1on1ミーティングは、部下の成長促進やエンゲージメント向上、組織全体の生産性向上などの効果があるとして多くの企業で導入されています。ただし、適切に実施するためには、上司が1on1の目的や効果を部下に共有して浸透させることが重要です。
そこで本記事では、1on1ミーティングを有意義なものとするために、上司向けに目的やメリット、進め方などをご紹介します。1on1ミーティングの目的を達成するために、ぜひ参考にしてください。
Contents
1on1ミーティングの目的とは
1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で対話する場を指します。効果的に1on1ミーティングを実施するためには、実施の目的を押さえておくことが大切です。ここでは、1on1ミーティングの目的をご紹介します。
部下の成長促進
1on1ミーティングの目的は、部下の成長を促し、サポートすることです。上司は、部下の業務に関する悩みや不安などを聞き取った上で、部下へのフィードバックを通して解決へのヒントを提供します。
上司と部下のコミュニケーションを通して、部下は課題解決に向けての気づきを得られます。部下が主体性を持って解決に向けて取り組むことで、成長につなげられるのです。
部下の成長による組織力の向上
組織のパフォーマンスを向上させることも1on1ミーティングの目的です。1on1ミーティングの実施により部下が成長すれば、組織全体の能力がアップすることが期待されます。組織力が向上すれば、働きやすい職場環境が整い、結果として従業員の定着率が高まるでしょう。
また、1on1ミーティングの継続的な実施により部下が優れた上司へと成長していけば、将来的にも質の高い1on1ミーティングが実施される可能性が高まります。結果として、人材育成の好循環が生まれるでしょう。
1on1ミーティングと人事評価面談との違い
1on1ミーティングと類似する制度として、人事評価面談があります。両者の区別を明確にして、効果的に実施していくことが大切です。
1on1ミーティングと人事評価面談との違いを表にまとめました。
項目 | 1on1ミーティング | 人事評価面談 |
---|---|---|
目的 | ・部下の成長促進 ・部下の成長による組織力の向上 | ・目標設定 ・人事考課結果のフィードバック |
頻度 | 週に1回~月に1回 | 四半期または半期に1回 |
時間 | 30分~1時間程度 | 5分から長時間に及ぶものまで |
双方の関係性 | 同じ目線 | 上下関係 |
話すテーマ | プライベートから業務に関する幅広い内容 | ・部下の評価 ・目標への進捗確認 |
1on1ミーティングの主な目的は、前述のとおり、部下の成長を促進し、組織力を向上させることにあります。また、話すテーマは、業務の課題や改善点だけでなく身心の健康状態など多岐にわたる点が特徴です。上司と部下が同じ目線に立ち、双方の信頼関係を高めながらコミュニケーションを図ります。
他方、人事評価面談の場合、部下の目標設定や評価のフィードバックが主な目的です。そのため、話すテーマは、部下の評価や設定した目標に対する進捗確認などが中心となります。
また、1on1ミーティングの場合、比較的短いスパンにおいて定期的に実施するため、1回の時間は30分から1時間が目安です。人事評価面談の場合は、1on1ミーティングと比べて実施するスパンが長いため、1回が長時間に及ぶ場合もあります。
1on1ミーティングで得られるメリット
1on1ミーティングの目的を把握したところで、効果を理解しておくことも大切です。ここでは、1on1ミーティングのメリットをご紹介します。
部下の成長
1on1ミーティングの実施により、部下の成長を期待できます。上司が部下に対してフィードバックすることで、部下は課題解決に向けて自発的に取り組む力を養うことが可能です。
上司と部下の信頼関係の構築
1on1ミーティングでは、上司と部下が、業務に関する事柄だけでなくプライベートの内容も含めて幅広い話題について対話します。そのため、双方の信頼関係が高まりやすく、円滑なコミュニケーションを図ることが可能です。
両者の信頼関係が高まれば、上司と部下との間で起こり得るコミュニケーションエラーを軽減することにもつながります。
仕事の進捗状況への深い理解
1on1ミーティングを通して、上司は、部下が取り組む仕事の進捗状況をきちんと把握できます。
昨今、リモートワークを導入する企業が増える中、部下の持つ業務の進捗状況を的確に把握できないという課題を持つケースもあります。1on1ミーティングの実施により仕事の進捗状況を把握することで、部下への信頼が高まる可能性もあるでしょう。
部下のエンゲージメントの向上
Gallupの調査 によれば、1on1ミーティングを実施した上司は、部下のエンゲージメントのレベルを約3倍に高めたという調査結果が出ています。
上司と部下との定期的な対話を通して、部下は直属のチームや組織の中で評価され、気にかけてもらえているという実感を持ちます。評価されている実感を得ることで、仕事へのモチベーションが向上し、最大限のパフォーマンスを発揮することにつながるのです。
※調査結果は、2013年9月4日から10月9日までに実施された18歳以上の国内の就業成人8,287人を対象としたWeb調査に基づいています。
離職率の低下
離職率の低下につながる点も、1on1ミーティングのメリットです。上司と1対1で話す機会がほとんどない従業員は、離職する可能性が高い傾向があります。 ハーバード・ビジネス・パブリッシングの調査 によると、上司との1対1で行う対話の時間が同僚の約2倍確保されている従業員は、離職率が67%低いという調査結果が出ています。
離職率が下がることで、企業の雇用が安定し、労働環境の向上につながります。社員が働きやすい環境が構築されるでしょう。
組織全体の生産性向上
1on1ミーティングの実施により、従業員や組織全体の生産性向上を望むことが可能です。 ハーバード・ビジネス・パブリッシング によると、1on1ミーティングを導入したことで、生産性を約5倍に高められたという結果があります。
1on1ミーティングを実施することで、部下は自身の悩みや課題を客観的に振り返ることが可能です。さらに上司からのフィードバックにより、課題解決に向けて自発的に行動することができます。そして、1on1ミーティングの継続的な実施により部下の能力が上がり、組織全体の能力が底上げされます。結果として、生産性向上が期待できるのです。
1on1ミーティングの進め方
1on1ミーティングで効果を発揮するためには、進め方を把握しておく必要があります。ここからは、1on1ミーティングの進め方をご紹介します。
導入する目的を明確にする
まず、1on1ミーティングを実施する目的を決定しましょう。目的を明確に決定することで、上司と部下が導入の目的を共有しやすくなります。主体性を持って1on1ミーティングに取り組むことが可能です。
部下に1on1の目的や効果を伝える
1on1ミーティング実施の目的を決定したら、目的や効果を部下に詳しく説明して浸透させましょう。
例えば「双方の信頼関係を構築する」「部下の成長を促進する」など、目的や効果を具体的に伝えることが大切です。結果として、部下は目的意識を持って1on1ミーティングに取り組むことができます。
日程・テーマを決める
1on1ミーティングは部下のための時間であるため、部下が日程や話すテーマを決定することが大切です。
まず、上司と部下が双方の予定をすり合わせて、部下が日時を決めます。都合がつかなくなった場合は必ず連絡を入れるといったルールを決めておきましょう。
なお、1on1ミーティングが軌道に乗るまでは、事前にアジェンダを用意して方向性を決めておくとよいでしょう。
話すテーマの主な例は、以下のとおりです。
- 業務の課題
- 業務を通して不安を感じていること
- 業務を通して学んでいること
- 職場で起きていること
- 将来のキャリア達成のために実施していること
ある程度のアジェンダを用意しておけば、話す内容に困ることなく、有意義に時間を使うことができます。
1on1ミーティングのテーマについて詳細を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
1on1ミーティングの実施
事前に用意しておいたアジェンダに基づいて、1on1ミーティングを実施します。実施する際は、上司は部下の話にきちんと耳を傾けることが大切です。部下の話が終わったら、上司が話します。
なお、1on1ミーティングで話した内容に関して、あとから振り返ることができるようにメモを取る習慣を身につけましょう。データが蓄積すれば、部下の成長を記録してフィードバックに活用できます。
定期スケジュール化する
1on1ミーティングは、上司と部下における信頼関係の構築、また部下の成長と課題発見のために定期的に実施することが重要です。次回の実施日まで間隔をあけないようにしましょう。具体的には、週1回、3週間1回の頻度でスケジュールを組むことが一般的です。
1on1ミーティングの内容を振り返り、課題があれば次回の実施日までに解決策などを部下に検討してもらうようにします。
意味のある1on1にする為のポイント
前述したとおり、1on1ミーティングにはさまざまなメリットがあります。上司と部下が1on1ミーティングのメリットを享受するために、おさえておきたいポイントをご紹介します。
目的やアジェンダの事前共有を徹底する
前述したとおり、1on1ミーティングには部下の成長促進や組織力向上といった目的があります。実施する際は、部下に対して目的を詳しく説明することが重要です。そして、有意義に時間を活用するため、事前にアジェンダを共有しておく必要があります。
事前の準備を徹底することで、1on1ミーティングの目的を達成しやすくなるでしょう。
上司側が必要スキルを身につける
1on1ミーティングの実施にあたり、上司が身に付けるべきコミュニケーションスキルにはコーチングスキルとフィードバックスキルの2つがあります。
コーチングスキルは、部下の話を傾聴して、部下の考え方を引き出すための適切な問いかけをするスキルのことです。オープンクエスチョンを心がけ、部下の不安や課題、悩みなどを引き出しましょう。ただし、1on1ミーティングに不慣れな部下に対しては、「はい」「いいえ」で回答できるクローズドクエスチョンを挟みながら質問すると効果的です。
フィードバックスキルは、部下の成長を促進するために必要なスキルです。必要に応じて部下に対してフィードバックすることで、上司と部下の考え方の隔たりを埋めることにつながります。
上司はコーチングスキルやフィードバックスキルに関する研修を受けることで、1on1ミーティングを効果的に実施するためのスキルを身に付けられます。
1on1ミーティングの目的に関するまとめ
1on1ミーティングには、部下の成長促進や組織力向上などの目的があります。実施する際は、部下に目的を丁寧に説明して浸透させることが大切です。また1on1ミーティングには多くのメリットがあります。効果を発揮するために、事前に目的やアジェンダを上司と部下との間で共有しておくとスムーズです。
本記事でご紹介した1on1ミーティングの目的や効果などをきちんとおさえて、部下の成長につなげるために1on1ミーティングを継続的に実施しましょう。