マネジメントできる限界人数は?スパン・オブ・コントロールとは

人材育成・マネジメント

スパン・オブ・コントロールとは、一人の管理職が適正にマネジメントできる部下の人数をいいます。一般的なスパン・オブ・コントロールの人数は定められていますが、組織の状況や管理職の資質によっても、その範囲は変化します。

この記事では、スパン・オブ・コントロールの定義から拡大させる方法までを解説します。チームの状況が上手くいかないと感じるときのマネジメントの参考にしてください。

マネジメントできる限界の人数は?

少子高齢化で生産年齢の進む現代において、一人ひとりの能力を最大化させるマネジメントは、企業が成長を続けるにあたって欠かすことのできない要素です。

しかしながら、マネジメントを行う管理職もまた、プレイヤーとして成果を出さなければいけない組織は珍しくなく、管理職のマネジメントスキルを見極めながら、部下を配置することが重要となります。

マネジメントにおいて最適な人数の研究は長年続けられており、一般的に一人の管理職がマネジメントを行う上での適性人数は、5人~8人程度と考えられています。もちろん、業務内容や職種によっても左右されますが、最大でも10人、それ以上となると一人ひとりの評価・育成・指導という面で難易度が上がると考えられます。

下記は、内閣府の調査による管理職が抱えている部下の人数になります。

管理職の多くは10人以下の部下を担当しているものの、割合でいえば半数近くは11人~30人以上と、大規模なチームのマネジメントを担当せざるを得ない状況がうかがえます。

スパン・オブ・コントロールとは?マネジメントの適正人数

このような一人の管理職が、適正に管理できる部下の人数を表す用語を、「スパン・オブ・コントロール」といいます。もともとは経済学の用語であり、昨今では、部下の教育や能力開発において、マネジメントの効果を最大限発揮するために考慮するべき要素として注目されています。

スパン・オブ・コントロールの概念を学ぶことで、管理職自身がマネジメントの範囲を客観的に考えられるようになるだけでなく、組織の生産性の観点からも適切な人数のチーム構成を検討できます。

スパン・オブ・コントロールの人数を決める要素と理由

上述のように、一般的にはスパン・オブ・コントロールは5人~8人と考えられていますが、3人が適正範囲とされる場合もあれば、10人まではコントロール可能と考えられる場合もあります。

こうしたスパン・オブ・コントロールを決定する要素には、以下のものがあります。

  • 業務内容
  • 業務レベル
  • 組織の形態
  • 部下の権限の裁量
  • マネージャーの承認の頻度
  • マネジメントスキルを向上させる教育・研修
  • 部下とのコミュニケーション手法や頻度

メンバーがそれぞれに高度な専門知識やスキルが求められる場合には、スパン・オブ・コントロールの範囲は狭まります。チームメンバーが皆難易度の高い業務を担当し、ハードルの高い目標に向かっているケースでは、マネージャーの高い関与が求められるでしょう。

もし、成熟した組織であり業務の標準化が進んでいれば、業務内容を問わずスパン・オブ・コントロールの範囲が広がる可能性が高くなります。逆に、成長途中の組織やゼロから作り上げている段階では、一人ひとりに求められる成果も上がり、一人の管理職が大勢の部下を管理する難易度が上がります。

ほかにも、部下にどれくらいの権限を与えられるのか、部下とのコミュニケーションの手法や頻度もスパン・オブ・コントロールを左右します。また、管理職自身のマネジメントスキルが向上するにつれ、スパン・オブ・コントロールの範囲が広がるため、スキルを開発する研修などが重要になります。

スパン・オブ・コントロールを超えた場合の悪影響

スパン・オブ・コントロールを超えた状況では、組織にとってさまざまな悪影響が発生します。

たとえば、マネジメントが行き届かないために、モチベーションの下がっているメンバーや、頑張っているものの成果に結びつかないメンバーなど、「うまくいかない」状況に対してフォローが行き届きません。

また、メンバー間で情報共有がされていなかったり、ビジョンが浸透していなかったりすると、組織の一体感がなくなります。チームの統制がとれず、バラバラになってしまうことで、職場の人間関係の悪化や、生産性の低下が考えられます。

スパン・オブ・コントロールを超えしまいやすい状況

では、どのような場合にスパン・オブ・コントロールを超えてしまうのでしょうか。

代表的な例は、管理職がプレイヤーとして多くの時間を業務に割かざるを得ない状況があげられます。部下の仕事ぶりや成果について状況を把握し、適切なフォローをしなければならないところを、自身の業務に時間を使ってしまうため、状況把握ができなくなり、メンバーの統制がとれなくなるというものです。

また、担当する部下がそれぞれ異なる領域の業務を担当しており、専門性が高い場合にも、管理職のマネジメントが難しくなります。

スパン・オブ・コントロールを超えた時の対処法!マネジメント人数を増やすには?

管理職のスパン・オブ・コントロールの範囲を超えてしまっている場合、組織設計を見直したり、業務の標準化を図ることで適正なマネジメントを行えるようにします。

部下の育成と権限委譲を図る

一人の管理職がマネジメントできる人数を増やすには、部下を育成し権限移譲を図ることです。たとえば、チームメンバーが30人いる状況で、リーダーを配置しチーム制を率いていたとしても、すべての承認を管理職が行ってしまっては、30人全員の業務に目が行き届かず、スパン・オブ・コントロールを超えてしまうことになります。

こうした状況では、管理職の業務上の権限を譲渡できるリーダーを育て、権限と裁量を与えることで、チーム内が自律的に仕事を進められるようになります。この場合、管理職とリーダーの権限・責任の範囲の違いを明確にしておくことが、組織の混乱を避けるために必要です。

チームの連携を強化する

チーム内で、メンバー間の連携が取れている場合、それぞれができることをフォローし合うという体制が生まれます。

たとえば、明確にリーダーという役職についていなくても、先輩・後輩、または同期という間柄で情報共有したりサポートしたりと、協力行動が発生します。チームの結びつきが強く、助け合いが行われる組織では、管理職が直接マネジメントを行う負担が減り、スパン・オブ・コントロールが広がるでしょう。

業務の標準化を図る

メンバーが自律的に業務を行えるという点で、業務の標準化を図ることも重要です。業務マニュアルが整備されていたり、業務フローが明確になっていれば、メンバーが管理職に確認・質問をする機会を減らすことができます。

また、メンバーが多い状況でも、マニュアルに沿ってそれぞれが仕事を行えるため、管理職が管理しなければいけない範囲を選択できます。

情報共有の効率化を図る

スパン・オブ・コントロールの範囲を拡大するには、管理職が効率的にメンバーの状況を把握できるようにならなくてはいけません。情報共有のためには、管理システムや情報共有ツールを導入する方法があります。

たとえば、10人以上のメンバーを率いる営業部門で、営業管理システムを導入すれば、メンバーそれぞれの目標達成度合いが明確になり、管理職は情報共有の時間を減らしつつマネジメントを行えるようになります。

適切なマネジメント人数はリーダーの資質やタイプによって変わる

スパン・オブ・コントロールの範囲は、リーダーのタイプによっても変化します。

プレイヤー型のリーダーの場合

プレイヤー型リーダーとは、プレイヤーとして優秀であり、管理職の立場につきながら、自分自身も目標数値を持ち積極的に現場で活動するタイプのリーダーを指します。創業まもない拡大期の組織では、優秀なプレイヤー兼マネージャーを兼ねる管理職が成長を牽引します。

こうしたタイプの管理職の場合、大人数の部下のマネジメントを任せるのは最適とはいえません。自分自身の業務遂行に割く時間が必要となるため、スパン・オブ・コントロールの範囲が狭まります。少人数の部下を身近に配置し、同じ目線で行動できるような組織設計にすると、部下のモチベーションが高まりチームとして上手く機能するでしょう。

司令塔型のリーダーの場合

一方、大人数の組織のマネジメントに適しているのは、司令塔型リーダーです。このタイプの場合、プレイヤーとしての業務遂行能力は高いとはいえないものの、チームの全体最適を目指し、管理職として適切な指導・教育を行う能力に長けています。

一人一人の状況把握や、フォローに気を配るため、メンバーぞれぞれが能力を発揮しやすくなります。

まとめ:スパン・オブ・コントロールの実行でマネジメント人数の最適化を

スパン・オブ・コントロールの範囲は、組織の体制や業務内容によって異なります。また、管理職のタイプも適正なマネジメントの人数を左右します。

組織が上手く回っていないと感じる場合、それはもしかしたらスパン・オブ・コントロールの範囲を超えてしまっているのかもしれません。管理職の資質や組織の状況を見極めながら、マネジメント人数の最適化を行いましょう。