人事評価制度は、従業員への評価を通じ、組織を成長させるという、企業にとって欠かせない重要なものです。ところが、従業員の6割近くが人事評価制度に不満を抱えているというデータもあります。
自社の評価制度への不満に対して、どのように対応していけばいいのでしょうか。この記事では人事評価制度に不満が出てしまう原因や、それによって引き起こすリスク、不満を無くす為に企業ができることなどを解説します。
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人事評価制度に不満が出てしまう主な原因とは
組織の人事評価制度に不満を持つ社員は、少なくありません。不満を口に出さなくても、内心ではさまざまな想いを抱えているケースもあります。
人材紹介会社のアデコが行った人事評価制度に関する意識調査では、62.3%の人が勤務先の人事評価制度に不満を抱えていることがわかりました。
不満を感じる理由の第一位は、評価基準が不明確であること。それ以外には、評価者による評価の方よりや、フィードバックが不十分であること、評価に満足がいかないこと、評価制度の内容そのものへの不満が上がっています。
とりわけ、評価に納得がいかない場合、大きな不満につながりやすくなります。人事評価制度に不満を感じる理由となる代表的な5つを以下に紹介します。
評価基準が不明確
不満の理由となる第一位は、「評価基準が不明確」という点です。社内で評価基準の共有が不足している場合、こうした不満が溜まりやすくなります。
「なぜこの評価になったのかわからない」「もっと評価が高くても良いはずだ」と、評価制度や評価者への不満にもつながります。評価基準を明文化し、評価者・従業員と全社的に共有する必要があります。
評価者によって評価の偏りが大きい
たとえ評価基準が明確であっても、評価者のスキルにばらつきがある場合、評価者によって評価が偏る可能性が高くなります。
評価をする際、さまざまなバイアスがかかります。属人的なバイアスをできるだけ排除し、評価基準に沿って公平で適切な評価を下すには、評価者にもトレーニングが必要です。
フィードバックが不十分
評価が公平に行われていても、フィードバックが十分に行われないと、評価への不満が溜まります。評価が低かった従業員にだけではなく、高い評価を与えた従業員に対しても、適切なフィードバックを行うことは重要です。
なぜその評価が行われたのかという理由を合わせて伝えることで、本人のモチベーションが向上します。
自己評価と企業側の評価の乖離がある
自分が思っている評価よりも低かった場合、評価制度への不満が発生します。自己評価と企業側の評価の乖離は、評価基準があいまいであったり、評価者のフィードバックが不十分であったりする場合に発生する可能性が高くなります。
評価結果が昇進や昇給に結びつかない
高い評価を得ていても、昇進や昇給に結びつかない評価制度では、従業員のモチベーションは低下します。昇給制度・昇進制度と合わせて評価制度を運用する仕組みを構築しましょう。
昇進・昇給につながらない評価については(例:自己内省のための、同期や部下からのフィードバック等)、評価につながらない点を明言した上で運用することが重要です。
不満が出るのは「人事制度への不満」と「評価者への不満」に分かれる
評価制度への不満を見てみると、「制度そのものへの不満」と「評価者への不満」の2種類があることがわかります。
評価基準が不明確であったり、昇給に結びつかないというのは、評価制度そのものへの不満です。こうしたケースでは、評価制度のあり方や運用方法を見直す必要があります。
一方、評価者によって偏りがある、フィードバックが不十分というのは、評価者への不満に該当します。評価者への不満が高い場合には、評価者研修などを通じて、評価者のスキルアップが必要です。
人事評価制度に対する不満を放置することで起こりうるリスク
人事評価制度への不満を放置すると、退職率の増加や社員のモチベーションの低下など、さまざまな悪影響が発生します。
退職率の増加
がんばっても評価に結びつかないという場合、退職につながる可能性が高くなります。とくに、評価制度と昇給・昇進がうまく連動していない場合、従業員の不満が溜まり退職の引き金となります。
勤続年数を重ねた従業員でも、将来的なキャリアアップや展望が見えなくなってしまうと、転職を考えるケースも考えられます。従業員のフェーズに合わせて、評価制度を構築することが重要です。
モチベーションの低下
評価されないと感じている従業員は仕事へのモチベーションが低下します。そもそも、評価制度は従業員へ「期待する行動」や「望ましい行動」を示すものです。
たとえば、新たな商品開発やリブランディングを掲げている企業内で、新しい挑戦や行動を評価する仕組みがなければ、企業が期待するイノベーションを生み出すのは難しいでしょう。企業が目指す方向に向かって、社員がモチベーションを保てるような評価制度の運用が重要となります。
組織全体の生産性の低下
評価制度に不満がある場合、最終的に個人のパフォーマンスが低下します。ひいては、組織全体の生産性低下をもたらします。
経営状況の悪化から脱却するため、経営戦略の見直しだけではなく、人事戦略や評価制度の見直しに切り込む企業は少なくありません。組織の生産性と評価制度は、密接に関連しているものと認識することが大切です。
人事評価制度の不満を無くす為にできる対応策
従業員の評価制度への不満をなくすために、できることは何があるでしょうか。「人事評価制度そのものへの不満」と「評価者への不満」に分けて、対応策をみてみましょう。
人事評価制度への不満に対する対応策
人事評価制度への不満は、評価制度の運用そのものに問題があったり、評価制度の意図が社内で共有されていないことで生まれます。評価基準の見直しが必要です。
人事制度の評価基準を明確にする
「評価基準がよくわからない」という不満に対して、自社の評価基準の見直しを行いましょう。人によって評価がブレないよう、数値化・言語化することはもちろんのこと、評価するべき項目や行動を明確にします。
自社に適切な評価制度になっているか確認する
評価基準が設定されていたとしても、自社の経営方針に適した評価になっていなければ、従業員の行動と評価の間にギャップが生まれてしまいます。経営戦略や組織風土と評価制度がうまく連動しているかを見直しましょう。
人事評価制度の理解を深める施策を行う
評価制度への理解を深めるためには、評価制度への説明会を実施する方法があります。また、基準や制度の見直しの段階で、従業員にアンケートをとり、現場の意見を参考にするのも、評価制度の見直しを「自分ごと」として捉えてもらう効果が期待できます。
適切なフィードバックを行う制度を作る
人事評価制度への不満を従業員が口にできるよう、フィードバック制度を設けることも重要です。評価面談の際、評価について不満や不服がある場合には、申し立てできるフローや窓口を設定しておくと、従業員が不満をため込むのを防ぐことができます。
評価者への不満に対する対応策
評価者そのものへの不満へは、評価者のスキルアップで対応します。
評価スキルを磨く
評価者のスキルを磨く評価者研修を実施しましょう。評価制度を適切に運用するためには、評価者の理解が欠かせません。自社の評価制度の目的・意図について理解を深めるような場を提供しましょう。
さらに、公平な評価にはスキルが求められます。コーチングや傾聴など、評価者に求められるスキルを学ぶ場を設けましょう。
社員と定期的にコミュニケーションを取る
適切な評価には、評価者が従業員の普段の様子をよく知る必要があります。評価面談のときにしか顔を合わせない上司からフィードバックをもらっても、従業員は納得しないでしょう。
日々の業務の打ち合わせや、1on1ミーティングなど、評価者が従業員と定期的にコミュニケーションを取る場を設定しましょう。
人事評価制度の不満に対応する際の注意点
人事評価制度への不満に対して、見直しを行う際には、以下の点に注意します。
- ブレない方針を持つ
- 不満に振り回されすぎない
- スモールステップで行う
昨今では、さまざまな人事評価制度が登場しています。リサーチの段階で、他社の興味深い事例を収集するのも簡単です。一見「よさそう」と思う評価制度を詰め込んでも、自社に最適な評価制度になるとは限りません。経営戦略に沿って、評価制度を見直すことが重要です。
さらに、従業員の不満に対応する際も同様のことがいえます。不満を受けてすべてを変更するのではなく、評価制度への理解を促進し、不満を解消するような策を講じましょう。
そして、人事評価制度を大幅に改定するには労力がかかります。変更点が大きくなるほど、社内での抵抗も強まるでしょう。そこで、スモールステップで見直しを行う方法があります。一部のチームから試験的に適用し、成功したら適用範囲を拡大する方法を取ると、トライ&エラーで導入することができます。
人事評価制度の不満に対するまとめ
人事評価制度への不満は、主に「評価制度そのものへの不満」と「評価者への不満」に分けられます。不満を放置しておくと、離職率の上昇やモチベーション低下につながります。
評価制度の見直しを行ったり、評価者のスキルアップを通じて、自社の評価制度をより良いものに変えていきましょう。