マネジメントとコーチングの違いとは?両者の使い分け方と活かし方

人材育成・マネジメント

効果的な人材育成、組織育成を行うには、マネジメントのコーチングの違いを理解することや、両者を適切に使い分けることが非常に大切です。また、従来の指示命令型に代わるマネジメント方法として「コーチング型マネジメント」も関心を集めていますが、イマイチ理解できていないという方も多いのではないでしょうか?

この記事では、職場におけるマネジメントとコーチングの違いや両者の役割、使い分け方、そしてコーチング型マネジメントの基礎知識を解説します。さらに、コーチングを行う上での注意点も紹介しているので、人材育成手法の見直しや導入のヒントにしてみてください。

マネジメントとコーチングの違いは?

マネジメントとコーチングは企業経営に欠かせないものですが、定義や役割といった詳細まで理解している方は少ないかもしれません。本章では、マネジメントとコーチングの概要を説明します。

マネジメントとは

マネジメントとは、「組織の成果を向上させる機関、機能、道具」であると、ピータ―・ドラッカーにより定義されています。簡単に言うと、マネジメントは「経営や組織を管理する仕事」であり、主に経営層や管理職、リーダーがマネジメント業務を担います。

マネジメントの役割や具体的な業務内容、階層・業務別のマネジメントについて詳しく知りたい方は、ぜひ下記の記事をご覧ください。

マネジメントとは何か?意味や仕事内容、必要なスキルを簡単に解説

コーチングとは

コーチングは、目標達成を目的に会話を用いて自発的な行動・解決を促すコミュニケーションを指します。

コーチングに必要とされるスキルは大きく分けて3つあり、傾聴力や質問力、承認力です。コーチは、質問を投げかけ本人に解決の糸口を見つけさせ、自ら行動するようフォローします。

マネジメントとコーチングそれぞれの役割

次に、マネジメントとコーチング、両者が持つ役割を確認していきましょう。

マネジメントの役割

マネジメントの3つの役割は下記の通りです。

  • 組織特有の本業を通して社会貢献をすること
  • 従業員が生産的に仕事をし、会社生活を通して自己実現すること
  • 社会的責任を果たすこと

このように、マネジメントと一言で表しても、示される範囲は多岐にわたります。組織運営に必要な管理として行われる人材育成も、マネジメントの1つです。

コーチングの役割

コーチングの役割として代表的なものを以下にまとめました。

  • 対話を通して相手に新たな気付きを与える
  • 自発的な行動を促す
  • 目標達成の課題の障害を本人に見つけさせる

評価や誘導、指示をコーチ側が行うものはコーチングに該当しません。対話によって部下本人が思考し、行動につなげるためのフォローがコーチの役割と理解しておきましょう。

コーチング型マネジメントとは?

コーチング型マネジメントとは、コーチングを掛け合わせたマネジメント手法を指します。従来の指示命令型マネジメントと異なり、「部下が自分で判断・行動する」ことに重きを置いているのが大きな特徴です。

ここからはコーチング型マネジメントのメリット・デメリットや適したシーンなど、基礎知識を解説していきます。

コーチング型マネジメントを行うメリット・デメリット

コーチング型マネジメントを採用するには、どのような点に留意しておくと良いのでしょうか。まずはコーチング型マネジメントのメリット・デメリットを説明します。

コーチング型マネジメントを行うメリット

メリットとして代表的なものは、下記の3点です。

部下の自発性や再現性を高められる

コーチング型マネジメントは、従業員に思考・判断・行動といったプロセスを経験させるため、従業員の自発性や再現性の向上が期待できます。指示命令型のマネジメントでは、考えたり判断したりする機会が少なく、指示待ちの部下を生みやすい傾向にありました。コーチング型マネジメントは課題が何かを発見し、解決策を講じて実践できる人材育成に役立つ手法と言えるでしょう。

部下の個性や強みを引き出せる

コーチングによる話し合いで部下の特性を把握することで、従業員に適したマネジメントが可能になります。業務では見えてこなかった強みを見つけ、能力を最大化できるような施策を講じてください。

モチベーションを向上させられる

コーチングで承認され、自発的な行動の結果がともなえば、部下は自信を持ち、モチベーション向上につながります。従業員一人ひとりの高いモチベーション維持は、組織全体のモチベーションアップにもなるでしょう。

コーチング型マネジメントを行うデメリット

コーチング型マネジメントのデメリットとして、次の3点に注意してください。

効果が出るまでに時間がかかる

上司による指示命令ではなく、部下本人が考えて答えを見つけるというプロセスが発生するため、従来型マネジメントよりも効果が出るまで時間を要します。コーチング型マネジメントは部下に考えさせ、思考から実行に移す重要性を理解してもらう手法なので、一定の時間がかかるものと割り切りましょう。

コーチングする側にスキルが必要

コーチングには傾聴力、質問力、承認力といったスキルが必要となるため、十分な能力がコーチに備わっていないと効果が得にくいです。コーチ候補者の性格を把握して慎重に人選し、コーチに研修を行って事前準備を万全にしておきましょう。

一度に大勢の育成が難しい

1on1による対話によって行うマネジメント手法であり、育成にあてられる人数・時間には限りがあります。大人数を対象にした研修・育成とは異なるため、リソースの確保が課題です。

コーチング型マネジメントに適したシーン

コーチング型マネジメントを適切に行えれば、従業員の個性を活かし、自発性や学習能力向上といった効果が期待できます。本章では、どのような状況がコーチング型マネジメントの導入に適しているか解説します。

重要だが緊急度ではない事柄を検討する時

重要度の高い事案に取り組むときは、今後の事態を予測し、準備する力が必要となります。緊急度が低ければ、思考・行動までの時間を確保できるので、重要な事柄を検討するときはコーチング型マネジメントを導入し、部下の考える力を養うのがおすすめです。

対象者にある程度のスキルや経験がある時

対象者が業務や知識・スキルを積んでいれば、精度の高い答えを見つけやすく、失敗するリスクを最小限に抑えながら行動できます。成功体験を得ることでさらなるスキルアップや自信につながるため、スキルのある従業員を成長させたいときにも有効なマネジメント手法となるでしょう。

コーチングに重要なスキル

ここまではコーチング型マネジメントについて解説してきましたが、そもそもコーチングにはどのようなスキルが求められるのでしょうか?

主に下記の3つが挙げられます。

傾聴力

傾聴力とは「相手の理解を深めるため、熱心に話を聴く力」です。傾聴力は、部下の性格や強みを把握し、相手の伝えたいこと・言おうとしていることを理解するのに役立ちます。

質問力

質問力とは、「相手の課題点・疑問点・不明点などを見つけるための適切な問いかけ」です。コーチは、相手自身に考えさせ、気付きを促さなくてはなりません。そのためコーチには、質問された側の意識を誘導し、本人の思考を深めて考えを引き出す力が求められます。

承認力

承認力とは、「相手の考えや発言、存在を認めること」です。人は誰しも、他者から認められたいという、承認欲求を持っています。承認力により上司や先輩から認められれば、自信につながり、積極的に仕事へ取り組みやすくなるでしょう。承認力を高めるには、普段から部下をよく観察し、相手を尊重することが大切です。

マネジメントでコーチングを取り入れる時の注意点

部下や組織をマネジメントする際に、コーチングを導入する上で気を付けるべきポイントは、次の3つです。

1対1で進める

従業員一人ひとりの特性を深く理解するには、1on1形式による対話が効果的です。コーチング型マネジメントを成功させるには、部下が本音を話せる環境作りが重要となります。コーチは部下との信頼関係を築くために、しっかりとコミュニケーションを取り、観察しましょう。

短期間での結果を求めない

考えてから行動するコーチング型マネジメントでは、効果の即効性はあまり期待できません。部下本人が考えて導き出した答えが、最適解ではない可能性もあるでしょう。失敗や遠回りをしながら、学習能力を高められるものの、成果への道のりまでに時間がかかる点を理解しておく必要があります。

対象者と信頼関係が築けている事が前提

コーチとの相性や信頼関係も、コーチング型マネジメントの結果に影響を及ぼします。業務で成果を上げている上司が、コーチに適しているとは限りません。部下との信頼関係を築くためのコミュニケーション能力を持ち、部下の課題や現状を正しく把握し、人間関係なども相談できる人をコーチに選任しましょう。また、いきなりコーチングを始めるのではなく、一定の信頼関係を構築してからコーチング型マネジメントに着手することも重要なポイントです。

マネジメントとコーチングに関するまとめ

マネジメントの一環としてコーチング型マネジメントが注目されるようになりました。部下の育成が上手く進まない場合、マネジメント手法が適していない可能性があります。まずはマネジメントの基本的な知識を理解して、従業員に合った育成手法を探すことから始めてはいかがでしょうか。