はじめて新入社員研修を導入するケースでは、早い段階から準備を行う必要があります。
準備の段階で注意しなければいけないのが、「外部との連携」です。たとえば、外部講師を依頼する場合、4月のような新入社員研修シーズンは、講師のスケジュールが埋まっているケースが珍しくありません。早い段階からコンタクトをとることで、研修スケジュールへの影響を抑えることができます。また、外部会場や宿泊施設の手配が必要な場合も同様のことがいえます。
さらに、社内の他部署との連携にも注意が必要です。先輩社員やマネジメントクラスが研修に参加する場合には業務との調整が必要となるため、早めに具体的な依頼を行いましょう。現場でのOJTを想定している場合には、各部署・チームの教育係の選定のほか、教育係との研修内容のゴールの共有や、教育係そのもののスキルアップが必要になることもあります。
新入社員研修の主な内容とかかる期間
以下に、新入社員研修で取り入れられる代表的な3つのプログラムについて、その内容と一般的な期間を紹介します。研修プログラムを組み立てる際の参考にしてください。
マインドセット研修
マインドセット研修とは、新入社員に対して、学生から社会人への意識の切り替えを行い、仕事へのモチベーション向上を目指す研修です。マインドセット研修を行うことで、働く目的を明確にし仕事への主体性を高めるという効果が期待できます。
マインドセット研修のポイントは、セルフマネジメントのスキルを身に着け、他責思考から脱却する点にあります。「会社のせいで仕事がつまらない」という考えではなく、「成長のためにどんな仕事ができるのか?」という思考に切り替えることを目指します。また、マインドセット研修は、会社のビジョンやミッションを浸透させるのにも適しています。
プログラムの期間は、1日~数時間と短めです。
ビジネスマナー研修
ビジネスマナー研修では、一般的に社会人が必要とされる基本マナーについて学ぶ研修です。新入社員が早くからビジネスマナーを身に着けることで、企業のイメージ向上、顧客や取引先の満足度向上が期待できます。
ビジネスマナー研修の内容には、「身だしなみ」「業務での言葉遣い」「名刺交換」「電話対応」「メールの書き方」などがあります。研修で基本的なマナーを学ぶことで、新入社員は現場で顧客対応をする際の不安を減らすことができます。
プログラムの期間は数時間~1週間が一般的です。
コミュニケーション研修
コミュニケーション研修とは、業務に適したコミュニケーションのあり方を学び、スキルを向上させる研修です。社会人としてふさわしいコミュニケーションを行うことで、業務の作業効率や生産性をアップさせることが狙いです。基本的な話し方・姿勢といったビジネスマナーを身に着けたうえで、適切な話し方や聞き方をロールプレイングを通じて学ぶ研修といえます。
「話し方」「聞き方」といっても、多くのスキルが求められます。相手の言っていることをしっかりと聞くことが、顧客の要望に応える第一歩であることを新入社員に自覚してもらいます。相手の心をつかむ話し方や、相手の話を聞く方法に早くから触れておけば、その後も組織内でのコミュニケーションをスムーズにとることができるでしょう。
コミュニケーションの研修期間は、数時間~1日が一般的です。
新入社員研修期間を決める際のポイントや注意点
研修期間を検討する際は、欲張りすぎないことが重要です。以下に、検討する際のポイントについて解説します。
長すぎる研修や内容の詰め込み過ぎに注意
新入社員のスキルアップを考え、アレもコレもと盛り込むのは注意が必要です。内容を詰め込みすぎてしまうと、一つのプログラムでの学びが浅くなってしまう可能性があります。また、さまざまな種類の研修を行っても、目的と沿っていなければ新入社員が混乱してしまうかもしれません。研修疲れとならないよう、プログラムの優先順位をつけ、優先度の低いものは思い切って削除するという調整が重要です。
また、1日のプログラムのなかで、適度な休憩時間を設けることも忘れないようにしましょう。
研修手法ごとに適切な期間を設定する
座学やOJTなど、研修手法・内容によって適切な期間を設定しましょう。座学で学ぶ研修が長く続くと、学生のように「教わっているだけ」となってしまい、社会人としての主体性が育ちにくくなります。また、現場に配属されても、先輩のあとを追っていくだけだと成長の実感がつかめません。
座学研修は数日~1週間程度など期限を設け、社会人としての実践を積めるよう研修内容を工夫しましょう。専門知識の習得が必要とされるケースでは、座学研修の重要性を共有することでモチベーション維持を図ることができます。
外部講師への依頼も検討する
社内リソースが不十分な場合には、外部講師の依頼も検討しましょう。外部講師に依頼した場合、プログラムごとに専門性の高い研修を実施できる点がメリットです。外部講師のスケジュールによっては、研修のプログラムと合わない可能性もあるため、早めのコンタクトが大切です。
研修後にはフォローアップ研修も実施する
フォローアップ研修とは、新入社員の本配属後に実施するもので、研修の振り返りを行うと共に、課題の洗い出しが目的となります。研修終了後から3ヶ月後・半年後など、期間を区切って行われます。フォローアップ研修では、社員が抱えている課題や、実感できている成長、今後の目標について話をします。また、新入社員同士の交流機会を設けるなど、モチベーションアップも図れます。
新入社員研修期間中の社員の給料は?
研修中の給料は、特段明示してあるケースを除き、入社当初に決められた給料が支払われます。新入社員研修で休日や業務時間外にプログラムが設定されている場合でも、強制参加であることから労働と判断され、給与が発生するのが一般的です。
研修期間中のみ、給与の設定額を変えるケースや、自由参加の研修を行い給与の支払いはなしとするケースもゼロではありません。しかし、労働とみなされる場合には給与が発生するため、慎重な対応が求められます。
新入社員の研修期間に関するまとめ
新入社員研修の適切な期間は、職種や指導体制によって異なります。専門知識やスキルが現場で求められる職種では、比較的長い研修期間が設定されています。現場での経験が成長につながる場合、研修期間は短めに設定されることが多いです。
研修のゴールを明確にしたうえで、研修プログラムごとの期間やメリットを参考に、適切な研修期間を設定しましょう。