明日から実践できるリファラル採用の極意とは

セミナーレポート

入社後に活躍する人材が多く、定着率が高いリファラル採用。
採用コストの削減にも繋がりやすいため、導入しない手はありません。

しかし、リファラル採用を実施してみたものの軌道に乗らずうまくいかなかったり、リファラル採用の制度作りに苦戦している人事担当者も多いのではないでしょうか。

2021年9月1日、株式会社Hajimarirが主催するオンラインセミナー「明日から実践できるリファラル採用の極意とは」が開催されました。

登壇したのは、株式会社Hajimariの山中諭、株式会社SUPER STUDIOの真野勉氏、株式会社リフカムの清水巧氏、株式会社ウィルゲートの吉岡諒氏です。

Hajimariの山中氏の軽快なジョークにより、和やかな雰囲気ではじまった90分間のセミナーをレポートします。

リファラル採用のシビアな現状

――自社でリファラル採用を行っておりますか?また、制度として運用できていますか?

山中氏:エンジャパン株式会社の調査によると、リファラル採用を実施している企業は全体の6割以上である一方、「リファラル採用が”制度化”できている」と回答した企業は、全体のたった3割程度、更にその制度がうまく回っていると回答した企業は、その中でたった4割。
つまりリファラル採用が導入され、かつ運用がうまくいっている企業はたった12%ほど、というのが今の日本企業の状況です。

(※株式会社Hajimari 登壇資料より)

――リファラル採用で社員から自発的に知人や友人の紹介をしてくれていますか?

山中氏:パーソルキャリア株式会社の調査によると、4割弱の社員はリファラル採用に協力したいと思ってくれているものの、実際に人材を紹介したことがある社員は2割程度しかいないのが現状。
また、紹介しないのは「自分の会社をおすすめできない」「リファラル採用の制度が無い」ことが主な原因ということがわかっています。
つまり、リファラル採用を促進するためには会社へのエンゲージメント強化や、仕組み作りが重要になってきます。

(※株式会社Hajimari 登壇資料より)

これらの調査から、リファラル採用がうまくいかず悩んでいる企業が多いことがよくわかりますね。
セミナーでは、そんなリファラル採用のお悩みを解消するべく、実際にリファラル採用に成功している3社からお話を伺いました。

プロジェクトチームを編成し成功に導く

まずはじめに登壇いただいたのは、ウィルゲートの吉岡氏です。

――リファラル採用にはチーム作りが重要
吉岡氏:ウィルゲートでは自推で5人×3チームのリファラル採用専用チームを作りました。
チームの目安は社員数の10%程度(従業員数120名の会社の場合、採用専門チームは合計12名くらい)が良いと思います。
チームを作ったら、各メンバーが一緒に働きたいと思う友人を20名リストアップします。
そうすると、5人×3チームの場合、合計300人分のリストができあがるわけです。

活躍人材の離職率は大体5〜10%といわれているため、300人中15〜30人は転職する可能性があります。
そして、リストに対して進捗を更新するタイミングを隔週30分設けることで、滞ることなくリファラル採用プロジェクトが進行していく仕組みです。

(※株式会社ウィルゲート 登壇資料より)

――結果、どのような成果を得ることができたのか

吉岡氏:2019年の採用実績として、中途採用が合計で24名、内リファラル経由で15名の採用に成功。
中途採用に占めるリファラル採用比率は60%を超えています。

リファラル採用で会社を成長させる

次に登壇いただいたのは、SUPER STUDIOの真野氏です。

――社員の約6割はリファラル採用

真野氏:SUPER STUDIOは、立ち上げからリファラルでメンバーを集めていました。
経営陣をはじめ、社員数137名に対してリファラル数が79名。
半数以上の社員をリファラル採用しました。
経営陣は全員リファラル、GMクラスのメンバーもほぼ全員リファラル採用です。

――リファラル採用を成功させるコツは?

真野氏:当社はブランドネームで勝てない分、カルチャー・環境の良さを体感してもらったり、採用面接の時に良いことも悪いこともすべて話すことで入社後のギャップをなくしています。
ちなみに、リファラル採用の紹介インセンティブは設けていません!

インセンティブがあることにより生じる「軽い気持ちでオフィスに呼びづらい」「候補者に言いづらい」などという心理的なハードルを下げ、またインセンティブが欲しいために社員が無理矢理人材勧誘する、ということを防ぐためです。
インセンティブを設けなくても、社員は純粋に一緒に働きたいと思う人材を紹介してくれるため、91.6%の方が最終面接まで進み、87.6%の方が内定を承諾してくれます。
(エージェント経由だと46.6%の方が最終面接まで進み、83.3%の方が内定を承諾)

(※株式会社SUPER STUDIO 登壇資料より)

リファラル採用でHRの全体最適を促す

最後に登壇いただいたのは、リファラル採用活性化支援プロダクトを中心に展開するHR Tech企業 リフカムの清水氏です。

――採用を作業ではなく仲間集めに

清水氏:多くの採用現場で、例えば「とりあえず年収に当てはまった人を採用する」など、採用が作業になっていることが多いのが現状。
採用を仲間集めにすることで会社・社員双方にとってHappyな世の中が作れるのではないか?と考え、そのための手段としてリファラル採用に取り組んでいます。

リファラル採用をすることで、採用は人事のみがおこなう仕事ではなく社員全体でおこなうことになりますので採用自体が簡単になり、また採用単価・離職率が減少し活躍する社員が増えるなど、HRの全体最適を促すことができます。


(※株式会社リフカム 登壇資料より)

――ベンチャーでよくあるリファラル採用の悩み

清水氏:
よくある課題として挙げられるのが「タレントを十分にリストアップできない」ことです。
多くの社員は、自分が口説けそうで、かつ転職したいと考える人材にしか声をかけませんが、そのような人材はなかなか見つからないのが現状です。
そのため、今すぐ転職したいと考えているわけではないが一緒に働きたい優秀な人材にアプローチできるかどうかが、成果を段違いに変えていく肝だと考えています。

また、今までのリファラル採用は、一人でリストアップ・アクション・クロージングまでこなしていくことが当たり前でしたが、僕たちは全員でリストアップ・アクション・クロージングをおこないます。
また、リファラル採用において実際に導入しているのが「メモリーパレス」という施策で、「前職で優秀だった3人」「営業で最も尊敬する人を3人」など具体的なお題を決めて楽しくリスト化しています。

リファラル採用の極意をディスカッション

セミナーの後半では、パネルディスカッションを実施しました。

――リファラル採用を本格的にはじめたキッカケは?

吉岡氏:当社は、中途のデジタルマーケティング人材の獲得にかなり苦戦したことや、新卒採用と比較し中途採用は優秀な社員の獲得が難しいと感じたことがキッカケで、リファラル採用をはじめました。
特にデジタルマーケティング人材においては、1年半で50名面接し、やっと1名決定したと思ったら10ヶ月で退職。採用単価250万円…。みなさまも無いですか?笑

(※株式会社ウィルゲート 登壇資料より)

山中氏:真野さんの会社は最初からリファラル採用が文化だったのかもしれませんが、いかがでしょうか?

真野氏:リファラル採用は結果として文化になりましたね。
組織を拡大する過程でエージェントを使ったこともありましたが、組織文化に馴染んでいかないという課題感がありました。

それであればリファラル採用を続けたほうが良いのではないか?と、経営陣以外の社員も感じてくれて、社員自ら人材を紹介してくれることもありました。
我々が提供する市場が伸びていたこともあり、社員は「仲間を連れてこないと仕事が回らない」と感じていたんですよね。笑

山中氏:清水さんは色々な企業のリファラル採用のキッカケを見ていると思うのですが、どのようなキッカケではじめられる会社が多いのでしょうか?

清水氏:ベンチャー企業ですと資金調達をして多額の資金を人材採用に投資しているんですよね。
あるデータによると3億円の資金調達をしたとすると、そのうち2億5千万円は人材採用に投資しているとか…
こういった状況に危機感を覚えた企業は、リファラル採用の事前準備をはじめたりしています。

山中氏:お三方で共通することは「お金」と「カルチャー」がキッカケ、ということですね。

――リファラル採用推進で苦労したことは?

清水氏:よくあるのは、制度を作っても浸透せずに苦労するケースですね。
全社的に一気にリファラル採用を促進しようとするとなかなかうまくいかないので、まずは一部から火種を作って育てていくほうがうまくいきやすいと考えています。

真野氏:僕らがリファラル採用を実施していてこれまでにあがってきた課題は、要件やコミュニケーションにおける社員の不安や、選考優先権があるのでは?などの候補者の勘違いでした。
それらを解消するために、全社月例で事業部間の連携の促進やミッション・バリューの発信をおこない、またコロナ前は候補者に会社の雰囲気を感じてもらうためのレセプションパーティーを開催していました。
コロナ禍の施策については、とにかく話しやすい環境を作るために色々と実践し模索しているところです。

(※株式会社SUPER STUDIO 登壇資料より)

山中氏:なるほど。会社を好きになってもらう工夫のようなものを感じますね。
リファラル採用だけではなく他の部分にも繋がっているのでは?

真野氏:そうですね。確実に業績に繋がっている感覚があります。

――リファラル採用で成功できたポイントとは?

吉岡氏:
やはりリファラル採用を成功させるコツは愛社精神やエンゲージメントがベースにあり、その上でチームを作り、営業と同じようにリスト作成や進捗管理を徹底していくことだと思いますね。
その中でもコミットメントが高いチームリーダを設置することはかなり重要なポイント。
また、チームメンバーの所属部署はバラバラにすることで組織全体の人脈を使えるようにすると良いですね。
注意点は、チームメンバーのみがリファラル採用を頑張る、という環境にしないこと。
チームメンバーがハブになって、チーム外の人脈がある社員などの力を借りてこれるようにプロジェクトを進めることが肝だと思います。
また、この方法はエンジニア採用には向きませんでした。
エンジニア採用は、技術勉強会の参加やオンラインイベントの開催などで人脈を作っていくことで、採用に成功しました。

(※株式会社ウィルゲート 登壇資料より)

山中氏:僕もウィルゲート在籍中に一緒にリファラル採用プロジェクトを進めていたので、明日から使える細かいポイントを補足すると、実はチームメンバーは各部署の朝会に参加させてもらって「今こういう人が欲しいんですけど誰かいませんか?」と周知してまわってましたよね。
社員は自分の会社の募集要項を把握していないので、社員がみんな採用に触れている状態を常に作る工夫は重要です。

――リファラル採用をこれから始める方へ伝えたいこと

清水氏:リファラル採用をやりたいと思う会社に悪い会社はいない、と思うんです。
リファラル採用って「自分の会社を紹介してほしい」ということなので、結果的に良い会社になりますよね。
それってすごく良いことなので、是非促進するお手伝いができればと考えています。

真野氏:リファラル採用には環境作りが重要、ということは改めて伝えたいと思います。
ただ、創業当初からリファラル採用に成功していたことで、弊社ではウィルゲートさんのようにリファラル採用が体系化できていないことが課題です。
今後弊社もリファラル採用の体系化をしていきますので、また皆さんにも体験談をお伝えできればと。

吉岡氏:リファラル採用はリストが命です。
例えば新卒採用で残念ながら入社に至らなかった人材も、繋がっておくことで未来のリファラル採用に活きていきます。
また、過去に退職した社員とも繋がっておくことで、出戻りしやすい環境に。
更に、TwitterなどのSNSもリファラル採用に繋げています。
リスト作り、頑張ってください!

(※株式会社ウィルゲート 登壇資料より)

まとめ

今回のセミナーは、リファラル採用を実施する価値を感じていただけるセミナーになりました。
コスト削減や組織文化に合った人材採用などがキッカケでリファラル採用をはじめた結果、採用がうまくいくだけでなく、社員のエンゲージメントが高まり、離職率の低下や、業績向上にも繋がっていくということですので、リファラル採用を実施しない手はありません。
是非、リファラル採用を実施していない企業様も、これを機に挑戦していただければと思います。