労働力人口の減少にともない、人材育成の重要性がさらに高まっています。従業員を優秀な人材へ導くには、まず管理職である人材が、スキルを身に付ける必要があります。では、管理職はどのようなスキルを習得すべきなのでしょうか?
この記事では、管理職の育成を考えている方に向け、管理職に求められる3つのスキルを解説します。また管理職に求められる素質や、管理職がスキルを習得する方法についても取り上げているので、ぜひ最後まで読み、参考にしてみてください。
Contents
そもそも管理職の役割とは?
管理職の役割は主に、「業務管理」、「人材育成・マネジメント」、「現場と経営層をつなぐ橋渡し」の3つです。管理職は決裁権を持っており、部長や次長、課長、マネージャーなどが該当します。業務に関する判断全てを経営層が行うのは難しいため、決裁権を委譲された管理職が現場を指揮し、経営目標の達成を目指します。
業務管理をする
管理職は自身の業務に加えて管轄するチーム全体の業務進行を管理しなければなりません。たとえば、業務遂行の方法やスケジュール管理、進捗の把握、業務の割り当てといった仕事も、管理職の業務に含まれます。部下が保有するスキルや経験を踏まえ、成長を促すような業務の割り振りを行い、時には業務工程の見直しや改善をして、業務全体を管理します。
部下の育成やマネジメント
2つ目の役割は、業績向上と従業員のキャリアプランをすり合わせた、人材育成・マネジメントの実施です。働き方に対する価値観は従業員一人ひとりによって異なります。部下のモチベーションを維持するには、部下が望むキャリア観を理解した育成計画の立案が重要です。効果的に部下の育成・マネジメントを行うために、まずは従業員に適した目標を設定しましょう。目標を明確にする際は、「SMARTの法則」を活用するのがおすすめです。
「SMART」とは、以下を意味します。
- Specific(分かりやすい)
- Measurable(計測可能)
- Assignable(誰に対しても割り当てられる)
- Realistic(実現可能な)
- Time related(期日が明確な)
実現が困難・簡単な目標や、数値として把握できないものは、達成しても満足感や達成感を得にくいです。管理職はSMARTの法則を使い、従業員のモチベーションアップにつながる目標設定を心がけましょう。
社員と経営側の橋渡し
経営理念やビジョンを現場に浸透させるのも、管理職の重要な役割です。人材が優秀であっても、組織の理念や方針を理解していなければ足並みが乱れてしまい、チームの結束力が弱くなります。チームの業績や従業員の能力を活かすには、全員が一丸となって、同じ方向を向かなくてはなりません。チームの意識をまとめるために、管理職が経営層の掲げる経営理念や方針を正しく現場に伝える必要があります。管理職は日頃からチャットやメールといったツールを使い、部下に理念・方針を共有して、組織の求める行動を促しましょう。
管理職に求められる3つの能力・スキル
管理職の役割を果たすには、大きく分けて次の3つの能力・スキルが求められます。
- 1.テクニカルスキル(業務遂行能力)
- 2.ヒューマンスキル(コミュニケーション能力)
- 3.コンセプチュアルスキル(概念化能力)
上記は、ハーバード大学教授であるロバート・カッツが提唱した「カッツモデル」を構成しているスキルです。ここからは、3つのスキルについて詳細を解説します。
1.テクニカルスキル(業務遂行能力)
業務を行う上で必要になる知識・技術をテクニカルスキルと言います。たとえば、営業職であれば商品に関する知識はもちろんのこと、プレゼン能力や市場に関する知識のことです。また技術職であれば、機械を操作する専門的な技術や知識など、業界によって必要なテクニカルスキルは異なります。テクニカルスキルが最も要求されるのは、主任や班長といった下級管理職です。
ポジションが上がっていくと、知識・技術に関する業務は部下に託し、チーム全体のマネジメントを担うので、上級管理職になるほどテクニカルスキルの重要度が下がる傾向にあります。
2.ヒューマンスキル(コミュニケーション能力)
ヒューマンスキルとは、対人関係を良好に保ち維持するのに必要なスキルを指します。具体的なスキルを、以下にまとめました。
- リーダーシップ
- コミュニケーション
- 動機づけ
- リーダーシップ
- ファシリテーション
- プレゼンテーション
- 交渉力
- 調整力
上司や部下、クライアントと信頼関係を構築し業務を円滑に遂行するには、相手をよく観察し、状況に適した働きかける力が欠かせません。そのため、全ての階層の管理職にヒューマンスキルが求められています。
3.コンセプチュアルスキル(概念化能力)
コンセプチュアルスキルとは、事柄の本質を理解し判断するために必要なスキルです。たとえば、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングといった思考に関するスキルや、柔軟性や応用力など、状況を冷静に見極め、最適解を導くときに使うスキルを指します。
物事の表面に着目するのではなく、概念化して本質を把握することで、適切な解決策を講じられます。上級管理職で特に重要視されているスキルです。
管理職に求められる資質とあるべき姿
ここまでは、管理職に求められる3つのスキルについて説明しました。管理職の業務範囲は広く、業務を遂行する力以外にもさまざまな役割を担っています。本章からは、管理職としてどのような資質が必要なのか、また、どのような姿を部下や上司へ見せるべきか解説します。
経営視点を持っている
現場のやり方や考え方が、組織の意図と異なる場面もあるでしょう。管理職は経営層の意思を現場へ伝える橋渡しとして、経営視点を持ち、チームの行動を決定する力が必要です。問題解決の際に、経営者の目線を取り入れることで、自身に求められている役割を果たすことができ、上司や部下からの信頼を得やすくなるでしょう。
リーダーシップと責任感を持ち合わせる
チームの先頭に立って行動する力と、行動にともなう結果に責任を持つことも、管理職に求められる資質です。チームが目標を達成できなかったり、失敗したりしたときは、フォローしなければなりません。なぜ上手くいかなかったのか、冷静に問題を把握し、必要に応じて謝罪の場に行くなど、指揮監督者としての責任を果たす義務があります。
職場の雰囲気作りができる
管理職は適切なコミュニケーションをとり、従業員が働きやすい環境を作るよう取り組みましょう。たとえば、定時に退社しやすいよう上司自らが定時で帰り、相談しやすいような関係を作るなど、職場の雰囲気をよくする工夫をします。職場環境を改善するために、自身が積極的に行動を起こして部下に示すことも、管理職のあるべき姿の1つです。
論理的に考えられる
管理職はロジカルシンキングで結果と原因を解析し、業務を遂行しなくてはなりません。ロジカルシンキングで本質を捉えることは、トラブルの解決や最適な意思決定に有効です。また、部下に分かりやすく指示を出すにもロジカルシンキングが役に立ちます。場当たり的な感情論ではなく筋道の通った説明をすれば、指示が的確に伝わり、円滑な業務遂行につながります。管理職は論理的に考え、論理的に伝える力を習得しましょう。
意志が強く行動力がある
部下の手本となるには、上司である管理職が意思を強く持ち、行動で示すことが重要です。強い意思を持って先陣をきっている上司を見れば、部下からの尊敬が得られ、信頼されやすいでしょう。部下の成長を促すために、管理職の意気込みを見せ、日常から行動する姿勢を見せることも、管理職としての素質の1つです。
管理職に求められるスキルを習得するには?
管理職の肩書きがあっても、スキルは一朝一夕で身に付きません。管理職に必要なスキルを習得する方法を押さえておくことで、効率良く力を身に付けられます。次に、スキル習得のタイミングや方法についてお伝えします。
仕事の経験から学ぶ
能力を養うために、プレマネジメントの経験を積んだり、リーダーシップが必要な場に立ったり、経験値を重ねることがスキル習得に効果的です。いきなり管理職のポジションを与えられても、緊張から本来の実力を発揮できないケースもあるでしょう。実体験を通して予習をさせておき、その都度フィードバックをして気付きを与えることで、管理職としての力を磨くことができます。
管理職研修を活用する
業務だけでスキルを完全に習得できない場合は、管理職向けの研修を活用するのもおすすめです。不足しているスキルを補完できるカリキュラムを選択し、外部講師の研修を利用すれば、無駄のないスキルアップが可能です。研修方法は管理職の業務をひっ迫しないタイミングで行いましょう。
管理職を育成する為に企業ができること
管理職自身だけでなく、会社がフォローして、管理職を成長させることが大切です。管理職を育成するには、セミナーや研修の実施、eラーニングの導入、フィードバックの提供などを行いましょう。管理職の育成を成功させるポイントなど、管理職育成について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
管理職に求められる能力に関するまとめ
人材育成に注目が集まり、管理職の育成は今後ますます重要になっていきます。今回は管理職に求められるスキルについて解説しました。従業員の育成をするには、担当となる人事担当者や管理職の育成を先に進める必要があります。まずは管理職をどのように育成したいか、求める管理職の人物像を明確にして、育成に取り組んではいかがでしょうか。