【セミナーレポート】2025年問題に備える人材活用術!企業が取り組むべき人生100年時代のキャリア開発支援とは

セミナーレポート

 







人生100年といわれる現代において、個人におけるキャリア開発の重要性が高まっています。

2025年には団塊の世代800万人が75歳となり、人材不足の激化が予想されるなかで、法政大学キャリアデザイン学部の田中研之輔教授は「人的資本の最大化」、そして「主体的なキャリア形成(プロティアンキャリア)」が重要であるといいます。

2021年11月25日に行われたセミナー「2025年問題に備える人材活用術!企業が取り組むべき人生100年時代のキャリア開発支援とは」において、詳しいお話をお聞きしました。

株式会社morich代表取締役の森本千賀子氏、タレントマネジメントシステム「スキルナビ 」を提供する株式会社ワン・オー・ワン代表取締役社長の二階堂隆氏とのディスカッションとともに行われた本セミナーの様子をレポートします。

今後予期されている2025年問題とは

田中教授:今日のポイントは2025年問題に備える人材戦略とのことで、私もこのトピックに関しては日頃から考えています。

まず2025年問題とは何かというところからスタートしたいのですが、現在の人口推移からみた場合、2025年に団塊世代800万人が後期高齢者である75歳を迎えるとされています。
(※セミナー資料より)

そのため、今後は団塊世代の方がどんどんと退職されていき、若手人材が少ない中で、人材不足の激化が予想されます。
 

2025年問題への対応策

キャリアの視点から私達が考えているのが、人材活用です。

つまり、今働いてる方たちに今後どれだけより豊かに働いてもらえるか、そういった環境をテクノロジーとキャリアHR領域で作っていけるかが、2025年問題に対処する一つの有効策だと考えています。

職場環境が劇的に変化する中で、実際のところ我々に何ができるのか、組織開発の視点なども交えながら、組織力向上の実現を図っていければというふうに思っています。
そのためにやるべきことが、アカデミックな知見と現場の実践を相互に行っていくことだと考えています。
 

企業内でのキャリア形成を阻む「三つの課題」

企業が今抱えている問題は明確で、30歳以下だと不透明なキャリア展望があります。これからのキャリア形成の仕方がわからない、ということです。

また、私もちょうどそのぐらいですが、ミドルシニアは組織内キャリア依存ということがあります。働いてはいるものの、ポテンシャルを高くして働いてるわけではなく、組織に依存してしまっている、ということ。
そして、私から見てもう少し先の先輩社員世代になると、ポストオフ後のモチベーション低下があります。
(※セミナー資料より)

このあたりをどのように乗り越えていくかということで、今重点的に取り組んでることの一つが「人的資本の最大化」です。
 

「人的資本の最大化」の実現に向けて

「人的資本の最大化」を避けては通れないということで、これをいかに実現し得るのか。一つのアクションとしては、経営戦略とキャリア戦略の連携があります。なぜかというと、経営戦略と人材戦略上の課題が直結しているためです。(※セミナー資料より)

例えば、人生100年時代において、経営戦略上の優先課題としては、シニア人口増加・若年人口減少への対応、そして社会で活躍する期間が長期化し、個人のキャリア意識が向上しているということがあります。

一方、人材戦略上の優先課題としては、人材や価値観の多様化への対応、従業員の自発的貢献意欲(エンゲージメント)の向上、自律的なキャリア構築の支援、成長機会の提供があります。

共通するポイントはやはり自立的なキャリア構築。どうやって人事や経営、HRの領域でどうサポートできるかです。

「人的資本の最大化」に向けた課題

ところが耳の痛い話になりますけども、基本的に日本の人事部門というのは成長戦略を担えていません。

経営戦略を担える、つまりグロースユニットに人事部門・人材開発が生まれ変わることがこの3年から5年の間に非常に重要だなと思っています。そのためには人事戦略と経営戦略を結びつけて考えること、ですね。

ところが、人事戦略と経営戦略が紐づいてないんで、常にタイムラグがあるし、常に経営の方針と人事の方針が結びついていない。

これまでの日本型雇用で、人事部が何をやっているかっていうと、労働力の管理調整コントロール配置です。ただ、これからは人的資本をいかに最大化させるかってことに関して、どれだけやれるかってことだと思うんです。

その上で今考えてることで言いますと、経営戦略と人材戦略を結び付けてやるべきことは、組織内キャリアから自律型キャリアへっていうふうに転換させることです。
(※セミナー資料より)

ですので、2025年問題の人材活用術の一つの答えは、やはり自立型人材を増やすということでしかありません。採用を点で捉えない、人材調整で捉えない。線、中長期で考えて人材戦略の中に位置づけて、組織をつくっていく。

そして組織内人材という視点ではなくて、それぞれの人的支援を最大化させる場所として組織を有効活用できるように、キャリア開発施策を埋め込んでいくってことですね。そのためには、経営戦略や事業戦略、キャリア戦略を繋ぐ採用なんかが有効ですし、少しずつムーブメントになってます。

皆さんが知ってるような名だたる日本の大企業でも、キャリア自立、キャリアオーナーシップが社会を動かすんだよってことで、人事や経営の方と相談しながら、先ほどの問題を解決する形で展開してます。

キャリア自立の最新理論:プロティアンキャリア

キャリア自立の背骨、理論的枠組みになるのがプロティアンという考え方です。プロティアンというのはキャリア自立の最新理論で、姿を変えながら、変化に適合しながら生き延びていくということです。


(※セミナー資料より)

これは持続的キャリアと言い換えてもいいんですけども、組織にキャリアを預けるんじゃなくて個人自ら作り出していく。

そのために組織側も、個人のキャリア形成を応援するような社内プラットフォームもしくはコンディションチェック、あるいは開発支援というのをしていく必要があります。

それを、年に1回ではなくて、パルスデータというんですけども、定期的に診断しながら、それを伸ばしていくような環境整備が求められていると考えています。

自ら主体的にキャリア形成をしていって、キャリアオーナーシップを持つこと、つまり、一つの組織の中で働いてるんだけど、本人たちが自ら主体的に、本人らしくありながら、アダプタビリティに適合する力を備えていくこと、そして、企業側は、本人らしくありながら本人の成長を応援していくチームをつくるということです。

それは従来型だと組織の中の人に対する人材開発というフレームでしたが、コロナを経て、劇的な歴史的転換期を迎えています。これから大切なのは、キャリアディベロップメント、個人を応援する組織であるし、プライベート領域なのです。
(※セミナー資料より)

ですので、個人の方に比重を置きながら、どのような展開になるかといったら、伝統的なキャリアからやっぱり180度変わるってことですね。

組織の主体が組織から個人へと移行するというように説明すると、いやいや勝手に働かれても困るよみたいなリアクションがあるんですけど、全くそんなことはなくて、プロテインキャリアは、個人と組織の関係性を良くする、というふうに考えます。

(※セミナー資料より)

プロティアンキャリア(自立型キャリア)開発の課題

そのため、リレーショナルアプローチということで、本人は何がしたいのか、本人の市場価値は何か、それを把握しながらキャリアを動かしていくのですが、それには課題があります。

キャリア開発支援ということに関する認識、リテラシーが低すぎるんです。

(※セミナー資料より)

例えば経営層だと、そんな必要はないでしょうというふうに思っているケースもある。逆に、もう今からの経営っていうのは無形資産経営だからキャリア開発だよねっていうふうにおっしゃる経営者もいて、そこが両極化してます。

社内の理解がない会社さんと理解のある会社さん、そして組織風土にこれまでの従前型の展開と新しいトライをしてる会社の二極化が進んでいるんです。人的スキル、時間コストの問題です。

ただ、やっていないのか、やっているのかというと、キャリア開発に関しては、どの会社さんもやられてるんですよね。

ですので、人材活用術としてのキャリア開発はゼロスタートじゃないってことです。1はあるわけで、1は何かって言ったら、例えば、キャリア開発を行ってますかって聞くと5000人以上の企業は97%がやってるんですね。

でもそれが有効活用されてるかどうかはチェックする必要があります。

社内公募制度ありますよ、というように、大手企業はやられてるんですよね。やられてるんだけど、それが機能するかどうかっていうところには課題が残ると。

自立型キャリア開発に必要なこと

人材活用術の一つの答えがキャリア自立だと私は考えてるんですけど、今一番早急にやらなきゃいけないのが、キャリア開発工程の主観的判断から、できるだけ客観的、そしてデータドリブン、テクノロジードリブンで分析をして、自分たちのコンディションをチェックするということです。

キャリア領域はそれがもう決定的に遅れています。

(※セミナー資料より)

例えば、医療であれば予防医学と言われるように、血液を取ったらそれでがんの確率がわかり、診断ができるんですよね。他の例で言えば、アスリートのコンディションチェック。同じようにしてデータで分析しています。

でも我々ビジネスパーソンのキャリアコンディションというのは、なぜか上司が1on1をして、雰囲気で、感覚的に「A君はこういうふうにした方がいいよ」というように、主観的な領域でやられている。

それは良くないことで、やらなきゃいけないのはDXとCX。DXはデジタルトランスフォーメーションの略ですが、CXっていうのは、キャリアトランスフォーメーションのことです。

キャリアトランスフォーメーションに関しては、性別・年齢・職位・勤続年数・規模なんかは関係なく、いつからでもできるんです。
一つ、皆さんと共有したいのは、プロティアン型キャリア、キャリア自律型のトランスフォーメーションをしていきましょう、ということです。
 

これからの企業が取り組むべき課題


(※セミナー資料より)

三つの戦略策定、つまり経営戦略と事業戦略、そしてキャリア戦略をしっかり展開していくということです。

これは私が今、これからの日本型雇用の三種の神器というふうに思っているんですけれども、これをやらない限り、100年時代の企業が取り組むべきキャリア開発がうまくいかない。

それで、私1人でやってもしょうがないので、今協会を立ち上げて、推進企業群と事業提携をして、キャリア自律型を展開しています。例えば新人材戦略ということでいうと、人材戦略とか経営戦略ということを考えていくってことですね。そして選ばれる組織にならなきゃいけない、ということです。
 

キャリア開発の課題

この辺まで来ると、いろいろ課題感というのはわかってきたかと思います。

キャリア領域の課題は、過去の分析をしていたこと、分析が点や主観で行われていたということです。
そしてもう一つ、経営とずれていたっていうのが明確な問題です。

(※セミナー資料より)

だから今やってるのは、事業や経営の未来戦略の中にキャリア開発も位置づけていこう、点で考えるんじゃなくてキャリア資本で考えましょう、そして新人材戦略で考えていきましょうということです。

個人化したキャリアに関して、組織の中のキャリアとは違ったフレームが必要なので、おそらくこの半年ぐらいの間に、厚労省経産省がキャリア資本ポートフォリオっていうのを、ポータブルスキルみたいな言い方で出してくると思うのですが、このキャリア資本ポートフォリオというのをつくって考えることが求められるようになります。

(※セミナー資料より)

こういったような個人が何をしてきたかっていうことを考えることが、求められるようになります。

プロティアン人材を生み出すためには何かって言ったら、やることは決まっていて、現場のヒアリング、そしてやっぱりやってることをしっかり発信していくってことも大切です。

ですので、人材活用として言うと、例えば「キャリア自律型のキャリア開発をやっているんだよ。そして、客観的なデータを導入しながら、こんな変化がでてるんだよ、こんな良い状態が生まれてるんだ」ってことを発信しながら、バイラルを起こしていくっていうのが有効策になってくるんじゃないかなと思います。

見取り図としてまとめると、経営戦略・キャリア戦略・事業戦略と見据えたとき、キャリア戦略のところって今まですっぽりと抜けてたんですよ。抜けてたから、全部これを経営の現場にも埋め込むっていうことをやってるんですけど、診断をして、しっかりそれに向けてトレーニングしていこうということです。

(※セミナー資料より)

そして最後に、2025年問題に備える人材活用術の組織開発工程で言うと、組織内キャリアからプロテインキャリアもしくは自律型キャリア、主体的なキャリアでもいいけど、とにかくそちらの方向性に持っていくということです。

そのためには我々関係者がキャリア理論に関する基礎知識、これをリテラシーとして身につけることが必須です。

その上で、人事部の中にキャリアコンサルタントの方を入れる、あるいは社内にキャリアコンサルタントを配置できないのであれば社外と連携提携してもいいので、そのようなリソースを社内のキャリアコンサルティングの中で展開していく。

手法としてはもちろん、社員教育、そして研修なんかも行う。その上で、キャリア開発をしっかりしていくということが大切です。

そして一番抜けてるのが、診断と評価、育成。ここのところが本当に主観的ですので、今後のポイントになります。私自身も今企業現場の方に足を運んで、このあたりの問題解決に向かって取り組んでいます。


(※セミナー資料より)



 


ここから、株式会社morich代表取締役の森本千賀子氏、株式会社ワン・オー・ワン代表取締役社長の二階堂隆氏とのディスカッション


2025年問題に備える人材活用術の知見に関して

森本氏:田中教授のお話に非常に共感していまして、特にコロナ禍ですね、経営者のキャリア開発に関するリテラシーの格差が本当に広がったなと。

「なんかオンライン研修しとけばいいんでしょ」って言うんですね。「とにかくインフラさえ用意しておけばいいんでしょ」っていう。そういう会社が大半だったんですよね。

また、やはり課題を感じるのは、問題意識は人事の方も持っているんですけど、実際いろいろな環境の中でキャリア開発していきましょうと、これから個人個人のキャリア大事ですよって言って、いわゆる組織人である社員の方に話すんですけど、実際蓋を開けてみたら、例えば自己申告の異動申請とかっていうのが実態としてはもう形骸化してしまってるとか。

FA制度とかってもうほとんど手を挙げる人がいないとか。だからあまりそこを促さないでくださいとかって言われるような会社もあったりとかしてるんで。ジョブチェンジとかって言葉を発信しても、実際なかなか今難しいんでとかですね、矛盾を感じるようなシーンが結構ありましたね。

田中教授:森本さんはもう長年、企業の現場をずっと追いかけてきて、変化は感じますか?コロナは大きな変化だったんでしょうか?

森本氏:非常に感じますね。先ほどから組織から個人へっていう話がありますが、そもそもまず組織が個人を守れなくなっていますね。個人を守らないって言いましたから。

田中教授:経団連のね、もう亡くなられてしまいましたけど中西さんと、トヨタの会長の豊田さんが「もう自分でキャリアを築いてくれ」とおっしゃってましたね。2019年、コロナの前に、経団連のトップが、もう守れないとパブリックメッセージを打ちました。

森本氏:はい。そういうメッセージが発信されているって意味では、もう完全に個人が意識的に学ばなきゃいけない。

なおかつ、いわゆるテクニカルスキルじゃなくても、よく言われるポータブルスキルとかスタンスとか、そこを鍛えるのって、まさに学習力だと思うんですけども。

その環境は与えられても、まず自分がどう学べばいいかっていうことと、その学んだことをしっかりと体系的に診断して、評価するっていうサイクルが全くないという状態ですね。場所だけ与えられてるっていう状態だなと思います。

田中教授:二階堂さんは、全般的な感想も含めてどうですか?

二階堂氏:森本さんと一緒で、本当に共感してます。もう本当におっしゃってることがぴったりはまってきまして。

私も人材育成には前職Oracleのときからエンジニアとして関わってまして。ただ実際にそれを可視化していくっていうことに関しては、なかなか難しい点があるんです。

何が必要なのか、どんなジョブが必要なのか、そのジョブに対してどういった能力が必要なのかということを、地道に、明確に定義していく必要性を非常に強く感じています。

また、コロナ禍において様々なことが見えてきますと、一定程度そういった部分を可視化していきたいといったようなニーズも強まってきています。

田中教授:そうですね。今はオンラインになって、最近は戻ってる企業さんも多いですが、多分ハイブリッドの働き方って残っていくんですよね。

そうすると、おそらく上長と現場社員との関係性が今まで以上に見えなくなってきている。例えば、オフィスで共有する時間は減っていくから見えなくなってるんだけど、それぞれ自立型で働いてるっていう環境の中で、何を可視化していくかってのは結構ポイントですよね。

ここから話題は移り、人材活用術に関する新しい知見についてのお話にーーー


(※セミナー資料より)

田中教授:森本さん、今回の2025年に備える人材活用術でいうと、何か新しい知見やキーワードってありますか。

森本氏:そうですね、やっぱり最近ちょっとバズワードになってるような、リスキリングですかね。

先ほど田中先生も仰ったように、やはりこれからDXが進み、ビジネスの構造とかも変わっていく中で、今までの延長線のキャリアは通用しなくなるっていうのも目に見えています。なおかつ、AIだとか、RPAだとかっていうようなツールが入ってくる中で、もしかしたら今目の前でやってる仕事を変えていかなきゃいけない。

そういう意味で、積み上げてきたキャリアというのではなくて、新しいキャリアを作っていかなきゃいけないことでいうと、リスキリングの機会はこれからすごく増えてくると思うんです。

ただ、今は何をどう学べばいいかっていうのが全く見えていないと感じていて、そこの見える化に関して、データ分析やツールを活用しない手はないと考えています。

田中教授:だから、問題はミドルシニア層の組織内キャリア依存ですよね。

45歳ぐらいだともうそこで守られてる感があるから、あんまり学ばないんです。その先にポストオフとなると、モチベーションが低下してしまって。

人口ボリュームが多いミドルシニア層もしっかりキャリアコンディションチェックをしていただきながら、何が必要で、リスキリングにはこれがおすすめだよね、みたいなことも言えるといいですよね。

森本氏:そうなんですよ。やっぱりそこの気づきがない中で学べ学べって言っても、学ぶきっかけにならないなと思って。それはやっぱり突きつけなきゃいけないなっていうふうに個人的に思いますね。

田中教授:二階堂さんは、キーワードで言うと、興味深いテーマは何かありますか。

二階堂氏:そうですね。人材活用ということで、タレントマネジメントが肝要ですので、ここを行うためには、やはり職務の定義などを明確にさせる必要があると感じています。

あとは、今までのように「この職務はこういうこと」という単純な文章ではなくて、分析できるような軸にまで落とし込むというところが必要かなと思っています。

分析できるような軸まで落とし込むことで、「あなたは今こういったポジションで、このぐらいのことまでできてます」「これに関しては、我々の会社ではこのぐらいのポジションの仕事までできてます」というところが見えてきます。


(※スキルナビ のデモ画面より)

それによって、本人のコンパスといいますか、次にどこへ進むべきなのか、実はここに手を伸ばせば何かできるんじゃないか、といったところに気づきを与えてあげるっていうのは、現場の人たちには必要なんじゃないかと思います。

田中教授:二階堂さんから見て、HRキャリア領域のテクノロジーのところで、これ注目だよねとかもうここがやりきらなきゃ駄目だって言うと、どの辺がポイントなんですか。

二階堂氏:年を重ねていくごとにどんどんその業務が変わってきますので、やはりその変化する業務に対応するのもタイムリーにシステムが付いていかなきゃいけないと思っています。一般的な要件定義をした上で開発していくっていうスタイルでは全く間に合わないです。


(※スキルナビ のデモ画面より)

田中教授:そうですね。だから正直な話、僕はJD(ジョブディスクリプション)だと全然意味がないと思っているんです。ジョブディスクリプションって、やってきたことを書いてるだけで。それでフィッティングしたところで、世の中が求めてるスピード感に対して、組織側の配置のスピード感・柔軟さが遅れていっちゃうと思っているんですけど、おそらくそういう感じなんですね。
 

採用・人事で行われる主観的な判断について


森本氏:あとは、採用現場もまだまだ属人的で、田中先生が仰ったJDとかも、人事の方が現場にヒアリングするんですけども、その現場のマネージャーなり部長なりの主観が入ってるんですよね。

例えば、ロールモデルになるような部分だとか、その企業が求めているのはこういう人材っていうところの要件定義が見える化されていないので、それと、JDとかが本当に繋がっていない、ということは日頃から強く感じますね。

田中教授:そう。僕も外から入り込むから、企業現場で起きてきたことってすごくわかりやすいんですけど、人事の人はすごく人柄がいいんですね。優しくて温厚で、それは人事が人の専門家だから、と仰ってたんだけど。

優しいし、熱量も高いから、主観的に全部判断していくんですよね。それで何が起きるかっていうと、3年ぐらいでローテーションして変わっちゃうと、引き継ぎも何もなく、また1からということになるんです。

なぜならば、それが暗黙知の領域で、専門的スキルが伝達・継承されないから。もっと可視化して言語化して、次の人事には業務だけじゃなく、診断や評価の見極めなんかも、もっと継承したらいいのにと思うんですけど。

だから、どんどん変わってしまって同じことを繰り返すチームか、もしくはもう今やってるのがプロ人事ってことで、長年働かれてるCHROの人たちがずっと入って、もうその人に任せるっていう二つしかなくて。

森本氏:私、今から思うとリクルートはやっぱり進んでた会社だなと。データ分析とかをどこまでやっていたかっていうのは別として、例えば人事には、必ず評価者会議っていうのがあるんです。

マネージャー同士が集まって各メンバーの評価を決めるわけですけど、評価者会議で必ず人事がそこに入ってて、ポリシーだとか、横の目線みたいなものを合わせるとか含めて、ちゃんとコントロールしてくださったんですよね。

今でもすごくありがたくて、感謝している上司からのメッセージっていうのがあって、「とにかく会社と会社組織というのは、まず評価っていうのが会社の価値観なんだ」と。

だから、ちゃんと評価の仕組みとか、例えばどういうようなKPIを上げれば評価されるのかっていうところをしっかり理解した上で、自身の行動に落とせ、ということを、入社したときに言われて。

評価の体系だとか制度だとかその中身とかっていうのをすごく意識しながらな実は25年過ごしてるんですよ

そういった方って意外なほど少ないんじゃないかと思います

田中教授:それで、テクノロジーが希望の光なんですよね

森本氏:それがちゃんと可視化されて、自分が何をやれば評価されるのか、会社の価値観のベクトルと合うのかってことがわかる時代になったなって本当に思うんですね。


(※スキルナビ のデモ画面より)
 


ここから、セミナー参加者による質問タイム


Q.個人の主体的なキャリア開発が前提なのですが、中にはその必要性に気付いてない、薄々気づいているけど行動には移さない、移し方がわからないといった人もいます。そういった個人に対してのアプローチでご意見をいただけますでしょうか。


森本氏:やはり、まずは危機感が大事だと思っています。

キャリアの第一人者であるリズ・ワイズマンっていう学者さんがこんなことを仰っていて、私もそれを見てはっと気がついたんですけど、今は科学的な情報の量がものすごく増えていて、9ヶ月で2倍のペースで増加している。

それで、1年間に3割がもう時代遅れとなっていて、常に今持っている知識やスキルをアップデートし続けない限り、5年先に使えるものは15%しか残っていないと。だから85%はもうどんどん陳腐化するっていうことを、まずその危機感をちゃんと認識してもらうっていうことが大事です。

そのあとは移し方とか、どのスキルを必要とするのかみたいなことを主観で判断することは難しいので、データ分析の中から見つけていくしかないと思うんですよね。


(※スキルナビ のデモ画面より)

田中教授:あとは、プロティアンの知見からすると、前提として性別とか年齢とか職位とか勤続年数は問わないんです。つまり、いつからでも誰からでもできるということです。

ところが人事の方とお話していて、「えっ」って思う瞬間は、ミドルシニアのこの人たちはもう変われませんよ、と仰ることです。

やはりそう仰ってしまった時点で駄目だと思うんですよね。組織が変わってくるんだから。

それで、NTTコミュニケーションさんを事例にして、50歳の方に1on1を行った場合のデータを分析すると、75%には変化が生まれたんですよ。

つまり25%は変化が起きなかったということで、このとり方は結構難しいのですが。でも、50歳の75%が自立型へと変化が生まれたっていうのはポジティブに捉えていいと思うんですよね。

だから、全部が全部、同じ施策で刺さるかっていうと難しいけど、例えばリスキリングに向けてのキャリア開発施策でいえば、それはeラーニングでもいいし、オンライン研修への参加、あとはリアル研修での講習費用を会社が予算を組んで出してあげるとか、そういった色々な工夫ができます。一点で全部変わるんじゃなくて、全方位でいくっていうことですね。
その上で、企業現場の方々と話をしてると決定的に問題なのが、人事が労働集約型で工数を抱えすぎているために、疲弊してしまっているということです。


人事HRっていうのが、これからの経営の成長部門だと思うんですね。
これまではずっと経営企画が重要だったと思うんですけど、同じようにして、戦略人事を担う人事部門というのがグロースユニットなんですよ。そういうところに人事の方たちが生まれ変わっていけるかどうか。

その時にはやはり労働集約の主観的モデルから卒業しないと何も変わらないわけで。例えば、皆さんの会社に5万人社員がいらっしゃったら、もうそれは1on1なんてきついですよね。だとすると、やっぱり打ち手を変えなきゃいけないし、打ち手をもっと進化させなければならないということですよね。
 

Q.知識の陳腐化、学ぶべきことのアップデート速度が速い中で、スキルレベルの評価をすること自体が評価者にとって難易度が高いと思うんですけども、評価者をどのように育成すべきでしょうか。

森本氏:ここも目線を合わせていくことっていうことと、組織としてそれを学ぶ場所だったりツールっていうのが絶対的に必要な気がしますね。どうしても主観がほとんどを占めているので、評価者の難易度は非常に高いですね。

田中教授:うん、そうですね。だから僕も今の森本さんのフィードバックと同じように感じるのは、評価者の方々にデータというか、指標を渡せれば、彼らは自分で色々なデータを読み解いていくことができるということです。

今まではそういったデータや指標が無かったから、どうしてもこれまでの経験とか今までの1on1のフィードバックとか知見をもとに、本人的なプロスキルの中でフィードバックされたと思うんだけど、一つ指標があるっていうのは、良いですよね。

森本氏:あとは横と比較するとかですね。本人の経年経過の中で成長とか進化みたいなものが見えたと思うんですけども、ツールがあれば、同じようなグレードの人との比較だったり、同じ職務の中での比較だとかってことができると思いますね。まずは、データとツールを渡してあげるっていうことが大事な気がします。



二階堂氏:そうですね。今後は個人のデータは個人のものになるっていう方向性になりそうなので、ちょっと言い過ぎかもしれませんけども、企業が溜めたデータも貰えるんじゃないか、貰える権利があるんじゃないかと思います。

そういったデータは転職したとしても持ち運べるため、それが自分の能力のエビデンスっていうことも言えるんじゃないかと考えています。

森本氏:そうですよね、能力のエビデンスが見られることが、どこでも求められてるんですよね。採用面接の中で1時間話をするだけでは、コミュニケーション能力の高い人が評価が高いみたいになってしまいます。そうではなくて、スキルの見える化によって評価をして、本当の意味で合否を決めるみたいなことができると本当に良いですね。

田中教授:二階堂さんと森本さんのお話を聞いてて、僕もずっと感覚的に思っててやらなきゃと思ってることでいうと、キャリアを開くということですね。だって、テクノロジーは、今オープンイノベーション化っていって、コード共有とかやり始めたわけでしょ。

何でキャリアだけ閉じ込めているんだっていう。一番柔軟なはずの個人の動きを、組織というバウンダリの中に閉じ込めている。だから日本では、人的資本の最大化が遅れていくんです。

今の時代、こういったより良きデータの共有というのはありだと思うんですよね。そうすると、3年次ではこういう経験をさせた方がグロースしていくとか、もっと全体でデータに基づく戦略人事、エビデンスに基づく戦略人事設計が可能になってくると思います。

実際、戦略人事とはいえ、CHROクラスの方々の、ある意味主観的な彼らなりの描く戦略を形化しているのがストラテジーだから、そこにエビデンスベースでってなると、次の戦略人事2.0が見えてきますね。

森本氏:どんどん日本の人口が減る中で言うと、キャピタルロスって組織の中に閉じたものではなくて、もう日本全体で考えるべきですよね。


まとめ

人生100年時代のキャリア開発支援において、「人的資本の最大化」は優先課題です。その中で「主体的なキャリア形成(プロティアンキャリア)」を行っていくこと、そしてそのためにテクノロジーを応用していくことが必要であるとお話を伺いました。

2025年問題に向けて、今はまさに転換期を迎えている段階といえます。今後は新しいキャリア開発へと目を向けることが必要となってくるでしょう。

ぜひこの機会に、HRテクノロジーを活用したキャリア開発を検討してみてはいかがでしょうか。
 


■失敗させないタレントマネジメントシステム「スキルナビ」とは

スキルナビ 紹介ムービー


人気記事

ランキング

人気動画

ランキング

Youtubeでみる

おすすめセミナー