近年注目され始めているスクラム採用ですが、今までの採用とは何が違うのでしょうか?
スクラム採用は従業員が共通のゴールを理解して、同じ方向を目指して取り組まないと、期待している効果が得られないため事前に概要を押さえて活用する必要があります。
本記事では、スクラム採用を検討している経営者・採用担当者向けに、スクラム採用の概要、メリット・デメリットなどの基本的な情報をお伝えします。またスクラム採用を成功させるポイントや、具体事例、おすすめの採用管理ツールもご紹介しているので、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
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スクラム採用とは?
スクラム採用とは「経営者や役員だけではなく、従業員も一丸となって行う採用手法」のことです。従来の採用活動では採用の担当者が母集団形成、書類選考、面接などを行い、現場の従業員は面接などの選考に部分的に関わるだけで、ほとんど採用活動に参加することはありませんでした。
一方でスクラム採用は、経営者や人事に加え、現場の従業員も主体となり、人材の確保を目指します。
まずはスクラム採用の構成要素やリファラル採用との違いなど、具体的な概要をみていきましょう。
スクラム採用を構成する3つの要素
スクラム採用は、次の3つで成り立っています。
- 権限委譲
- 成果の可視化
- 採用担当のPM化
以下で詳細を解説します。
1.権限委譲
1つ目の要素は要素は権限委譲です。採用活動は求める人物像の明確化、採用計画の立案、募集、選考を人事の担当者や経営者が行っていました。しかし、スクラム採用では、採用活動の業務を分解し、細かく分けた業務の権限を採用担当者以外の従業員にも委譲します。
権限委譲により人事以外の従業員も採用のPDCAを回すことができ、現場主体の採用活動が実現可能となります。
2.成果の可視化
次の要素は、採用活動の成果を共有し可視化することです。活動によって得られた効果を採用担当者が振り返り、社内の従業員全員にフィードバックします。たとえば、辞退率や応募者数、歩溜まり、コスト、時間などが採用活動の成果に関する情報です。
3.採用担当のPM化
採用担当者がPM化(プロジェクトマネージャー、またはドメインプロフェッショナル)できていることも、スクラム採用の重要な要素の1つです。
採用担当者はスクラム採用を成功させるために、採用活動全体のPMとなってマネジメントやコントロールを行い、採用に関する知識を現場に浸透させなくてはなりません。従来の採用と異なり、スクラム採用は従業員全員が採用活動に取り組み、採用担当者は採用プロジェクトのマネジメントをする存在という位置づけです。
リファラル採用との違い
リファラル採用は「従業員が知人を紹介して選考に参加してもらう」仕組みを言います。リファラル採用も現場の従業員が採用活動に参加しますが、活動範囲は母集団形成に限定されている点で、従業員が採用活動全体に参加していくスクラム採用とは大きく異なります。
スクラム採用が注目されている理由
なぜ今までの採用活動から、従業員がチーム一丸となって採用を行うスクラム採用が注目されるようになったのでしょうか。本章では、スクラム採用が話題となっている背景を4つピックアップし説明します。
採用方法が多様化しているから
1つ目の理由は、採用活動を最適化するためです。IT化に伴い、マッチングサービスや特化型求人サイトが登場し、SNSやエージェントを活用するなど、さまざまな採用方法が混在するようになりました。
また、インターンシップを導入する企業も増え、採用担当者の業務負担は今までよりも増大しています。そこで、採用業務の工数を増やして活動の最適化が図れるスクラム採用が注目されるようになったのです。
従来の方法では転職潜在層へのリーチが困難だから
従業員が一丸となるスクラム採用では採用活動の工数そのものが増えるため、転職潜在層にもアプローチがしやすく、優秀な人材を確保できる可能性を高めます。
優秀な人材はすでに十分な待遇で企業に採用されていて転職潜在層のため、従来のやり方ではリーチがしづらい側面がありました。
人材の質をアップさせ、自社にマッチした優秀な人材を確保しやすいスクラム採用は、労働力人口が減って採用そのものが困難となる中、ますます注目されるでしょう。
求職者が情報収集するようになっているから
働き方や価値観の多様化により求職者が活発に企業の情報を収集するようになったことも、スクラム採用が注目されている要因の1つです。
終身雇用制度に憧れを抱く労働者が減り、近年では中途採用が珍しいものではなくなりました。さらに労働力人口が減って売り手市場のため、「自身の価値観を認められ、自己実現できる企業に就職したい」と考え、企業の情報を熱心に収集する求職者が増えています。
求職者の「企業情報を知りたい」ニーズを満たすために、会社全体で採用活動を行って十分な量の情報発信を行い、求職者に対応する必要性が高まったことが、理由として考えられます。
現場社員が必要人材を最も理解できているから
4つ目の理由は、現場に必要な人材を採用しやすいからです。スクラム採用は従業員全員が行うものであり、現場も求職者を見極めることができます。今までの方法は、採用担当者が人物を設定して書類選考や面接をして振り分けるのが一般的な流れでした。
スクラム採用は「現場が必要とする人材」を現場の従業員が設定して選考にも関与するため、活躍できそうな求職者を見極める精度が高いと考えられます。
採用担当者だけではなく現場の意見が反映されることで、自社にマッチした人材の確保につながります。
スクラム採用のメリット
スクラム採用には、ミスマッチの防止や効率良く採用を進められるといったメリットがあります。ここからは、スクラム採用のメリットを3つ、確認していきましょう。
自社に合った優秀な人材との出会い
1つ目のメリットはミスマッチを防ぎ、優秀な人材にアプローチできる点です。前述したとおり、現場の従業員も採用活動に参加するので、自社にマッチしている求職者を見極めやすいのがスクラム採用の特徴です。
また採用活動に充てられるリソースが増える分、転職潜在層や多くの求職者にも情報を届けたり接触したりするので、自社に合った優秀な求職者を見つけやすいのがスクラム採用のメリットの1つと言えます。
採用力の向上と人事担当の負担軽減
2つ目のメリットは採用力の向上です。人事だけではなく会社全体で採用をしていくので、求職者にアプローチできる量や見極めの精度向上などにより、優秀な人材を確保しやすく採用力を高める効果が期待できます。
また、リソースが増えることにより採用担当者に集中していた業務が分散され、負担を軽減させられるというメリットもあります。ただし今までの採用活動で行っていた業務以外の仕事(社内への情報共有や進捗管理など)が発生するため、業務効率化の対策を立てることが大切です。
後述する採用管理システムの導入や、業務の洗い出しをして仕事の無駄がないか確認するなど対策を立てましょう。
社員のエンゲージメント向上
社員のエンゲージメントの向上につながる点も、スクラム採用を活用するメリットの1つです。エンゲージメントと(engagement)は婚約、誓約を意味する英単語ですが、人事領域では「会社と従業員がお互いに貢献しながら成長できる関係」を指します。
スクラム採用では情報共有が必須のため、ミーティング、説明会などを通して自社を理解する機会が増え、従業員のエンゲージメント向上につながります。
スクラム採用のデメリット
スクラム採用は上手く機能すれば大きなメリットを得られる手法ですが、適切な効果を出すまでのコストが発生するため一定のデメリットも存在します。以下で、具体的なデメリットを説明します。
現場社員の負担が増える
1つ目のデメリットは従業員の負担増加です。スクラム採用を活用する場合、現場の従業員は通常業務に加えて採用業務にも対応しなければなりません。
また従業員が採用業務に注力しすぎると、他の業務がおろそかになるリスクがあります。採用担当者はプロジェクトマネージャーとして、バランスを取りながら採用業務を行うよう各従業員に説明し、全体の舵をとりましょう。
社員全員の共通認識が必要
採用活動の重要性や方針などを浸透させ、共通認識を築くための時間や労力が発生するのも、スクラム採用のデメリットと言えます。
積極的に採用業務を遂行する従業員もいれば、採用活動の重要性を理解できず前向きに取り組まない従業員もいるでしょう。目指すべきゴール(採用の成功=人材の確保・定着)を達成するために、従業員全員に対しミーティングを定期開催するなどして、意識の統一を図ることが大切です。
情報管理コストがかかる
4つ目のデメリットは採用担当者の管理コストが増える点です。通常の採用手法であれば業務の遂行は担当者が行うので、管理する範囲も自身の周辺だけでした。
しかしスクラム採用では、従業員の共通認識の構築をはじめ、進捗の管理、採用に関する情報を従業員全員に共有するなど、プロジェクトマネージャーとしての管理業務が大幅に増えます。採用担当者が疲弊しないよう、採用管理ツールを導入するなどして、情報収集や進捗管理が効率的に行えるシステムを上手く活用しましょう。
スクラム採用を成功させる4つのポイント
ここまではスクラム採用の概要やメリット・デメリットをご紹介しました。ここでは、具体的な運用にあたって効果を最大限引き出すポイントを4つに絞り解説します。
1.経営陣のコミットと社員の意識づくり
スクラム採用の成功には、経営陣のコミットが非常に重要なポイントです。コミットとは結果や責任に関わることを意味します。具体的には、経営陣が率先してSNSやブログなどで情報を発信し、楽しく採用活動を行っていると従業員に示すことです。
また社員の意識づくりも、成功へつなげるポイントの1つです。採用は、従業員全員で行うプロジェクトであるという意識がないと、スクラム採用は成功しません。従業員の意識が揃って熱量を高めるために、採用活動と人事評価を連動させるなどして、やりがいを感じられる工夫をしましょう。
2.参加しやすい環境づくり
従業員が積極的に採用活動に参加できる環境を整えるのも、スクラム採用の成功に欠かせないポイントです。
スクラム採用は従業員が「全員、一丸となって主体的に取り組む採用活動」を指します。熱量にバラつきが出て、参加していない従業員がいると採用活動に偏りが生じ、期待している成果が得られないでしょう。
従業員が参加しやすくするために、従業員の業務量を調整したり、情報発信をしたりして環境を整備し、「採用は会社全体でするもの」という意識を育むことが大切です。
3.現場への権限委譲
スクラム採用を成功させるには、現場の従業員を巻き込む必要があります。しかし担当する業務があいまいだったり権限を与えられないと、現場の従業員は力を発揮しにくくなります。
採用担当者は従業員が業務に携われるように、採用活動のワークフローを細分化して業務の権限を与え、現場に任せることが大切です。
4.採用情報の一元管理
4つ目のポイントは、応募者の情報や選考状況の進捗など、採用に関する情報の管理を一元化することです。
情報が集約されていないと、1つの情報を収集するだけで時間がかかってしまいます。スクラム採用を活用する際は、採用情報を漏れなく管理するためのツールを導入し、従業員がアクセスしやすい環境を作りましょう。
スクラム採用の具体事例
スクラム採用は従業員の意識づくりや情報管理などが必要であり、成果を出すにはある程度の時間的・労力的なコストが発生します。スクラム採用の具体事例をチェックして、効率良く成功させるヒントを見つけましょう。
ヘイ株式会社
1つ目はインターネットビジネスの企画・開発・運営を行っているヘイ株式会社の事例をご紹介します。ヘイ株式会社はスクラム採用に取り組む際、採用担当者と現場の役割を徹底的に洗い出し、権限委譲をしました。
また、採用は「それぞれのチームの責任」とし、「どのような人材を採用するか決めるのは、チームのメンバーがコミットすべき」としているのもヘイ株式会社の採用の特徴です。
毎週会社説明会を開催して、採用の重要性を従業員に理解してもらう工夫をし、スクラム採用を成功させました。
株式会社PR Table
次に、広報やPR活動を支援するクラウドサービスを提供している株式会社PR Tableの例をみていきましょう。株式会社PR Tableは「全社PRパーソン」という理念を持ち、全社で採用活動に取り組んでいる会社です。円滑に活動できるよう、社内の従業員には採用プロセスや面接のフィードバックを開示し、自由に採用情報へアクセスできる仕組みにしています。
また情報が更新されればslackに通知されるため、常に最新の情報共有が可能です。採用情報の共有は、次の章で紹介する採用管理ツール「HERP Hire」の機能を活用しています。
Unipos株式会社
3つ目にご紹介する事例はUnipos株式会社(旧Fringe81株式会社)です。Unipos株式会社は採用活動を「プロジェクト」として扱い、スクラム採用を実践しました。
Unipos株式会社の特に大きな特徴は、教育研修などのサイドプロジェクトも推進している点です。採用プロジェクトは社内評価にも影響し、組織貢献の度合いを見る軸になっています。
スクラム採用に適したツール
スクラム採用の業務をスムーズに行うには、採用管理システム「HERP Hire」の活用がおすすめです。HERPは株式会社HERPが提供するシステムで、以下のような機能があります。
- 応募情報の一元管理
- コミュニケーションツールとの連携
- 求人票の作成
- 求人ページの作成
- タレントプール
HERP Hireは、15社以上の求人媒体と連携が可能で、エージェントや自社の求人ページ経由での応募も一元管理できるのが大きな魅力です。またslack、Chatworkとの連携によりスムーズな情報共有が可能です。
HERPを活用すれば現場と採用担当者が円滑にコミュニケーションを可能にし、従業員全員が採用活動に参画できます。また応募者の管理も容易なので採用担当者の負担軽減といった効果も期待できるでしょう。
スクラム採用に関するまとめ
スクラム採用はまだメジャーな採用手法ではありませんが、取り組み次第では優秀な人材を効率良く採用するために有効な手段となります。
スクラム採用を成功させるためには、会社全体が共通認識を持ち従業員が参加できる環境を整えて、採用に関する権限を適切に付与することが重要です。また、採用担当者の負担を減らすために、システム化を進めて効率良く業務管理をしましょう。
先ほどご紹介したHERP Hireは無料プラン(HERP for SEEDs)があるので、試しに登録して使い勝手をチェックしてみてはいかがでしょうか。