IT分野におけるCoEとは?役割や重要性をわかりやすく解説

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企業のリソースを一カ所に集中させるCoE(センターオブエクセレンス)は、近年IT化が加速し、デジタルトランスフォーメーションが注目される状況において、その重要性を増しています。ここでは、CoEとは何かの基本を解説すると共に、DX推進やクラウド活用が叫ばれる時代においてCoEが担う役割を紹介します。

そもそもCoE(センターオブエクセレンス)とは?

CoE(center of excellence)とは、近年注目を集めている企業戦略の一つです。「優秀な中心」を意味する言葉で、企業などで組織内を横断的に活動する拠点を指します。CoEとなる拠点は、場所に限らず部署やグループ、チームを指すこともあります。

企業でCoEが注目される背景にあるのは、加速するIT化です。高度化・複雑化したビジネスシーンに対応するには、企業はデジタルトランスフォーメーション(DX化)に取り組み、経営に必要なデータを横断的に扱う仕組みが求められます。そうした状況では、社内の知識を集約し、整理した上で戦略や企画に活かす機能が必要であり、その役割を担うのがCoEなのです。

CoE(センターオブエクセレンス)とは?意味や役割、導入するメリット

CoEの役割と導入するメリット

CoEが重視されるのは、従来の縦割り型組織では不足する点を補い、イノベーションを生む流れが期待できるからです。経営者や人事が中心となり、社内の優秀な人材やその分野のエキスパートを集め、CoEの活動に継続的に取り組むことで、柔軟性が高く適応力に優れた組織を育てることができます。

CoEの役割

CoEは主に以下のような役割を担います。

  • 社内知識の収集と整理
  • 企業の戦略・企画立案
  • 企業全体の業務改善プロセスの立案
  • 社内のイノベーション促進

CoEと呼ばれる部署やグループ、またはトップレベルの人材たちは、社内知識の収集と整理を行う役割を担います。また、集約した情報をもとに企業の戦略立案に関わり、時には各部門やチームにフィードバックを行い、組織としてのモチベーション維持に働きかけます。このように、組織に横断的に関わると共に、企業全体の業務改善を助けたり、社内でのイノベーションを促進させる効果も期待できます。

CoEの役割は、特定の一つに限定されるわけではありません。部門の壁を越え、つながりを作りながら動く「中心」があることで、組織全体としての生産性向上や競争力アップが期待できるのです。

CoEを導入するメリット

CoEを導入することで得られるメリットには、次のようなものがあります。

  • 社内の連携強化
  • 社内コミュニケーションの活性化
  • 情報の可視化・共有のスピード向上
  • 業務の効率化
  • 複雑な課題解決

メリットの代表的な一つが、社内の連携強化です。各種データの保存とアクセス経路を整備したり、社内で導入する新規サービスを多方面から検討したりと、組織にプラスの効果をもたらす取り組みを推進できます。

また、情報共有がスムーズになることで、新規企画の立案、コミュニケーション活性化、コスト削減といった、メンバーが横断的に関わることで生まれるメリットを享受できるでしょう。

従来であれば、各部署がそれぞれに保有する知識や技術で対応していた問題も、横のつながりができることで、より効果的な対策や複雑な問題解決が可能になります。

IT分野におけるCoEの役割と重要性

CoEの役割と重要性が高まっている分野の一つがITです。新たなシステムの導入にせよ、新規プロダクト開発にせよ、組織のシステム化を進めていくなかでは、複数のタスクやプロジェクトが同時並行で進みます。

その際、専門性の高い人材を、組織に横断的に配置することで、より効率的な運用や導入を図るのが、IT分野におけるCoEの働きといえます。

たとえば、世界規模でCRM(顧客管理システム)を提供するセールスフォースでは、一つのアプリケーション開発にあたり、CoEの役割を解説するなかで、CoEとは「一人の人材ではなく、複数のリソースをもってチームや組織で担う」「個々のプロジェクトチームではなく、プログラムチームになる」点を強調しています。

とくに後者の部分は、要件定義・設計・開発・テストと複数のフェーズを持ち、多くのプロジェクトが集まりプロダクトを構成するプログラムが出来上がるというIT分野の特性を鑑み、CoEの働きを考えるうえで無視できない点といえます。

またアプリ開発などIT分野に限らず、企業がシステムの導入を行うデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する際も、CoEの役割が重要になります。データとデジタルを最大限活用し、これまでのビジネスモデルを変革するには、業務とITと垣根を超え、社内の複数の部署を横断することが必要です。そのデジタル戦略を実行する役割をCoEが担います。

参考:COEってご存知ですか?

CoEから「DCoE」や「CCoE」へ

前述のように、CoEの役割が注目される背景には企業の急速なDX推進の動きがあります。

とくに近年は新型コロナウイルス感染症の影響で、人々の行動様式が変化したこともあり、多くの企業がDX化に舵を切っています。ECサイトの充実やオンライン接客の導入、建設現場で活用する図面共有アプリや、デジタル署名が可能となるオンラインの契約書システムなど、企業が取り組むDX化にはさまざまな種類があります。

DX推進には、それまで部署ごとに分断されていた基盤システムを統合したり、運用にあたって各部署と調整したりといった役割が求められます。また、これまで使ったことのないシステムを業務でスムーズに導入できるよう、社員への教育研修も必要です。

そしてDX推進で重要になるのが、DX化により「自社の課題解決につながったか」「目標を達成できたか」という点です。業務効率化のためのシステムを導入しても、現場で一部の社員が使うだけに留まってしまうこともあります。システムで膨大な顧客データを収集したにもかかわらず、効果的にビジネスに活用できていないケースも少なくありません。

こうした課題を解決し、DX推進で中心的な役割を果たすよう期待されるのがCoEです。DX化に向けて、企業のトップやプロジェクトリーダーが明確な目標を持ち、強いリーダーシップを発揮すると共に、優秀な人材を集め組織体制を強化します。

デジタルやクラウドツールの活用を牽引する存在として、「デジタル・センター・オブ・エクセレンス(DCoE)」や「クラウド・センター・オブ・エクセレンス(CCoE)」と呼ばれる組織を置く企業もあります。

DX化が必須となる昨今、CoEの重要性は今後も増していくといえるでしょう。

CoEの導入に必要なこと

CoEの役割を導入するにあたって重要なのは、はじめから完璧な組織を目指さないことです。企業規模によっては、CoEに必要な人材がそろわないこともあります。その場合、小規模でCoEを構築する方法もあります。また、人材を選任し育成する観点も重要です。

その点を踏まえ、CoEの導入では「はじめの人材定義」「人材のダイバーシティ」がポイントとなります。

理想の人材の定義

CoEの目的を明確にした上で、その目的を果たすために理想となる人材を定義します。CoEとは、各部署とは違う働きが期待されています。そのため、部署のエースであったとしてもCoEに期待される役割には適していない可能性があります。

単純に部署や分野のエキスパートを選任するのではなく、CoEとしての理想の人材像を定義し、そこから選任を行うほうが組織としてスムーズに役割を果たせるでしょう。また、理想の人材に求めるスキルと、現実に選任した人材のスキルにギャップがある場合があります。その際は、「必須のスキル」「あったほうがいいスキル」というようにスキルに優先順位をつけ、教育を進めましょう。

ダイバーシティの促進

CoEは組織内で横断的に関わる役割を持ちます。そのため、年齢・役職・スキル・性別などに制限をかけず、多様な人材を受け入れることが不可欠となります。また、CoEのダイバーシティを高めることは、特定の部署や役割の人への負担の偏りを避けることにもつながります。

CoEの業務は、通常の業務と平行して進められることが一般的であり、特定の部署や部門からCoEを編成した場合、労働時間や心理的負荷がかかってしまうリスクに注意しなければなりません。

IT分野におけるCoEに関するまとめ

CoEは企業のさまざまなリソースを一カ所に集約し、イノベーションの創出、業務効率化などの役割を担います。とくに近年主流となったDX推進を企業が進めるにあたっては、複数の部署をとりまとめる中核的な役割を果たします。

CoEの役割をうまく機能させるには、その本来持つべき役割が全社的に理解されることが重要になります。なぜCoEを導入するのか、その目的を明確に設定するとともに、全社で周知を行いましょう。

また、CoEの役割をもとに必要な人材像を定義し、育成の観点を持ちながら組織を編成することが、プロジェクトの成功につながるでしょう。