エンゲージメント調査とは?主な指標と具体的な質問項目例17選

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業務効率化や離職率の低下を目的としてエンゲージメントを向上させたいと考える経営者や人事担当者の方は多いと思います。エンゲージメントを高めるには、現在の従業員の状態を把握し、行った施策の効果を正しく測定してPDCAを繰り返すことが重要です。

しかし、どのような方法で従業員のエンゲージメントを調査すればいいのでしょうか?

今回はエンゲージメント調査の目的をはじめ、調査で得られるメリット、指標、具体的な質問事例を紹介します。ぜひ最後まで読んでエンゲージメント調査の概要を理解し、自社の組織改革に役立ててみてください。

エンゲージメント調査とは

本章では、エンゲージメント調査の目的やメリットを解説しますが、まずはエンゲージメントが何を意味するかを以下で確認していきましょう。

そもそもエンゲージメントとは

エンゲージメント(engagement)とは、誓約や婚約を意味する言葉ですが、ビジネスでは「会社と従業員がお互いに愛着を持って貢献し、成長しあえる信頼関係」のことです。

働きやすさ、やりがい、会社が抱くビジョンや理念の共感が従業員のエンゲージメントを高め、その結果次に挙げるようなメリットが期待できます。

  • 業績アップ
  • 離職率の低下
  • 人材の確保

エンゲージメントが高いと従業員の貢献意欲を引き出せます。会社は従業員の求める待遇や目標、活動、風通しの良い風土などを整備しニーズを満たしましょう。信頼関係が強固になれば、従業員は意欲的に仕事に取り組み、業務効率化や生産性の向上といった効果が得られます。

またエンゲージメントが高いということは上司や部下の関係も向上している状態です。たとえトラブルが発生したり問題が起きそうになったりしても、気軽に相談できる関係が構築されているため、会社は何らかの対策を打ち、離職を未然に防ぎ人材の確保につながります。

エンゲージメント調査の目的

エンゲージメントを高めるために施策を講じたら、エンゲージメント調査を行って効果を測定しましょう。エンゲージメント調査は別名「エンゲージメントサーベイ」と呼ばれています。

調査をする目的は、大きく分けて次の3つです。

  • 課題の洗い出し
  • 費用対効果などの数値化
  • 離職率のデータ採取

エンゲージメント調査によって、従業員が持つ会社への不満などを発見することができます。もしエンゲージメントを高める施策を打っているのに、効果が芳しくない場合は組織の課題が隠れている場合があります。エンゲージメント調査をして組織内の課題を特定し、自社に必要な対策を立てましょう。

2つ目の目的は人事が行った施策の費用対効果を測定することです。エンゲージメントを高めるために行った施策が期待通りの効果を出しているのか確認しましょう。もし費用対効果が低ければ、人事や経営陣の考える取り組みと現場の従業員が求めているものとの間にギャップが生じているかもしれません。

次に離職率の測定もエンゲージメント調査の重要な目的の1つです。エンゲージメントが低い部署の離職率は高くないか、エンゲージメント向上のための施策を実施した後で離職率の数値に変化はあったかなどを調べましょう。

近年は求人を出しても優秀な人材の採用が難しくなっています。また離職は社内のモチベーション低下や新しい人材への教育コストを発生させるなど、会社にとって損失です。従業員が離職しないような環境を適切に整備するために、エンゲージメント調査を行って必要な施策を打ちましょう。

エンゲージメント調査で得られるメリット

エンゲージメント調査では以下の2つのメリットが得られます。

  • 定着率の上昇
  • 売上や純利益の向上

1つ目は定着率の上昇です。エンゲージメント調査で自社の抱える課題が浮き彫りになることは前述しました。従業員が抱える不満などの課題を洗い出し、対策を講じることで会社への愛着や仕事の意欲を高める効果が期待できます。

エンゲージメント調査で従業員が長く働ける環境を用意することで従業員が定着しやすくなり、その結果新たに求人を出す必要性も減るでしょう。定着率の上昇は採用コストや教育コストの削減につながるのです。

2つ目のメリットはモチベーションアップによる業績の向上です。エンゲージメント調査で職場環境を改善することは、社員のモチベーションアップに良い影響を与えます。その結果、主体的に業務に取り組み結果を出すために効率良く業務遂行する方法を模索し、売上や純利益の向上をもたらすのです。

また、業務効率化が進めば残業時間の削減や収益の増加にもつながると期待できるため、エンゲージメントを行ったら必ず効果を測定して社内の現状を把握しましょう。

なお、エンゲージメント調査を実施するステップや得られる効果などについては、以下の記事も参考にしてください。

エンゲージメントサーベイとは?実施方法から目的・効果まで解説

エンゲージメントを調査する方法と事前の注意点

エンゲージメント調査はアンケート形式で行うのが一般的です。半年〜1年に1回のペースで、設問は50~100問ほど用意して実施しましょう。

調査の方法は大きく分けて以下の2つがあります。

  • オリジナルの質問を用意する
  • アウトソーシングする(業者に外注)

業者に外注すれば自社で集計・分析する手間がなくなり、分析結果も精度が高く的確なフィードバックがもらえます。しかし従業員数によって調査金額が変動し、中には数十万円を超える調査会社もあるので、金銭的な負担がかかる点に留意しましょう。

ただし、自社でエンゲージメント調査を行う場合は人事担当者の負担が大きくなるため、集計や分析などを自動で行えるシステム導入も有効な手段です。

エンゲージメントを調査する際の主な指標

エンゲージメント調査では、会社により異なりますが主に以下の3つの指標を活用します。

  • 総合指標
  • ワーク・エンゲージメント指標
  • エンゲージメントドライバー指標

それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。

企業に対する総合的な指標

会社に対し、従業員が総合的にどう捉えているかを測ります。たとえば、「家族や友人に就職先としてすすめたいか?」「ずっと働き続けたいか?」など会社全体の評価・愛着を調べます。

ワーク・エンゲージメント指標(仕事に対する熱量)

①活力、②熱意、③没頭といった3つのものさし(尺度)を使って仕事から活力を得ているか、仕事にやりがいを感じているか、熱心に取り組めているかを測ります。

エンゲージメントを向上させる指標

仕事に満足しているか、貢献できているという感覚が持てるかなどを測る指標です。エンゲージメントドライバーは、①組織ドライバー、②職務ドライバー、③個人ドライバーの3項目を使用します。

有名なエンゲージメント調査方法と質問項目例

本章ではエンゲージメント調査の代表的な方法を3つ、ご紹介します。具体的な質問項目もピックアップしたので、自社でアンケートを作るときの参考にしてみてください。

eNPS

1つ目の調査方法は「eNPS(Employee Net Promoter Score)」です。アメリカの会社が開発した調査方法をアレンジしたもので、0〜10点をつけ評価します。

数字が0〜6点は「批判者」、7〜8点は「中立者」、9〜10点は「推奨者」に該当し、推奨者から批判者を控除した数値がeNPSです。

質問項目は業種や会社ごとに異なり、自社で作成する際は部署や職種ごとに設計しましょう。たとえば「家族や友人が「あなたの会社で働きたい」と言ったら、すすめる度合いどの程度ですか?」と質問し、従業員が職場に抱く満足度を測ります。

Q12(キュートゥエルブ)

Q12はギャラップ社が提供している、12個の質問を指します。ギャラップ社は1,700万人を超える従業員に調査を行い、各従業員とチームのパフォーマンスを測るために12個の質問を編み出しました。質問項目を以下にまとめました。

  • 1.あなたは仕事で何を期待されているか知っていますか?
  • 2.あなたは自分の仕事を正しく行うための材料と設備を十分に与えられていますか?
  • 3.仕事で成果を出すための機会が十分にありますか?
  • 4.過去1週間で、成果への評価や賞賛の言葉をもらいましたか?
  • 5.上司や職場の同僚は気にかけてくれますか?
  • 6.あなたの成長を奨励してくれる同僚は社内にいますか?
  • 7.あなたの意見は尊重されていますか?
  • 8.会社の使命・目的は、あなたの仕事に誇りを与えてくれますか?
  • 9.あなたの同僚は成果に対してコミットできていますか?(質の高い仕事をしていますか?)
  • 10.社内に親友がいますか?
  • 11.過去半年で、仕事の進捗を誰かと話しましたか?
  • 12.昨年、成長・学習できましたか?

引用元:GALLUP

12個の質問から、「ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の浸透度合い」「会社から機会が提供されているか」「自分を認めてもらえているか」「人間関係」「成果・成長」の5つを測定します。

その他の質問項目例

次に経済産業省が行った経営競争力強化に向けた人材マネジメント研究会で配布された資料15ページに記載されているエンゲージメント調査の質問項目をご紹介します。

  • 1.私は、自分の会社全体としての目的・目標・戦略をよく理解できている
  • 2.経営陣は、事業の方向性について健全な意思決定をしている
  • 3.自分の会社はよい職場だと他の人にも勧めたい
  • 4.自分の会社で働くことに誇りをもっている
  • 5.自分の仕事について、給与や福利厚生など公正に報酬を得ていると思う

引用元:経済産業省主催 経営競争力強化に向けた人材マネジメント研究会

上記のような質問を50〜100個ほど用意し、仕事の充実度や貢献意欲を調査します。1つ1つの質問に時間が取られ過ぎないよう、質問項目を設計する際は従業員の回答負荷に注意しましょう。回答がストレスになると、アンケートの中〜終盤から適当に回答する人が出るリスクが高く、精度の低い調査になってしまいます。

従業員エンゲージメントを高めることが企業成長の鍵

ここまでの解説で分かる通り、従業員エンゲージメントが注目されるようになりましたが、実は日本人のエンゲージメントは米国に比べて低くなりがちです。

引用元:The State of the Japanese Workplace

アメリカの会社であるギャラップ社が2017年に行った調査で、従業員エンゲージメントに関連する「熱意にあふれる社員」の割合が日本はとても低くく、6%でした。また「やる気のない社員」は70%をという結果です。このことから、日本のエンゲージメントは低いと言えます。

エンゲージメントの向上に取り組み、社員一人ひとりが自発的に会社に貢献し働きやすい環境を整えることは、日本の企業にとって大きなプラスとなるでしょう。

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エンゲージメント調査に関するまとめ

エンゲージメントの向上を実現できれば、売上や純利益の向上や定着率の上昇など、会社にとって大きなメリットがあります。

効果的にエンゲージメントの施策を行うためにも、エンゲージメント調査を実施して従業員の現状を知り、効果の測定も定期的に実施しましょう。

優れた人材を確保するのは年々困難となり、これから先も人材不足は深刻になります。採用活動に力を入れるだけでなく、今いる従業員が定着する仕組みの導入を検討してはいかがでしょうか。