人事の転職は難しい?必要スキルや成功のコツを経験別で紹介

人事のキャリア

人事は専門職であることから、中途採用での転職が難しいと思われがちです。たしかに、経験者のみを対象にしていたり、必須要件に具体的な業務経験を記載する求人は少なくありません。しかし、なかには未経験者を対象とした人事の求人もあります。

人事の転職を成功させるには、自身の経験を紐づけてアピールすることが大切です。この記事では、人事の転職を成功させるコツを経験者・未経験者の双方の観点から解説します。

人事の転職は難しい?

人事への転職は、経験の有無によって難易度が変わります。人事経験がある人のほうが、望む仕事を得やすいといえますが、人事の業務内容は多岐にわたるため経験内容によって転職の難しさが変わるのも事実です。

まずは人事の転職難易度を経験別で紹介します。

人事経験者の転職の方向性と難易度

人事経験者の場合、人事から人事へと転職する場合には前職での経験を買われ採用されるケースが多く見られます。一方、人事から他職種へ転職を検討している場合には、前職で得たスキルや強みを積極的にアピールする必要があるでしょう。

人事から人事へ転職する場合

人事から人事へ転職するケースでは2パターンに分けられます。一つは、前職と似た業務内容のポジションへ転職するケース、もう一つは前職とは異なる業務内容がメインのポジションへ転職するケースです。

前者では、たとえば採用実務業務から、一歩上の採用戦略計画の立案までを担うポジションに転職するというように、同じ人事領域でさらなるキャリアを形成する狙いで行われます。後者の場合は、採用業務の経験をもとに、転職先では研修や人材育成にも携わるというようにキャリアを広げる目的で選択するケースが多くみられます。

また、大企業からスタートアップへ、ベンチャー企業から大企業へと、組織規模を変えることで、キャリアの形成を図る転職もあります。その場合、転職先の組織規模で求めている業務経験やノウハウ、人脈などを強くアピールすることが重要です。

人事から他職種へ転職する場合

人事から他職種で転職する場合には、新たな職種との関連性がまずポイントになります。キャリアコンサルタントや人事システムの営業など、なにかしら人事領域の知識が求められる職種の場合は、人事の仕事で得た経験をアピールすることができます。

一方、システムエンジニアなどまったく異なる専門知識が求められる仕事に転職する場合には、独学で基礎を身に着けるというような事前準備が必要となります。まったく分野が異なる職種に転職する場合には、一時的に給与ダウンも考えられます。新たな職種でキャリアを形成する時間軸や、年収なども視野にいれた上で検討することが重要です。

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未経験から人事への転職は難しい?

人事未経験から人事へ転職する場合は、簡単とはいえません。しかしながら、「未経験歓迎」とうたっている求人もあり、そうした求人を積極的に見つけることが重要です。未経験者を歓迎する求人では、多くの場合「人事」では得られない経験を求めています。

たとえば、営業を通じて得た顧客の要望を読み取るコミュニケーション能力は、人事として社員の意見を引き出す際に必要です。また、チャレンジ精神や積極性など、いまの組織風土とは異なるマインドの人材を探しているケースもあります。応募する求人で求められている条件を確認し、自分のキャリアと比較してみましょう。

人事の転職が難しい理由

人事への転職を目指し活動をはじめても、なかなか思うような成果につながらないということもあります。人事への転職が難しいと感じる理由には、以下のものがあります。

他職種と比べて求人倍率が低い傾向があるから

求人倍率とは、仕事を探している人ひとりにつき、何件の求人があるかを示す数字です。求人倍率が高いほど多くの求人が市場に出ており、転職活動をする人にとって選択肢がたくさんある有利な状況となります。一方、人事の職種のように市場に出ている求人数が少なく、求人倍率が低い場合には、望む仕事を見つけるのが難しくなります。

たとえば、2022年11月の有効求人倍率は全国で1.27倍ですが、管理的職業の分類は1.28倍と全国平均をわずかに上回るものの、一般事務のカテゴリーでは0.47倍と求人が大幅に少ない状況です。飲食や介護の求人が約3倍(ひとりにつき3件の求人)であることを考えると、人事の仕事を見つけるのは厳しい市場といえます。

参考: 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)

自社の社員で人事を補うこともあるから

人事にとって、自社事業を理解するとともに、横断的にさまざまな部署の社員を知り、幅広い人脈を持っていることが重要です。そのため、とりわけ規模の大きい企業では、ジョブローテーションとして分けて社員に人事実務の経験を積ませるとともに、キャリアを積んだ中堅・シニア社員を人事部の管理職に置くことは珍しくありません。

このように、主に新卒採用で雇用した社員を中心に人事部の人材を育成しているため、外部へ求人が出づらいという現状があります。

人事は会社の顔であるから

人事の仕事は、採用などを通じて会社の意見を外部に伝えます。また、人事施策の遂行や労務管理、研修や評価制度など、会社の意向を社員に伝える役割を担います。このように、組織が円滑に運営されるためには、経営戦略や組織風土に精通した人材が求められます。

短期的スパンでこのポジションの人材が入れ替わってしまうと、ときに定着率の低い組織であるという印象になってしまいます。そのため、一人の人材が人事を長く担当するケースも珍しくありません。

人事に求められるスキルや向いている人の特徴

人事の仕事は、社内の調整役となりさまざまな人と関わります。人事の転職の際に備わっていると良いスキルを紹介していきましょう。

冷静な判断力

人事は、社内の調整役としてさまざまな立場の人からの意見を聞きます。なにかしら問題が発生した場合、その社員との関係性によって意見を変えるのは望ましい態度とはいえません。たとえば、職場の人間関係でトラブルがあったと報告を受けた場合でも、関係者双方から話を聞き、客観的立場から就業規則にのっとり判断を下す必要があります。

良好な人間関係を幅広い範囲で築きながら、いざというときに感情的にならず冷静に決断する力が求められます。

秘密を厳守できる

人事の仕事は社員のプライバシーに関する情報を扱います。業務上で得た内容を第三者に勝手に共有することは望ましい行動とはいえません。また、必要があって他者に情報を共有する場合でも、必ず本人の承諾を事前に得るといった、プライバシーの取扱い方を心得ている必要があります。

調整力・コミュニケーション力

人事施策を遂行したり、社内に会社の方針を伝えたりする際、調整力やコミュニケーションが必要となります。例えば、採用業務一つとっても、面接官の依頼など社内のさまざまな社員と接します。単純な日程調整の役割を担うだけでなく、相手が目的を理解し、進んで取組に協力してくれるようにするには、コミュニケーション能力が求められます。

未経験から人事職への転職を成功させるには?

未経験で人事に転職する場合、どうしてもハードルが上がってしまいます。しかし、人事に求められるスキルをアピールしたり、他の職種で得た経験をうまく結びつけることで転職成功につながる可能性があります。ここでは、未経験から人事への転職を成功させるためのポイントを紹介します。

コミュニケーション力の高さをアピールする

まず重要なのは、人事に求められるスキルをすでに有しているとアピールすることです。なかでも、コミュニケーション能力は人事にとって必須のスキル。いままでの仕事の経験から、関連するエピソードを盛り込みつつアピールにつなげましょう。

その際重要なのは、コミュニケーションスキルを活かし、「異なる立場の人々をまとめた」「プロジェクトを成功に導いた」という結果も伝えることです。単純に「人に興味がある」「人と接するのが好き」という伝え方では、スキルとしてのコミュニケーション能力の高さが伝わりづらくなってしまいます。人事の仕事が、コミュニケーションを通じてどのような成果を期待されているのか、想像しながらアピール内容を考えましょう。

親和性のある経験やスキルをアピールする

コミュニケーション能力以外に、人事の仕事に親和性のある経験やスキルもアピールしましょう。たとえば、応募する先と同じ業界で他職種で働いていた場合、業務内容や職種に精通していることが一つのアピールポイントとなります。人事にとって、自社業務を理解し職種に求められる要件を定義することは、重要な仕事だからです。

人事未経験だからといって諦めず、応募先の企業理解を深めましょう。関連性が見つかれば、アピールポイントとして具体的に掘り下げることができるでしょう。

採用担当枠を狙う

未経験であったとしても、間口が広いのが採用担当の求人です。採用実務に関する部分では、近年広がっているSNSを活用したリクルーティングなど、企業は新たな採用手法についての知見を求めています。また、社外の人脈が採用につながるケースもあります。

そうした点で若手人材や同業界で経験を持つ人が採用されやすいのが、人事の採用担当です。未経験者を受け入れている求人があるか、探してみるといいでしょう。

未経験から人事へ転職するには?役立つ資格や成功する為の5つのコツ

人事経験者が転職成功させるコツ

人事経験者は、関連する業務の経験を積んでいるという点で、書類選考を通過する可能性が高くなります。一方、面接で好印象につなげるには、今の仕事の経験を掘り下げ、志望動機を明確に伝えることが重要です。ここからは人事経験者が転職成功させる為のコツを紹介していきます。

具体的な数字でアピールする

成果についてアピールする場合には、具体的な数字を盛り込みましょう。たとえば、残業時間削減についての取組について話す場合、「成功しました」という結論では、どれだけの結果が出たのか相手には伝わりません。「部署ごとに残業時間を見直し、業務量の調整を行ったところ、半年間で15%の残業時間削減に成功しました」というように、具体的な数字を用いてアピールできるといいでしょう。

明確な志望動機を作る

人事経験者の転職では、「なぜこの仕事に転職したいのか」という志望動機を、明確にすることが重要です。志望動機を作るには、応募先の企業について知らなければいけません。事業内容や社内風土、組織制度など、気になる点をきっかけに、なぜこの会社でなければダメなのかというポイントをじっくりと考えてみましょう。

「人事のキャリアを広げたい」というような答え方では、転職理由の説明だけで終わってしまい、先方には「この会社でなければダメ」という理由が伝わりません。「人事のキャリアを広げたい、そのためには御社の〇〇というポイントに惹かれた」というように、応募先の会社と結びつけることが重要です。

転職エージェントもうまく活用する

転職エージェントを活用するメリットは、非公開求人を紹介してもらえる点です。転職エージェントは、転職サイトに掲載されていない求人も多く取り扱っています。非公開求人の多くは、業務内容や求める人物像について細かい要件が定義されており、転職サイトで大勢の人に訴えても、該当する候補者を探し出すのが難しいというケースが当てはまります。

つまり、人事経験者でより上位のポジションの求人を扱っている可能性が高いと考えられます。また、求人紹介だけでなくスキルの棚卸や面接の練習など無料で行ってくれるのが転職エージェントです。人事経験者・未経験者に限らず、一度相談してみるといいでしょう。

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人事の転職は資格があると有利?

人事への転職は、必ずしもなんらかの資格が求められるわけではありません。むしろ、労務管理システムや給与計算フロー、採用管理システムの使い方など、実務経験を重視する企業も多くあります。

ただし、歓迎要件として業務に関連する資格をあげている求人もあります。人事の仕事で活かせる資格としては、以下の通りです。

  • 社会保険労務士
  • キャリアコンサルタント
  • メンタル・マネジメントヘルス検定
  • 衛生管理者免許
  • 人事総務検定

これらは、必ずしも人事になるために必要な資格というわけではありません。たとえば、衛生管理者免許のように、労務関連の実務で求められることから、人事の仕事の一環として会社が資格取得を奨励するケースもあります。

人事の仕事に必要な専門知識を習得できるという点で、もし資格を持っているようであれば、転職活動時のアピールポイントになるでしょう。

人事の転職理由や志望動機を作成するコツ

転職理由や志望動機を作成する際には、以下のコツを押さえましょう。

  • 人事経験がある場合には、具体例とともに記載する
  • 未経験者の場合には、人事に求められるスキル・資質から関連する業務経験を記載する
  • 転職理由はポジティブな言葉に変換する
  • 転職先での具体的なキャリアプランを描く

転職をする際、少なからず現職(前職)にネガティブな感情を抱いているかもしれません。しかし、それを面接でそのまま伝えては、マイナスのイメージが伝わってしまいます。たとえば、「仕事がつまらなかった」という転職理由は、「もっとやりがいの感じられる仕事がしたい」とポジティブな言葉に変換しましょう。その上で、何をもって自分がやりがいに感じるのかを説明できると、納得感のある転職理由となります。

また、志望動機に説得力を持たせるうえで、具体的なキャリアプランは重要です。中長期的なタイムスパンで、人事として高めたいスキル・経験したい業務内容を考えましょう。

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まとめ

人事の転職の難易度は、人事業務の経験者・未経験者によって異なります。未経験の場合には、現在のスキルと人事に求められる資質との関連性をアピールしたり、人事の仕事のどこにやりがいを感じるのかを言葉にしたりしてみるといいでしょう。

経験者の場合には、身に着けたスキルや専門知識について整理しておくとともに、この先人事として深めたい領域について語れるようにしましょう。