センターオブエクセレンス(COE)の導入がRPA自動化戦略に重要な理由

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近年、定型業務を自動化するRPAが注目を集めています。30分かかる定型作業を3分に短縮するといった、劇的な効果が期待できるRPAですが、単なるツールで終わらせずに、経営戦略的なメリットを享受するには、社内でRPAの導入を牽引する存在が必要になります。

この記事では、業務自動化を検討している人のために、RPAについて基本情報を解説するとともに、導入を進めるうえでのパターンと、重要な役割を果たすCoEについて紹介します。

RPAとは?注目されている理由

RPAとは、ロボティックプロセスオートメーション(Robotic Process Automation)の略称で、これまで人間のみが対応できるとされてきた業務を、AIや機械学習などの技術を駆使して代行する取り組みを指します。

RPAの主たる機能は、人がパソコンで行っている作業を、人が実行するのと同様の形式、もしくはそれよりも高度なやり方で「自動化」するというものです。たとえば、以下のようなバックオフィスが行う作業は、RPAが得意とする領域です。

  • データの登録・転記
  • システムの管理
  • ウェブサイトからの情報収集
  • 複数のアプリをまたがる操作
  • データの同一性や社内ルールに合っているかのチェック

近年、このRPAが注目を集めている理由に、自動化にかかる労力が少ないという点があげられます。RPAでは、わかりやすいユーザーインターフェースで直感的に作業し、自動化のための登録を行えるため、多くのケースで専門的なプログラミング知識を必要としません。また、従来のシステム開発と比較してRPAは導入に費やす時間が短く、組織がメリットを即座に享受できます。

こうした特徴を持つRPAは、労働人口の減少や、働き方改革で長時間労働の解消・業務効率化という課題に直面する日本企業の間で急速に浸透しています。RPAで操作可能なウェブアプリケーションや仮想環境などが多様化したことも、RPAが広まる要因となっています。

センターオブエクセレンス(CoE)とは?

CoE(center of excellence)とは、「優秀な中心」を意味する言葉で、企業などで組織内を横断的に活動する拠点を指します。拠点に限らず、優秀な人材や専門知識を持つエキスパートを集め、特定のプロジェクトに対して編成したチームの形をとることもあります。

RPAを導入する場合、たとえば個人がエクセルのマクロなどを活用し、自分が日常的に行う作業を自動化する分には、閉じた運用となり大きな問題は生じません。しかしながら、組織的にRPAを活用し部署単位で業務効率化や生産性向上などを目的にする場合、RPA導入プロジェクトを牽引する存在が必要となります。その役割を担うのが「CoE」です。

RPA導入でのCoEは、具体的には以下のような役割を担います。

  • RPA導入目的の明文化・計画立案などのプロジェクトマネジメント
  • RPAの対象となる業務の整理と優先順位付け
  • 環境設計や構築、運用監視などのITインフラの整備
  • 社内のヘルプデスク
  • セキュリティ対策
  • 教育と啓蒙

チーム全体や部署全体、または複数部署に導入するといったRPAでは、プロジェクトの目的を達成しきちんと成果が出せるように、現場と経営陣をつなぎ中心的役割を果たすCoEが求められるのです。

CoE(センターオブエクセレンス)とは?意味や役割、導入するメリット

RPAを導入する3つの方法

RPAの導入でCoEは重要な役割を担いますが、必ずしもCoEを編成しなければいけないわけではありません。ケースにあわせて、現場主導のRPA導入を行うこともできますし、両者の中間をとることも可能です。以下に、RPAを導入する場合の3つのパターンについて解説します。

現場の人間がPRA開発を行う

現場が主導してRPAの開発、導入を行うスタイルです。「部門主導型」や「草の根導入」と呼ばれることもあります。

このパターンでは、RPA化の要求、設計や開発、単体テスト、運用保守、コンプライアンス監査といった大部分を現場が主導で実施します。RPAの対象となる業務の担当者や担当部署が業務の合間で開発を行うようなケースを指します。全社的な業務よりも、身の回りの業務を自動化する場合に適した方法です。

現場担当者や部門に高いITリテラシーがあれば、短期間で導入労力を低く実施できます。ただし自動化の品質が、開発を主導する部門や担当者のスキルに依存する点に注意が必要です。

専任チームが自動化開発する=CoE導入

専門チームがRPA導入を主導するパターンは、「CoE主導型」や「CoE導入」と呼ばれます。

現場部門からRPAの対象とする業務をヒアリング、もしくは専門チームが全社横断的に導入効果の高い業務を選定し、専任スタッフが開発を実施します。スキルセットの高い人材が開発を主導するため、高品質で高性能なRPAを開発でき、横展開も期待できます。

ただし、CoE導入には、開発・運用・保守・教育とすべてを担える人材が必要です。求められる人材が揃わない、少人数で編成しなければいけないというケースでは、逆にCoEのキャパシティがRPA導入の障壁となる可能性もあります。

両者のハイブリッド

部門主導型とCoE導入の両者を取り入れるハイブリッドのパターンもあります。この方式では、RPAの対象となる業務の選定や開発を部門が担当し、CoEが運用やコンプライアンス管理、トレーニングなどを担います。CoEが一貫性を持ち主導をしながら、現場の知見を活かすことができます。

ただし、役割分担が曖昧にならないよう、最初の段階で明確にしておくことが大切です。

COEが自動化戦略に重要な理由

RPAを単なるツールと捉えてしまうと、全社的や部署をまたいだ大規模な導入では、十分な効果を発揮できない可能性があります。経営戦略的にRPAをどこに位置づけるのか、導入の目的を明確に定めることが必要です。そのためには、現場、経営、ITの領域すべてを把握し横断的に動く役割が求められます。

RPAの開発だけでいえば、適したスキルを持つ可能性が高いのはIT部門の人材です。しかしながら、現場のことや経営については、専門外となってしまうこともあります。そのため、RPA導入プロジェクトを実施する際は、IT部門だけではなく他の部門から人材を集めるなど、中心的な役割を果たす組織を編成する必要があります。

このことから、RPAを戦略的に実行するにはCoEの先導が欠かせません。

ただし、CoEのような専任チームを作るには、チームメンバーが通常業務と兼任する形になる点を考慮しなければいけません。専任チームをわざわざ作る価値があるかどうか、自動化するべき業務の量や、自動化によって得られるメリットの情報を集めたうえで検討しましょう。

まとめ

働き方改革や採用難など、ビジネスシーンの移り変わりにあわせて、業務を自動化し効率化や生産性向上に貢献するRPAの重要性は、ますます増加していくでしょう。

RPA導入にあたっては、対象となる業務やその範囲を明確にし、プロジェクトを進めるに必要な労力を分析します。導入範囲が広い場合などは、CoE主導で行うことが、自動化の効果を最大限活用することにつながります。