人事の転職に際して、重要になるのが「転職理由」と「志望動機」です。履歴書に記載する内容をしっかりと考えることで、仕事への意欲が伝わるだけではなく、面接でも自身のアピールポイントをしっかりと伝えることができます。
この記事では、混同しやすい「転職理由」と「志望動機」について違いを紹介しつつ、人事経験者・未経験者ごとに志望動機の例文やアピールポイントのコツをご紹介します。
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まず抑えておくべき転職理由と志望動機の違い
「転職理由」と「志望動機」は、面接で問われる基本的な質問です。この2つの認識が曖昧なままだと、書類選考や面接で仕事への意欲がきちんと伝わらない恐れがあります。
転職理由とは、現職(前職)を去り新しい職場を求めた理由をいいます。「チャレンジングな仕事に挑戦したかった」「専門的な知識をもっと深めたかった」というものが当てはまります。ときには、人間関係や労働条件などネガティブな不満も転職理由となります。
転職理由がどのような内容であれ、面接で問われるのは「なぜ現職(前職)では、それが満たされなかったのか?」という点です。たとえば、「評価制度の知識を身に着けて制度設計に関わりたい」を転職理由とした場合、「現職(前職)では、ジョブローテーションで2年ごとに担当領域が変わるため、専門性を磨くのが難しい」という背景まで説明すると、転職理由の説得性が増します。
転職理由を通じて、面接官が判断しているのは、求職者が職場に何を求めているかです。また、要望に対して行動を起こせる人なのか、論理的な考えができるかといった点を判断しています。
一方、志望動機とはその会社に応募した理由を指します。言い換えれば、「なぜ当社で働きたいのですか?」という質問への答えです。
志望動機を語る際のポイントは、「その会社でなければいけない点」を盛り込むことです。そのためには、応募先企業の事業内容や人事制度など詳しくリサーチしておくことが大切です。転職理由と志望動機がつながっていると、入社への高い意欲が伝わります。
人事の志望動機や転職理由を考える際の7つのポイント
転職理由や志望動機を履歴書に書き始めるにあたり、まずは書くべき内容の整理から取り組みましょう。以下のポイントを抑えて考えてみると、実際に書く作業をスムーズに進めることができます。
1.転職しようと思った正直な理由を洗い出す
まずは、転職しようと考えた理由を洗い出しましょう。このときのポイントは、ネガティブな理由であれ、書き出してしまうことです。
「嫌な上司がいる」「給与が安い」というように、素直に紙に書いてみましょう。言葉にすることで、自分の転職軸が明確になります。ただし、履歴書の作成時や面接時には、ポジティブなワードへの変換が必要です。
2.なぜ人事として働きたいか理由を洗い出す
つぎに、人事として働きたい理由について考えてみましょう。人事の仕事のやりがいが言語化されていると、面接官に仕事への意欲が伝わります。
とくに、未経験から人事への転職を目指す人は、人事の仕事のどのような部分に魅力を感じているのかはっきりとさせることが大切です。経験者は、これまでの業務内容からやりがいを感じた具体的なエピソードを書き出してみるといいでしょう。
3.なぜその企業が良いのか理由を洗い出す
志望動機につながる部分です。応募先の企業について、魅力的に思う部分を書き出してみましょう。事業内容、ビジョン、将来性、社風、働き方など、さまざまな点を洗い出します。リサーチを重ね、応募先の情報が多ければ多いほど、より説得力のある志望動機につなげることができます。
4.志望する企業の特徴や業務範囲をチェックする
人事として志望先の企業に入社した場合、どのような業務を担当することになるかをチェックしておきましょう。業務内容やミッションについては、多くの場合、求人票に記載されています。業務範囲を確認しておくことで、志望するキャリアと転職理由に一貫性を持たせることができます。
5.自分の経験やスキルを棚卸する
これまでの経歴をかき出し、身に着けてきたスキルの棚卸を行いましょう。洗い出した中から、人事の転職でアピールポイントとなりそうなものを探します。
スキルについては、「採用」「労務管理」など領域について述べるものと、「採用人数100人達成」や「社内ツールの使用率50%アップ」というように実績について定量的に述べるものの両方を加えると、身に着けてきた経験が伝わりやすくなります。
6.その企業が求める人物像を確認する
多くの場合、求人票には「必須条件」「歓迎条件」「求める人物像」といった条件が言語化されています。必須条件を満たしていなければ、その求人で採用される難易度は非常に高いといえます。歓迎条件については、企業にもよりますが、全て揃っていなければいけないというものではありません。歓迎条件を満たす内容があれば、面接でアピールポイントになります。
求める人物像については、主に思考性や仕事に対するマインド面に関して書かれていることが多いです。この項目も非常に重要なので、必ずチェックするようにしましょう。
7.求める人物像と自分のスキルを照らし合わせる
前述の通り、求める人物像には、会社側の欲しい人材が言語化されています。
ここで、これまでの自分の経験やスキルと企業が求める人物像を照らし合わせ、「何をアピールすれば自分が求められる人材にふさわしい人物であることを伝えられるか?」を考えましょう。
ビジネスマンとしての自分の特性と、企業が求める人物像を照らし合わせて共通点を探し、その共通点をアピールすると良いでしょう。
もし、求める人物像の部分で明らかに「自分と違うな」と感じたら、応募を取りやめるのも一つの選択肢です。
人事の志望動機や転職理由を書く際のコツ
では、実際に志望動機や転職理由を履歴書に記載する際のポイントについて見てみましょう。
経験がある場合は人事の職務経験を記載する
人事業務の経験者は、履歴書に職務経験を記載しましょう。その場合、担当した領域を明確にするとともに、担当業務についても詳細を箇条書きで記載します。採用や労務管理など、一つの領域だけみても、多くの人事業務が含まれています。
冗長な履歴書は避けるべきですが、ポイントを抑え詳しく記載することで、面接官が求職者のスキルや経験を把握できるようになります。
未経験の場合は活かせそうな経験をアピールする
人事未経験者の場合は、人事に求められるスキルから逆算して、活かせそうな経験をアピールしましょう。たとえば、人事は社内のさまざまな立場の人と関わるためコミュニケーション能力が不可欠です。その場合、営業やマーケティングなど他の職種であっても、利害関係や立場の異なる人々に対して説明し、一つのプロジェクトをやり遂げた経験は、人事業務でも活かせると判断される可能性があります。
ほかにも、事務スキル、調整力、自発的な努力、リサーチ力、外部の人脈、現場業務への理解・経験は人事業務で活かせるポイントです。
ポジティブな言葉で記載する
履歴書を書く際は、なるべくポジティブな言葉に変換するように努めましょう。もちろん、嘘をつく必要はありません。しかし、「給与が安かった」が転職理由の場合には「成果を正当に評価される環境で働きたい」「ワークライフバランスを重視したい」というような理由に置き換えることができます。
具体的なキャリアプランを提示する
人事としてどのように成長していきたいのか、キャリアプランを掲示しましょう。3年後、5年後、10年後というように中長期的なタイプスパンで人事として高めたい専門性や、経験したい業務について記載します。
面接官はキャリアプランを通じて、自社の人事としての適性を見ています。リサーチの段階で調べた企業の特徴や志望動機を絡めながら説明するといいでしょう。
一貫性があるか確認する
履歴書を書き終えたあとは、全体をもう一度読み直し一貫性を確認しましょう。転職理由、志望動機、キャリアプランがつながっているのかを見直します。もし、どこかで齟齬があると、表面的な印象が伝わってしまいます。「なぜ人事に転職したいのか?」「転職先で何を成し遂げたいのか?」をじっくりと考えるようにしましょう。
人事の志望動機・転職理由の例文
人事の志望動機や転職理由を作成する際、以下のようなテンプレートが役に立ちます。例文をもとに、文章の流れや要素を抑え、自分なりの魅力的な志望動機を作成しましょう。
人事未経験者の志望動機・転職理由の例文
「私は、エンジニア専門の転職エージェントとして3年間、コンサルタントとしてさまざまな企業・求職者の方と関わりました。転職を支援した数は300件以上です。求職者の方が満足いく転職をサポートすることにやりがいを感じる一方で、より充実したキャリアの手伝いをするためには、企業内人事として深く関わらなければ無理なのではと感じるようになりました。御社はエンジニアの採用から育成に力を入れており、業界のなかでも特徴的な評価制度が話題です。年間100人以上のエンジニアと会い、人を見極める力だけではなく、エンジニア系の専門知識についても磨いてきました。必ずや、御社の採用・人材育成の力になれると思います」
未経験者の志望動機のポイント
人事業務経験がなくても、人事部が必要とする採用で人を見極める力をアピールしています。また、エンジニア採用は難易度が高くエンジニアの職種やプログラミング言語などへの理解が求められます。例文のように、従業員の職種や職務内容についての理解はアピールポイントとなります。
人事経験者の志望動機・転職理由の例文
「私は、現職で5年間の間、労務管理と研修および採用を担当しました。人事の仕事は、従業員の働きやすい環境を整備し成果を最大化するという点で、非常にやりがいを感じています。しかしながら、現職は2年間のジョブローテーションであり、一つの領域の専門性を高めるのが難しい環境です。人の成長を支援するという観点から、労務管理~評価制度設計を中心とした業務に関わりたいと考えています。もし入社した場合には、御社の事業戦略に沿って、従業員が成果を発揮できる環境・制度整備に注力していきたいです」
経験者の志望動機のポイント
経験ある職務内容および転職理由について触れます。もし、今後やりたい業務の経験が浅い場合でも、他の領域で得た知識や経験がアピールポイントとなります。労務管理や研修などは、どの会社でも人材育成と働きやすい環境整備に必要なスキルです。即戦力として働き、成長できることをアピールします。
人事の自己PRを作成する上でのポイント
人事の転職での自己PRでは、スキルや知識をアピールポイントとして強調しましょう。また、具体的なエピソードを添えることでスキルの裏付けになるほか、面接官が成果や実績をイメージできるようになります。
アピールできると良いスキル
人事の転職でアピールできると良いスキルには「コミュニケーション力」「調整力」「企画力・分析力」の3つがあります。いずれも、さまざまな立場の人と関わり、人事施策を推進し、職場環境や労働環境を整える上で重要なスキルです。
コミュニケーション力
これまでの業務から、人と関係性を築く上で気を付けたポイントや、自身が強みだと思う点をアピールしましょう。その場合には「人と関わるのが好きです」といった抽象的な表現ではなく、「初対面の人とすぐに打ち解けることができます」「顔と名前は1回聞いたらわすれません」など具体的に述べるといいでしょう。
調整力
調整力とは、チームや部署、会社全体を動かしていくために求められるスキルです。たとえば、採用業務一つとっても、会社説明会の開催のために、部長やチームリーダークラスの社員の参加を依頼するケースがあります。そのとき、単純な日程調整だけではなく、現場の仕事を抜けて採用に協力することへの社員の不満へ対応する必要があるかもしれません。
業務の目的や意図を伝え、一つの目的に沿って進んでいけるよう、周りを動かすようなスキルが求められます。これまでの実績を端的にまとめて進めましょう。
企画力・分析力
人事の仕事には新しい取り組みが多く発生します。たとえば、男性の育休取得の法整備が進むにつれ、社内制度の整備の重要性が高まっています。こうした価値観の変化や法改正を受け、人事は社内で求められている制度や取組みを企画しなければいけません。また、その取組みがどれくらい必要とされているのか、進めるにあたって問題はないのかなどを、状況にあわせて判断する分析力も必要です。
なかには、必ずしも正解がないようなケースもあるでしょう。課題に対して本質を見極め、積極的に取り組む姿勢をアピールしましょう。
具体的なエピソードを盛り込む
コミュニケーションの部分でも述べたように、ただ単に「コミュニケーションスキルがあります!」「調整力があります!」だけでは、面接官には伝わりません。コミュニケーションスキルに長けていることが伝わるような具体的なエピソードを盛り込みましょう。
具体的なエピソードには、「課題」が含まれていることがポイントです。その課題を解決するために、コミュニケーションスキルや調整力が必要であれば、エピソードを述べる過程でスキルの有無が伝わります。
人事の自己PRの例文
スキルや意欲が伝わるような、人事の自己PRのテンプレートを紹介します。
未経験者の自己PR例
「私は、これまで飲食チェーン店の店長として現場スタッフの採用や育成に携わってまいりました。高校生や大学生が中心の職場であり、社会で働く重要性や責任を一人ひとりに教えてきました。また、未経験者でも即戦力になれるよう、業務マニュアルの整備に携わるなかで、会社としての評価制度や勤務管理の重要性を知りました。さまざまな立場のスタッフと関わり、職場の改善に努めた経験は、御社の人事としてもお役に立てると確信しています。」
経験者の自己PR例
「人事として苦労した経験は、残業削減に取り組んだときです。月の残業時間50%削減を目指し、ノー残業デーを設定しました。しかし、現場からの不満が出てしまい、よくよく話を聞いてみると、業務量の分担がうまくいっておらず特定の社員に負荷が集中していることがわかりました。そこで業務量や進捗を可視化し、勤怠管理と同時に管理できる社内システムを導入。その結果、残業時間削減の目標値を達成しました。このことから、プロジェクトがうまくいかない時には、本質的な課題を見極める重要性を認識しました」
人事の仕事内容ややりがいをおさらい
人事の仕事内容は、採用や評価など多岐に渡ります。そのなかで、従業員が成果を発揮できるよう裏方からサポートするのが、人事のやりがいといっていいでしょう。
人事の仕事内容
人事の仕事内容には以下のものがあります。
- 採用
- 育成
- 研修
- 労務管理
- 評価
企業によって、一人が複数の領域を担当する場合と、それぞれの領域に専門の担当者がつく場合とにわかれます。経験を積んだ人事は、経営戦略に沿った採用戦略や研修・育成制度の設計など、より上流の工程に携わります。
人事のやりがい
人事の大きなやりがいといえるのが、従業員のサポートです。直接的に売り上げに関係していなくとも、人事部門が手掛ける制度や施策一つが、従業員の働きやすさを左右します。また、新たな改革や取組みだけではなく、社会保険手続きや給与計算など会社運営に欠かせない業務も人事が担っています。
人事に求められるスキル
人事はさまざまな立場の人と関わるため、「コミュニケーションスキル」が不可欠です。また関係部署との調整を図る力や、施策を推進する企画力のほか、従業員のプライベートについて秘密を厳守する姿勢なども求められます。
人事の志望動機・転職理由に関するまとめ
人事の志望動機・転職理由を記載する際には、書く前に洗い出しの作業を行い、内容に一貫性を持たせましょう。自身の経験を棚卸し、応募先の企業についてリサーチを重ねるなかで、魅力的な履歴書・自己PRが作成できます。