新入社員研修で行うべき内容やカリキュラムとは?進め方や注意点も紹介

新入社員研修 人材育成・マネジメント

新入社員研修は、社員を育成する第一歩となる重要な研修です。社会人としてのビジネスマナーだけではなく、考え方やコミュニケーションの取り方を学ぶと共に、業務に必要な知識を身につけます。

ここでは、新入社員研修で採用される代表的なプログラム内容や、研修の手法、進め方などについて解説します。

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新入社員研修の目的とは

新入社員研修の目的は、大きくわけて二つあります。一つは、社会人としてのマインドセットです。基本的なビジネスマナーや、ビジネスシーンで求められるコミュニケーションスキルを学ぶことで、自主的に行動できる社員を育成できます。

もう一つは、業務で求められる知識やスキルを身に着けることです。営業であれば、自社が取り扱うサービスや商品について詳しく知る必要があります。販売の場合は、扱うレジのシステムに慣れなければいけません。ほかにも、初級エンジニアを育成する新入社員研修や、配属適性を図るうえでいくつかの部署を経験する新入社員研修があります。

新入社員研修の内容と期間は、企業が設定するゴールによって異なります。現場での即戦力化を目指す場合や、OJTで業務に直結する知識・スキルを身に着ける場合は、研修そのものは短期間のほうが適している可能性が高いです。一方、エンジニアの育成など専門知識の習得を前提としているケースなどは、研修期間が長くなる傾向があります。

新入社員研修は何をするべき?主なカリキュラム内容

新入社員研修で、多くの企業が取り入れるのは、社会人としてのマインドセットを目的とした導入研修です。ここでは、導入研修で行われる主なカリキュラム内容と、職種別で活用される研修内容について紹介します。

導入研修など一般的な新人研修内容

一般的な新人研修では、ビジネスマナーやコミュニケーション研修のほか、自社の理解を深める研修が行われます。

自社への理解を深める研修

自社の事業内容や組織について学びます。また、自社のミッション・ビジョンを新入社員に浸透させる目的で行われます。新入社員研修の前半部分に組み込まれることが多いです。自社について理解を深めることで、新入社員は仕事に対する自信をつけることができます。

マインドセットに関する研修

マインドセット研修とは、新入社員に対して、学生から社会人への意識の切り替えを行い、仕事へのモチベーション向上を目指す研修です。他責思考から自責思考への切り替えや、モチベーションの源泉を探るワークショップなどを通じ、働く目的を明確にし仕事への主体性を高めます。また、自社のビジョンやミッションの浸透にも効果的です。

ビジネスマナーに関する研修

一般的なビジネスマナーを身に着ける研修です。名刺交換や電話対応など、社会人としてふさわしいふるまいや言葉遣いを学びます。また、相応しくない言動例を知ることで、従業員が顧客満足度を下げるような行動を起こすのを予防できます。新卒採用で入社した新入社員をメインに行われます。

ロジカルシンキングに関する研修

新入社員を対象としたロジカルシンキング研修では、相手に伝わりやすい伝え方や、自分の意見の整理の仕方を学びます。ロジカルシンキングのフレームを用い、仕事を進める際に起こり得るケースを通して、「いつ・どのように考えるべきなのか」を理解するための研修です。ロジカルシンキングを学ぶことで、新入社員が上司や先輩に対して、わかりやすく論理的な報告ができるようになります。

コミュニケーション研修

コミュニケーション研修では、業務に求められる「報告・連絡・相談」の望ましい形を身に着けます。社会人として、一人で仕事をするわけではなく、チームメンバーや上司の協力を仰ぎながら、いわゆる「ホウレンソウ」を行うことの重要性を学びます。ロールプレイングやワークショップを組み込み、現場で実践的に使えるコミュニケーションを身に着けることができます。

基本的なOAスキルに関する研修

業務で使用する基本的なパソコンスキルを習得するための研修です。昨今では、WordやExcel、Googleドキュメントなどを利用する経験には個人差があるため、必要性に応じてE-learningなどの個別研修を行う形もあります。また、業務で使用するクラウドサービスやシステムの使い方を学ぶこともあります。

職種別の研修内容

職種別の研修では、営業、販売、エンジニアなど、その業務で求められるスキルや知識に特化したプログラムを実施します。たとえば、営業の研修では商談のロールプレイングが欠かせません。顧客役と営業役の双方を経験することで、顧客の反応を読み取り、スムーズに提案ができるトークスキルやロジカルシンキングを学びます。

エンジニア育成研修では、数ヶ月などの中長期スパンで使用言語の習得などを行う例もあります。

新入社員研修の進め方

新入社員研修のプログラムを考えるにあたり、対象となる社員のスキルレベルの把握や、ゴールの設定からはじめましょう。以下に、一般的な新入社員研修の進め方の流れを解説します。

新入社員のスキルレベルを把握する

はじめに、対象となる新入社員のスキルレベルの把握を行いましょう。新卒採用で一括で実施するのか、配属部署ごとにグループにわけて実施するのかでも、把握するべきスキルが異なります。

一般的なパソコン研修を行うような場合には、事前アンケートを対象者に実施することでスキルを把握できます。職種別の研修であれば、同職種の職歴を持っているかどうかがポイントとなるでしょう。

研修の目的や目標を設定する

次に、研修のゴールを設定します。ゴールとは、研修後に参加者に「なってほしい姿」を意味します。「社会人としての意識を向上させたい」「業務で必要なサービスの知識を身に着けてほしい」など、具体的なゴールを設定することで研修プログラムの検討の際に役立ちます。

実施期間を決める

目的に沿って、研修の期間を設定しましょう。新入社員研修の実施期間は、1週間~2週間ほどで設定する企業が多くみられます。研修期間が短い場合は、現場に配属されたあとのOJTや教育体制が従業員のモチベーション向上のポイントとなります。

研修期間に専門知識を習得させる目的であれば、1ヶ月~3ヶ月の比較的長期の研修が行われます。研修期間が長い場合、仕事に必要な知識を丁寧に教えられる一方で、新入社員にとっては成長の実感が薄いというデメリットがあります。先輩社員との交流機会を設けたり、研修中でも目標を設定したりするなど、モチベーション維持のための取組みが重要となります。

研修の手法を決める

実施期間とあわせて、研修手法を検討しましょう。研修手法には、日中に行う集合研修、現場でのOJT、個別に行うe-learningがあります。また、外部講師に依頼するかどうかも、この時点で視野にいれておくといいでしょう。

具体的なカリキュラムを決める

研修の実施期間や手法とあわせて、具体的なカリキュラムを決定しましょう。講師を社員に依頼する場合は、早めの調整が必要となります。現場の業務が切迫している場合には、ビジネスマナー研修やロジカルシンキングの研修などでは、外部講師に依頼することで、社内のリソースを有効活用できます。

研修の実施と振り返りを行う

研修の実施後は、振り返りを行うことで、次年度の研修プログラムに活かすことができます。研修の振り返りは、匿名のアンケートを実施することで、参加者の率直な意見を収集できます。また、フォローアップ研修を実施し、新入社員の成長点を定期的に観測することで、研修がどのように人材育成に貢献しているかを把握することが可能です。

新入社員研修は外注か内製か?それぞれのメリット・デメリット

新入社員研修のプログラムを検討するにあたって、重要となるのが講師の選定です。外部講師に依頼する方法と、社内で講師を依頼する方法の2通りがありますが、それぞれにメリット・デメリットがあります。

内製するメリット・デメリット

まずは新入社員研修を内製するメリットとデメリットをそれぞれご紹介します。

社内で講師を依頼するメリット

講師を社内で依頼し内製する主なメリットは、以下になります。

  • 会社の実情に合わせて研修プログラムを作成できる
  • コストを抑えられる
  • スケジュールの調整がしやすい
  • 研修ノウハウを蓄積できる

まず、会社の実情に合わせて研修プログラムを作成できる点が大きなメリットです。また、講師に依頼するコストが発生しないことや、スケジュールの調整がしやすい点がポイントとなります。

とくに、事業紹介やサービス紹介を目的として研修では、会社への理解が欠かせません。また、マインドセット研修でも会社のビジョン浸透が重要となるため、会社について理解している社員が講師を務めることが望ましいといえます。

社内で講師を依頼するデメリット

一方で、内製のデメリットとしては以下になります。

  • 社員の負担が大きい
  • 講師によってプログラムの質に差が出る

現場の業務との調整が難しく、社員に負担がかかる点がデメリットとなります。業務の繁忙期とはずらして研修を実施するなど、実施のタイミングを慎重に検討することが大切です。

また、研修を担当する社員によって、研修の内容に差が出てしまうのも注意しなければいけない点です。はじめて講師を依頼する社員に対しては、事前の打ち合わせで目的を共有したり、プログラムやテキストを共に考えるなどのサポートが重要になります。

外注するメリット・デメリット

続いて、新入社員研修を外注するメリット・デメリットを紹介します。

外部に講師を依頼するメリット

講師を外部に依頼するメリットは以下になります。

  • 専門家のノウハウをプログラムに反映できる
  • 現場の負担を抑え、多種多様なプログラムを実施できる

まず、プログラム内容の充実を図れることが大きなメリットになります。プロフェッショナルの講師が行うため、研修の質を向上できます。また、現場に負担をかけることなく、多種多様なプログラムを取り入れることも可能です。

外部に講師を依頼するデメリット

一方、外注のデメリットは以下の通りです。

  • コストがかかる
  • スケジュールが合わないことがある

外部講師に依頼する際に慎重に検討するべきは、第一にコストです。自社の予算とあわせて、複数の講師やサービス会社に見積もりをとり検討しましょう。

また、新入社員研修の繁忙期には、講師のスケジュールが埋まってしまうことがあります。早めの調整が重要です。

新入社員研修における主な教育手法

新入社員研修では、複数の手法と組み合わせることで、参加者の満足度を上げることができます。また、予算を抑えたり、現場の負担を減らすことにもつながります。以下に、新入社員研修で取り入れられる教育手法について解説します。

OJT

OJTとは、On The Job Training(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の略称です。現場の上司・先輩社員が指導役を担い、実際の業務を通じて新入社員を教育する手法です。マンツーマンで指導する場合は社員の習熟度に合わせて教えられます。また実務で必要な手順やスキルを身に着けやすく、即戦力を育成できるというメリットもあります。小売業やアパレル業等、店舗で新入社員を研修する際などに用いられます。

ただし、指導役を担う社員の負担が大きいという点は考慮しなければなりません。指導役のスキルや経験によっては、内容に差が生じるというデメリットがあります。

OFF-JT

OFF-JTとは、OJTとは逆で座学で知識を身に着ける研修をいいます。ビジネスマナー研修など、講師の話を聞くスタイルのプログラムに適しています。多くの知識を大勢に伝えられるため、効率よく研修を行うことができます。ただし、OFF-JTで身に着けた知識を、実践で活かすというような組み合わせが重要です。オンラインのコンテンツが充実している昨今では、実際に集まる研修以外に、オンラインでOFF-JTが行われることもあります。

ロールプレイ

ロールプレイとは、業務に必要な役割を演じることを通じて、適切な立ち振る舞いや考え方を身に着ける研修手法です。営業や接客など、対面で顧客と接することの多い職種で用いられます。また、名刺交換や電話対応、来客対応など、一般的なビジネスマナーを身に着ける際にも適しています。

グループワーク

グループワークは、座学で身に着けた知識をさらに深めるために取り入れられることの多い研修手法です。テーマについて話し合い、グループでまとめた内容を発表することもあります。グループワークの研修を通じて、メンバーとの考えを共有したり、課題解決へのプロセスを体験することができます。

レクリエーション

新入社員研修では、社員同士の親睦を深める目的もあります。そのため、緊張をやわらげたり、お互いを知るためにレクリエーションが用いられることがあります。レクリエーションでは、ゲームが用いられることもあります。目的を説明し、振り返りや発表を組み込むことで、楽しむだけではない研修の一貫として行うことができます。

ケーススタディ

ケーススタディを用いた研修では、新入社員は発生しがちなトラブルへの対処法を学ぶことができます。過去にあった事例をもとに、「クレーム対応」や「発注ミス」などのテーマを設け、解決するための視点を身につけます。ケーススタディを通じて、過去の失敗例を学び、リスクを回避する行動を身に着けることができるでしょう。

eラーニング

e-ラーニングは、オンラインで学べる研修手法です。時間や場所を選ばず個人で学習できるため、スキルレベルの差がある場合は、新入社員が遠隔地に滞在している場合などに適しています。また、OJTの内容を補完するためにも用いられます。

フォローアップ研修

フォローアップ研修とは、新入社員研修が終了したあとに実施する研修です。新入社員研修での気づきや成長について参加者にアンケートをとったり、配属後の部署での課題感についてヒアリングを行います。

新入社員研修はいつから行う?実施期間は?

新入社員研修は、社員の入社日からスケジュールを組み立てることが一般的です。

1日目はオリエンテーション的な要素を多くし、翌日から本格的な研修カリキュラムを実施します。実施期間は、短い場合は1週間、長くなると3ヶ月ほど実施する企業も少なくありません。

新入社員研修の適切な期間については、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてください。

新入社員研修の期間

新入社員研修の適切な期間は?平均値や決め方、期間別で得られる効果

新入社員研修の評価方法

新入社員研修では、教えるだけで評価されることがないと、参加している新入社員のモチベーションも下がってしまいます。評価項目を可視化することで、研修に参加する緊張度を高めることができます。

評価項目

新入社員研修の評価項目で大きな割合を占めるのが、「ビジネスマナー」や「業界の基礎知識」です。こうした項目は、ロールプレイングや簡単なテストを通じて評価することができます。電話対応やメールのやり取りなど、基本的なビジネスマナーができているとわかれば、新入社員も安心して現場の業務に取り組むことができます。

また、コミュニケーションスキルや協調性も新入社員の重要な評価項目です。業務では、多くの人との連携が求められます。ビジネスシーンに合わせて、他者と協調できるかをグループワークなどを通じて評価しましょう。また、なんらかのテーマに基づき一つのことをやり遂げるような研修では、新入社員の主体性を図ることができます。

さらに、仕事へのモチベーション、意欲も評価ポイントとなります。任されたタスクに対して、責任を持ってやり遂げているか、分からない点があれば放置せずに周りに聴けるかといった点がポイントとなります。

効果測定方法

新入社員研修の効果を測定するには、アンケートもしくは理解度チェックテストを用いるのが一般的です。アンケートの場合は、匿名にすることで新入社員の率直な声を集めることができます。アンケートではなく、上司との1対1の面談にするのも一つの方法です。新入社員が抱いている不安を聞き、和らげるという効果も期待できます。

理解度チェックを実施する場合には、評価にどのように反映されるのか、評価とは別物かどうかなどを明確にしておきましょう。

新入社員研修を実施する際の注意点

新入社員研修を効果的に実施するためには、以下のポイントに注意しましょう。

座学だけで終わらせない

e-ラーニングや集合研修は、効果的に知識を身につけさせられる研修手法です。しかし、座学ばかりの研修だと、新入社員が成長を実感できず、仕事へのモチベーションが低下してしまうリスクがあります。とりわけ研修期間が長くなればなるほど、座学とOJTをとの組み合わせを意識しましょう。

研修後に適切なフォローアップをする

研修での学びが実務にどれだけ活かせているかどうか、フォローアップ研修を行うことで把握できます。新入社員も、フォローアップ研修を通じて、自身の成長や課題を見直すことができます。新入社員研修で学ぶ内容は、社会人生活の基礎となるものです。一定期間が経過したのち、フォローアップ研修を行い、振り返りを実施しましょう。

有名企業における新入社員研修の事例

最後に、有名企業での新入社員研修事例をご紹介します。

ミクシィの新卒研修の事例

ミクシィでは、新卒エンジニア向けにさまざまな技術研修を実施しています。研修の種類は、「git研修」「データベース研修」「iOSアプリ開発研修」「フロントエンド研修」「ゲーム開発研修」と多種多様です。研修では、最初に目的を明示しているため、何を学びどようになれるのか、参加者が理解できるようになっています。会社からの期待感も伝えられます。

参考:ミクシィの21新卒技術研修の資料と動画を公開します! – MIXI DEVELOPERS

サイバーエージェントの新卒研修の事例

サイバーエージェントでは、対面とオンラインを組み合わせた新入社員研修を実施。1週間の合同研修を実施したあと、「ビジネスコース」「エンジニアコース」「クリエイターコース」の3つの職種に分かれた研修を実施しました。

ビジネスコースの研修では、「2023年度の入社セレモニーを考えよ」というテーマのもと、疑似クライアントワークを実施。研修を通じて、新入社員はアポイントメントから提案までの一連の流れを体験できるとともに、メンター社員のフィードバックをもとにプレゼンテーションを行いました。

プレゼンテーションで勝ち抜いた参加者は、最終コンペに参加できるなど、体験と評価を効果的に組み合わせた研修内容となっています。

参考:サイバーエージェント2022年 新卒研修をご紹介! | CyberAgent Way サイバーエージェント公式オウンドメディア

サイボウズの新卒研修の事例

サイボウズでは、オンラインとオフラインを組み合わせ1か月の新入社員研修を実施。講義形式はオンラインで行い、ディスカッションの研修はオフラインで行うなど、参加の利便性とメンバーのコミュニケーションの両面を重視しました。

また、同社では勤務場所や時間を社員ひとりひとりが選択できる制度を導入しており、新入社員研修でも、2週目と3週目の参加場所を在宅かオフィスかを選べるようになっています。会社の方針を浸透させた新入社員研修といえます。

参考:サイボウズの「入社式」「新人研修」今年は”ハイブリッド型”で実施しました

新入社員研修に関するまとめ

新入社員研修は、長い社会人の基礎となる大切な研修です。新入社員研修での学びは、時間が経っても忘れないというケースも少なくありません。会社として重視している方針をもとに、研修のゴールを組み立てましょう。複数の研修手法を用いることで、効果的な新入社員研修を行えるでしょう。